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鈴仙8 うpろだ1198 誰かが泣いている。 誰かが許しを請うている。 泣く必要は無いのに。謝る必要は無いのに。 朧気に浮き沈みする意識はそう思うのだけれど、布団に伏せた体はぴくりとも動かない。 誰かが泣いている。 誰かが許しを請うている。 嗚咽の混じったその声が、あまりにも綺麗で、悲しかったから。 その時、彼は決めたのだ。 泣いている誰かのために、何かをしようと。 ーーー ちりんちりん、家の扉を開けて目に入るのは、幻想郷の家屋にしては珍しい、玄関と広間が一体になったような部屋。 同時に扉の上部に付けてある涼しげな風鈴が音を発し、客の来訪を告げる。 客――鈴仙・優曇華院・イナバはそれ程広くはない部屋をくるりと見回し、誰もいないことを確認すると同時にため息。 毎度のことながら、この場所にはあまり来たくない。 薬売りの道の最後に必ず寄る事になっているこの家。この家の主にかけてしまった迷惑の事を考えるとあまり顔を出したくないのだ。 ここだけはてゐに押し付ける、という手もあるのだが、師匠にあることないこと吹き込まれても困る。 もう一度部屋の中を見回す。 大量のタオルが泳いでいる水槽に、いくつもの鋏が整頓されて置かれている棚。高さの調節が可能な椅子が部屋の中央で、自らを部屋の主だと誇るようにふんぞり返っている。 誰もいなければ、用件だけ済ませて帰っても構わないだろう。 鈴仙がほっとしながら荷物を地面に降ろした時だった。 「えっと、誰か来てるの?」 彼女から見て右、窓の奥のほうから声が聞こえてきた。 何だ、いたのか。 少しの落胆。ため息と共に声が聞こえてきた方角へ向けて声を発する。 「こんにちは、○○、いるかしら?」 「あー、鈴仙? 今、裏にいるからちょっと待っててもらえる? すぐに終わるから」 ああ、仕事の最中か。 耳を済ませてみれば、誰かが嬉しそうな声を上げているのが分かる。 この声は、氷精だろうか。妖精がこの店を利用している、というのは何だか変な感じがする。 やっぱり、物だけ置いて帰ってしまおうか。その場に立ち尽くしたまま数分経ってから、ようやく鈴仙はそう考える。 うん、そうだ。そうしよう。そう決意して踵を返すと、先程自分が入ってきた扉から、一人の男が入ってくる。 咄嗟に、目をそらした。目線を、合わせないように。瞳を、覗き込まれないように。 そらした目線の端、男が口元を寂しそうに歪めたのが見えたが、気付かない。気付いていないという事にしておく。 「おまたせ、鈴仙。毎日ご苦労様」 その辺座ってよ、という言葉に鈴仙は、部屋の隅にある椅子を引っ張り出して腰掛けた。 「ううん。それで、調子の方はどう?」 「あー、仕事の方? おかげ様で順調だよ。さっきもチルノが来ててさ。妖怪とかそっちの方にも受けがいいってのは客商売としてどうなんだろうね」 この問いかけには二つの意味がある。一つは彼の仕事の話。そして、もう一つは―― 「……じゃあ、記憶の方はどう? ○○」 ○○と呼ばれた男が、お茶の入った湯飲みを両手に持って近づいてくる。片方を鈴仙に渡すと、残りの片方に口をつけながら彼も椅子に腰掛ける。 「……そっちは今ひとつ、だね。この間来てくれた時と対して変わってない」 「……ごめんなさい」 「なんで謝るの。鈴仙が気にする事じゃないってば。きっとこっちに来た時にはもう記憶なんて無かったんだよ」 ○○は最近、幻想郷に迷い込んできた外の世界の人間――らしい。 らしい、というのは本人が記憶喪失に陥っている為、外見からそう判断している、という理由からだ。 「でも……」 鈴仙は口ごもる。竹林の中に突如現れた○○の第一発見者は鈴仙であり、その時、ちょっとした事故がおきてしまった。 目を、合わせてしまったのだ。鈴仙が持つ赤い瞳――狂気の瞳と。 彼の記憶喪失はそれが原因だろう、師匠の永琳に言われなくても、瞳の持ち主である自分は十二分に理解している。 だからこそ発生してしまう、負い目のようなもの。それが鈴仙がここに近づきたくないと考える理由である。 「あ、そうだ。持ってきてくれた物、確認してもいいかな?」 ちょっと強引な話題転換。お使いの品の確認、永遠亭の使いとしての自分。その立ち位置は、彼女にとって救いの手。 「ああ、ごめんね。ちょっと待ってて」 言って、鞄から乳白色の液体の入ったボトルを十本ほど、目の前の机に並べる。 次いで、二つ折りにされた師匠直筆のメモを開いて渡す。 ○○はそれを受け取ると、中をさっと確認し、頷きを一つ。 「ありがとうね、俺がこうやって店出してられるのも、永遠亭のみんなのおかげだよ」 「ところで……効果ってどうなの?」 ちょっとした興味。何だかんだで世話焼きな師匠の事だ。弟子の不始末は師の不始末、とばかりに色々と気を配っているのは分かる。 鈴仙の質問に、○○は嬉しそうに答える。 「ばっちり。たまーにくる里のお客さんにも好評だし、魔理沙が何本か持って行っちゃった。永遠亭で売り出したらどうかな? 多分売れるよ、これ」 あの黒白め。おかげで私の仕事が増えるじゃないか。 内心そんな愚痴を零しながらも、そうまで言うなら自分も一度使ってみようか、なんて気分にもなる。 立ち上がった。用事は済ませたし、これ以上ここに居る理由は無い。 「じゃあ、今日はこれで。また必要になったら連絡して頂戴」 言うだけ言って、踵を返す。そのまま出口へ向かって歩を進める。 「ねえ、鈴仙」 足が、止まった。 足を止めたまま、振り返ることは無く、相手に答える。 「何?」 「あのさ――」 そこで、しばらくの間があった。 彼にしては珍しい事だった。何を言うべきか迷っている、という空気が後ろから感じ取れる。 沈黙の空間がいくらか続き、彼はついに、何かを決心したかのように、ふ、と息を吐いてからこう言った。 「あのさ、もし良かったら、髪切っていかない?」 右手にある空間を見た。 タオルが泳ぎ、鋏が並び、高さを変えられる椅子が部屋の中央でふんぞり返っている。 そこは世間一般で床屋と呼ばれる職業の人間の仕事場で、それはつまり○○がここで床屋を営んでいるという事を意味している。 記憶喪失の彼の荷物は櫛と鋏と剃刀で、記憶はなくしてもその使い方と技術だけは忘れていなかった。 だから、彼は永遠亭を出て、店を開いた。 何時までもここでお世話になっているわけにはいかない、と言っていたし、記憶に残っている行為を続ければ自分の記憶も戻るかもしれない、とも言っていた。 はじめは永遠亭全体が反対していたが、試しにと何人かのイナバの髪を切らせてみれば、それは確かに様になっており、コレなら問題はないだろうとの結論が出たのだった。 鈴仙が届けているのは、彼女の師匠特性の洗髪料だ。 彼が師匠を薬師と見込んで頼みがある、などといって洗髪料の調合を頼み込んだ時は流石に開いた口が塞がらなかったが、当の本人が楽しそうに調合しているのだから、まあいいのだろう。 「……」 少しだけ、考えた。 最初は不安そうにしていたイナバが、作業を終えた後嬉しそうにあちらこちらを飛び回っていたのを思い出す。 そんなに、いいものなのだろうか。 興味を惹かれたというのもあるし、時間に余裕があるというのもあった。 そして、なによりも。 彼の手で髪を切ってもらいたいという願望は、彼が床屋である事を知ったときから、鈴仙の心の何処かで、間違いなく存在していた。 「……じゃあ、お願いしようかな」 彼は、何処か安堵したような表情を浮かべて、部屋の真ん中にある椅子を指し示した。 それに従い、椅子に腰掛ける。 刈り布をすっぽりとかぶり、手回しで高さを調節する椅子が鈴仙を乗せて上昇する。 鏡の向こう側の彼と目を合わさないように、薄く目を瞑った。 霧吹きが髪を湿らせる感触が閉じた視界では強烈で、ぴくり、肩が震える。 ――しゃりん。 髪に櫛が入り、二枚の刃が触れ合う音がする。 視界を閉ざした鈴仙の後ろから発せられるその音に、それ程恐怖を覚えない。 目を閉じて、鋏が立てる音を聞きながら思い返す。 初めて彼と出会ったあの時を。そして自分が起こした過ちを。 ーーー その時、鈴仙は竹林の中を歩いていた。 師匠に薬の材料を取ってくるように言われたのか、何か用事があっててゐを探していたのか、それは覚えていない。 風の吹かない夜だったことは覚えている。上弦の月が照らす光だけが世界の光源で、それだけあれば充分な明るさだったことも覚えている。 静かな夜だった。蓬莱の人の形と月の姫が、二人の間にしか成立しないお遊びに興じる事も無ければ、誰かが弾幕を放つ轟音も無かった。 しばらくの間一人で歩いていると、ふとした拍子に視線を感じた。 周りを見ても誰もおらず、波長を用いて周囲を見渡しても何も無い。 気のせいだ、と判断して再び歩き出したその時に、突如風が吹いた。 思わず体を庇ってしまうほどの強風だった。草や枝が舞い上がるのを感じた。 何の予兆も無く生じた風に疑問を覚えると同時に、風は止んでいた。 代わりに鈴仙の視界に映っていたのは、一人の青年。 鈴仙の足にして三歩ほどの距離に、呆けたように突っ立っていた。 何が起きるか分からない世界とはいえ、今まで何も無かったところにいきなり人が現れたら唖然としてしまうのは道理という物。 じろじろと、という表現で青年を見てしまっていた。 突然現れた青年。怪しいし訳が分からなかった。視覚で情報を得る生物である以上、彼女がそれを観察しようと見詰めるのは、間違ってはいない。 いや。 思えば、鈴仙のその行為は、見惚れていた、と言ったほうが良かったのかもしれない。 居なかったはずの場所に気がついたら居た、という現象よりも、その人物の姿形や自分よりも高いくらいの背の高さ、月の光を跳ね返す黒髪に、見惚れていた。 一目惚れという概念は、存在する。その時の鈴仙の状態は、間違いなくその単語に合致していた。 青年が、我に返ったように周囲を見渡し、視界に鈴仙を納めた。 鈴仙に、目を合わせて。 何かを訊ねようと、口を開く。 「――あの、」 胸が、高鳴った。 視線は、絡まったまま。 だから、きっとそれが引き金だったのだ。 青年は、突如苦悶の表情を浮かべたかと思うと、声を発する事も無く倒れてしまった。 色彩に濃淡があるように、記憶にも濃淡はある。 その日の出来事の中で、記憶に濃く残っているのはそこまで。 慌てて永遠亭にその青年を運び込んだ事とか、師匠に青年の世話をするように言い付けられた事とか、そういったことはぼんやりとしか覚えていない。 ――いや、もう一つだけ。こびりつく様に記憶に残っている事柄が、一つだけある。 目を覚まさない彼に、謝った。 一目惚れしてしまった彼をこんなにしてしまったことを、泣きながら謝った。 彼との出会いが長い時間の中で風化していってしまうことがあっても、きっとそれだけは朽ちることなく脳裏に残るだろうという確証がある。 あの姿に自分が見惚れなければ、あの声に高鳴る胸が無ければ。そもそも、最初に出会ったのが自分でなければ。 彼は、こんなことにはならなかったのだ。 その思いは鈴仙の体を這う鎖となり、彼が目を覚まし、記憶を失っていた事で彼女を縛り上げてしまった。 結果生まれる、苦手意識のようなもの。それが、彼女から青年を遠ざけた。 用事があれば話しかけたし、呼びかけられればそれに答えた。 けれど、そこに初めて相手を見たときの思いが見え隠れしないように。 想いを鎖で縛って、心の奥底に沈めていた。 ーーー 「――はい、おしまい」 風が○○の声を運んでくると同時に、それまで彼女を包んでいた布が取り払われるのを感じる。 椅子が下がっていき、服を手箒で軽く払われる。閉じていた目を開き、手渡された手鏡を恐る恐る覗き込み、思わず息を呑む。 作業としては、大した物ではない。腰まで届くほどの長髪を、肩口まで切って全体を整えただけ。 けれど、鏡の中に移っていた自分はそれまで見た事のない自分だった。 これが本当に私なのだろうか、そう思うと変身した自分が不安そうにこちらを見る。 「どう……かな?」 ○○の声に、怯えが混じっているように感じられる。 何も言わずにずっと鏡を見つめている自分が怒っていると感じたのかもしれない。 「凄い……これ、本当に私?」 逆だ。思わず聞き返してしまう。 立ち上がると頭は軽く、今飛び上がればそのまま月まで行く事が出来そうな錯覚を受けるほど。 ○○は両手に持っていた刈り布を手首でばさりと一振りして、ほっとしたような笑顔を見せる。 「大丈夫、今俺の目の前にいるのは鈴仙、君だよ。気に入ってくれた?」 頷く。嬉しさでそのまま舞い上がりそうだった。そのまま舞い上がれそうだった。 「良かったー、鈴仙って髪が綺麗だからさ、こういう事言い出すのに凄く勇気が必要だったんだ」 「な……!」 さらりと口に出された自分への褒め言葉に対応できなくて、顔中が真っ赤になる。 何を言うかな、と搾り出すように呟く。 「だって事実だもん。俺、鈴仙のその綺麗な髪、大好きだよ」 顔の赤みが濃度を増す。何でこう恥ずかしいことをさらりと言えるのだろうか、彼は。 悔し紛れに反撃してみる。 「……ふ、ふーん。髪だけなんだ。君にとっての私って」 言ってみてから、とても悲しい事実だと思う。 知っている。この散髪師は、髪を切るという行為が心の底から好きなのだ。だから誰が相手でも真摯にその髪を切り、相手を喜ばせる。 その情熱は髪に向けられているものであって、個人に向けられているものではない。 言われた相手は、その言葉に困ったように笑う。 その笑顔はきっと、彼女の好みの顔。 「どう、だろうね。もしかしたらそうなのかもしれない」 思う。私の好きな笑顔で、言わないで欲しいと。分かりきった答えでも、曖昧なまま希望を残していて欲しかった。 踵を返す。薬売りの仕事はもう終わっている。今日は竹林の中をふらふらと歩いて帰ろう。 「でもね、知ってる? 俺がこんなに相手のことを考えて髪切ったのって、鈴仙が初めてなんだよ?」 足が、止まる。 「突然この世界に来て君の赤い瞳を覗き込んだあの時から、君が俺のために泣いてくれたあの時から。 いつかこの人の髪を切ってあげようって、決めていた。 それが俺に出来る恩返しの形だろうって、朝も昼も夜もずっと、君に似合う髪形を考えていた。 はは、おかしいよね。髪型を考える為に顔を知って性格を知って好みを知って、気が付いたら惹き込まれちゃってた。 凄い時は一日中何をやっても君のことしか考える事が出来なかった日もあった」 背後から、抱きしめられる。 「ねえ、鈴仙。今日髪を切ったのは、ここが境界だったからだと思うんだ。 これ以上君を考えていたら、俺はきっと君に恋してしまう。君のことしか考えられなくなると思う」 「……その気持ちが、私の瞳から生まれた狂気の結果でも? 私は君を狂わせてしまったんだよ。 狂気の中でねじ込まれた想いなんだよ、君のそれは。だから私は、君に好かれる資格なんて、無いんだよ」 そう、思い込もうとしていた。 出会いが悪かったのだと、諦めようと思っていた。 なのに、彼の腕の力はますます強くなっていくのだ。腕の温もりが、思い込みを打ち砕いていく。 「関係ない。始まりがどれだけ不純でも、間違っていても。今の俺はきっと、君が好きなんだ。 狂気がどれだけ心を蝕んでも、それだけは決して歪みやしない。絶対だ。 だから、聞かせてくれないかな。俺は君に恋しても、いいのかな……?」 変身した自分が、今までの臆病だった自分に勇気を与えてくれる。 両手を広げればどこまでも走っていける気がする。今ならどんな相手も敵じゃない。 澄み渡る青空に、彼女の声が吸い込まれていく。 狂気の瞳が介在する余地も無い、一つの答えが導かれる。 「……私は――」 新ろだ12 鈴仙と喧嘩になった。 原因は、俺の目の前の食卓にある。 人参のグラッセにソテー、かき揚げ、きんぴら、煮物、野菜スティックにんじんのみ。 人参50%のメンチカツ、にんじんの味噌汁、そしてデザートは冷蔵庫ににんじんゼリーだそうだ。 そして、俺は人参が嫌いだ。 それは俺と鈴仙が一緒に、里の食堂で昼食を食べていたときだった。 「そういや鈴仙って料理できるのか?」 「そりゃ出来るわよ?なに、もしかして出来そうにないって思ってる?」 「いやぁ、永遠亭に遊びに行くと、いっつも他のイナバ達がご飯の準備してたから、ね」 「む、それじゃあ今日の夜は私が腕をふるうわ!」 「おお、それは楽しみだ。期待してるぜ」 そして現れたのは、忌々しき根菜どもだった。 「鈴仙、一つ言い忘れてたことがある」 「何?」 「俺、人参ダメなんだ…ちっこいガキの頃から、一度も口にしてないぐらいに…」 「……ねぇ、○○……」 「……すまん……」 「人参も食べられないのに、月の兎を彼女にしたっていうの? 酷い…○○がそんな人だったなんて…」 「え、あ、いや、でも、愛は本物だかr」 「食べて」 「え゛」 「愛が本物なら、食べて」 「……どうしても?」 「……」 「……」 「そっか…それじゃもう片付けるわ」 「すまん……」 「いいのよ、○○との縁もこれっきり片付けるから!」 「え!?」 「当たり前じゃない!人参も食べられない人とこれ以上…これ以上……ぐすっ」 鈴仙は泣いていた。 考えてみれば当然だ。 折角腕を振るって作った料理に箸すら付けてもらえなかった。 人参が食べれるか否か、じゃない。 俺は鈴仙の愛情を撥ね付けたんだ。 「……食うぞ」 「いいの、無理しないで」 「鈴仙泣かせたままにする方が、俺にとっては無理なんだよ! 大体、折角彼女が作ってくれた料理に一口も手を付けないとか、彼氏のすることじゃないからな! さぁて、全部平らげてやるぜ!」 「○○…」 大見得を切ってはみたものの、これはとんでもない難題だ… 何とか食べ進むには…加工度の高い料理からいかなくては… まずはメンチカツだ。 こいつならば、肉と半々で、しかも衣を付けて揚げてある。 ソースを多めにかけ、覚悟を決めてかじりつく… サクッ 心地よい歯ごたえと共に、人参の臭みが…こない。 下処理がいいのか、人参の嫌いな部分は何一つなかった。 これは美味いじゃないか。 「大丈夫、○○…?」 次にかき揚げを口に運ぶ。 サクサクとした歯ざわりと共に人参の嫌な味が…ない。 …?これは…? 「うん…」 きんぴらと煮物に箸を付ける。 ……そういえば、最後に食べてから既に軽く十年以上の歳月が流れているわけだ。 要はあれだ…食わず嫌い状態。 人間、成長するうちに味覚にも変化が出て、嫌いだった物も平気になってくることがままある。 ただし、それを食べる機会がなければ、気付くはずもない。 俺は、目の前にある人参のフルコースを既に楽しみ始めていた。 「○○、普通に食べてるように見えるんだけど…」 「ああ、どうも食えるっぽい。っていうか普通に美味しいわ、これ」 「なによそれ…」 「いやぁ、最後に人参食べたのって、ほんとに小さい頃だったんでな。 もう平気になってたっぽい」 「はぁ…一口食べたら許してあげようと思ってたけど、なんか拍子抜けしちゃったわ」 結局、人参のフルコースを平らげて満腹になった俺は、縁側で月を見ながら休憩していた。 今日は十六夜、綺麗な月が雲の無い空に浮かんでいる。 「ちと食いすぎたか…」 「私の分まで全部食べたら、そりゃお腹もきつくなるわよ」 「いや、食ってたら止まらなくなってさ…」 「ふふ、でも、嬉しかった。 あんなに美味しそうに食べてくれたんだもの」 「本当に美味しかったからなぁ…また作ってくれよ。 ああでも…さすがに人参フルコースはやりすぎだぜ?」 「あ、あれはその…好きなもの作ってたらああなっちゃって…えへ」 「兎の人参好きは恐ろしいな…」 月明かりに照らされた鈴仙の顔は、息を呑むほどに綺麗だった。 同時に、もし人参が今でも食べることが出来なかったら… 俺は、この綺麗な顔を見ることが出来たんだろうか… 「なあ、鈴仙…俺が料理を一口も食えなかったら、本当に…」 「…その時は、人参1%入りのオレンジジュースで勘弁してあげたわよ」 鈴仙は、月の兎というよりも悪戯兎のような顔で微笑んだ。 「やっぱり鈴仙は優しいな」 「貴方には特別、ね」 俺達は少しの間見つめ合うと、どちらからともなく笑い出した。 うpろだ1268 「こんにちは、薬の点検に来ました」 「来たよ~」 「ちょっとてゐ、挨拶ぐらいちゃんとしてよ!」 「はは、ご苦労様。 それじゃあ上がって、薬を見ておいてくれ。 その間にお茶を淹れるよ」 「あっ、いつもすみません」 「今日のお茶菓子な~に?」 「てゐったら!」 「今日はブランデーケーキだよ、新聞で見かけたんで買ってみたんだ」 「やった!それ一度食べたかったんです!」 「鈴仙ったら~」 「あはは…し、失礼しました」 ここは里の薬局兼俺の住居。 いや、正確には永遠亭の出張所か。 人里から永遠亭は結構遠い為、薬だけでも提供できるようにと作られたのだ。 そして、その少し前に隣家の火事で家が焼けて困っていた俺が店番として雇われた。 「薬はあんまり出てないみたいですね」 薬の残りを確認している鈴仙が声をかけてきた。 「ああ、薬はね…」 「薬局なのに、カレー粉ばっかり売れてるね~」 「確かに材料はほぼ漢方薬とはいえ、売上の半分以上がカレー粉ってどうなんだろうな…」 「診察に来た親御さんが、子供が食欲が無いときでも食べるからって買ってるって師匠が。 体壊して薬を飲むぐらいなら、そのほうがいいですもんね」 「最近暑いからな…無理もないか」 「そういえば、お茶は熱い奴?」 「いや、朝方にチルノを捕まえて氷を作ってもらったよ。 冷やしカレーが気にいったらしい」 「さすが子供ね…」 お茶を淹れ、ケーキを切って居間に運ぶ。 氷水で冷やしたおしぼりも ブランデーケーキの甘い匂いが、薬局の方まで届いたようだ。 鈴仙とてゐが、呼ばれるまでもなくやってきた。 「いい匂い~」 「薬の補充、終わりました。 夏祭りが近いから、酔い覚ましなんかを多めに置いておきました」 「ご苦労様、二人とも。 今日はアイスティーにしといたよ」 「やっと人心地つけるわ、もう暑くて汗だくなんだもの!」 「ほんと、今日は暑いよね~」 よっぽど暑かったのか、鈴仙はネクタイを外し、ボタンを二つほど外している。 冷たいおしぼりをおでこに当てながら、ストローでアイスティーを飲んでいるが、当然、少し前傾になるわけで… 正直、目の毒だ。 「あー、生き返るわー」 「死んでないけどね~」 「確かに暑いのは分かるが、落ち着いたらボタンぐらいはきちんと掛けてくれよ。 目のやり場に困る」 「えっ!?やだ、忘れてた!」 「そっか~、鈴仙も色気で男を釣る歳になったんだね~」 「ちょ、ちょっとてゐ!変なこと言わないでよ!」 「しまった、あまりにも美味しいエサにまんまと釣られた!」 「もー、○○まで!」 「どうよ○○?一家に一匹鈴仙ちゃん?」 「いや是非とも一匹所望いたす」 「価格は三百円ポッキリですぜ~」 「うぬぬ…月給三か月分か…月賦でおk?」 「一括のみ受け付けウサ」 「……」 『幻 朧 月 睨 ( ル ナ テ ィ ッ ク レ ッ ド ア イ ズ )』 「「すんません、調子こきました」」 「分かればよろしい」 物理破壊を伴わない、家にやさしいコスト5スペル。 相手にも優しいのが今回ばかりは幸いした。 「そういえば、夏祭りは三日後だったっけ」 「ああ、救護テントは俺も手伝うんだったっけ…」 「そうよ、忘れないでよね。 夏祭りを楽しめないのは残念だけど、みんなの思い出に影を落とさないようにするのも大事なんだから」 ケーキをつつきながらの会話。 夏祭りは残念ながら楽しめない。 …だが、テントには鈴仙がいる。 「わかってるよ。 まあ、今回は別に出店を回らなくてもいいしな」 「ほうほう、○○は別の楽しみを見つけたみたいだね~」 「ああ…だが言えば兎鍋だぜ?」 「亀の甲より年の功、幸せうさぎがそんな野暮しないって~」 「なにコソコソ話してんのよ、そこ」 「「なんでもないよ~」」 「…ものすごく気になる…」 アイスティーとケーキを楽しみながらの、おばかな会話。 この時間を過ごす為に、俺は生きているのかもしれない。 「ん~、このケーキおいしいね~」 「ああ、先にちょっと味見したけど、かなりいい味だよな。 ちょっと酒がきついけど。」 「そう?丁度いいと思うけどな~」 「ん~、お酒の香りがすごくいいね~ほんとおいしい~」 「あれ?鈴仙ちゃん、ちょっと酔ってる?」 「よってないよ~?ケーキぐらいで月の兎が酔うはずないじゃない~あははははははは」 「あ、そうか…」 「え?なになに?」 「このケーキ、はじっこに酒がやたら多く染み込んでるんだ。 鈴仙の皿のケーキ、ちょうどはじっこだ…」 このケーキの端は、やたら多く酒を含んでいる。 味はいいんだが、そのアルコール量は酔うには十分すぎる。 味見をした俺が言うんだから間違いない。 「ん~おいしい~」 鈴仙は、幸せそうにケーキを食べている。 「まあ、この後は帰るだけだから怒られたりはしないし、まあいっか~」 「いいのかよ!」 上機嫌でケーキを食べ終えた鈴仙は、そのまま帰ると言い出した。 「本当に大丈夫か?」 「だいじょうぶだいじょうぶ~このていどなんてことないわ~」 「ちょっとやばそう…」 「ふう…てゐ、鈴仙のことよろしくな」 そういって、俺はてゐの頭を撫でてやる。 いつも帰り際にやっていることだ。 「はいよ~、ふふふっ」 「いっつもてゐだけずるい~!私も~!」 「えっ!?」 鈴仙が、頭をなでてくれと言い出した…本格的に酔ってるな。 「はやくはやく~」 「はは、仕方ないな」 鈴仙の頭を、言われるがままに撫でてやる。 「ん~♪」 「やれやれ…すっかり可愛くなっちゃって…」 とん 鈴仙が、頭を俺の胸に預けてきた。 「…鈴仙?」 「…ん…もっと…」 鈴仙の頭を撫でている右手はそのまま、左手で鈴仙を抱きしめる。 鈴仙も俺に抱きついてきた。 両手を俺の後ろに回し、手を背中に這わせてきた。 「…鈴仙…」 「○○…」 …ずっとこのままで… 「三分経過~」 「「えっ!?」」 てゐの一言を合図に、俺と鈴仙はものすごい勢いで体を引き離した。 「あー、すまん。ちょっと調子に乗りすぎた」 「わ、私こそごめん…」 顔が熱い… 鈴仙の顔も真っ赤になっている。 少し酒が入った状態とはいえ、なんとも恥ずかしいことをしてしまった。 「それじゃ、夏祭りでね~」 「ま、またね○○!」 「お、おう!」 「青春だね~」 「「うるさいよ詐欺ウサ!」」 「あれ?夫婦?」 「「……!」」 そのまま、互いに一言も発することが出来ないまま、鈴仙とてゐは帰っていった。 「…あれ?三分経過とか、滅茶苦茶野暮じゃないか?」 寝る前になって気付いたあたり、俺にも相当酒が回っていたようだ。 「…次は夏祭りか」 次に鈴仙に会えるのは夏祭りの日。 その日を待ち焦がれながら、タオルケットをかぶる。 だが、俺の手は鈴仙の暖かい感触がいつまでも残っているかのようで、とても眠れそうにない。 「…鈴仙」 愛する人の名を呟き、俺は無理矢理に目を閉じた。 うpろだ1270 体に響く太鼓の音と、篠笛の調べが心地よい。 夏の暑さも、夕闇と共に収まっていた。 「みんな楽しそうだな~」 「そうだなぁ…」 「ごめんなさいね、○○まで付き合せちゃって」 八意先生が、申し訳無さそうに話し掛けてきた。 「あーいや、人里の祭りに救護テント出してもらってるんですし。 毎年、医者が酔っ払って役に立たないのも分かってましたから…」 「医者が酔っ払うとか…結構無茶苦茶なのね…」 「腕は悪くないんだけどね、勧められると断れない人だから」 そんなわけで、今年は祭の会場の二箇所に救護テントが出ている。 普通なら患者は分散するはずが… 「鈴仙、消毒薬の瓶を取って」 「はい師匠。 …気のせいか、みんなこっちのテントに来てるような…」 「医者がアテにされてないせいだな…」 患者はほぼこちらのテントに集中していた。 まあ、患者といっても大体は人ごみに酔ったか転んだ程度のものだが。 それでもひっきりなしに来られると、なかなか辛いものがある。 祭りの開始から2時間ほどして、やっと客足が落ち着いた。 「ふー、やっと一休みできるな」 「みんなご苦労様。 てゐ、ちょっと抜けて食べ物と飲み物を調達してきてちょうだい。 あ、チョコバナナだけは絶対に外さないでね」 「わたしかき氷!」 「俺は焼きそば!」 「らじゃ~!」(`・x・)ゞ てゐは何故か敬礼をして、外に飛び出そうとした。 「てゐ!ゲームは一回だけにしなさいよ!」 「鈴仙ちゃん、無駄に鋭いな~わかったよ~」 ぺろっと舌を出して、てゐは雑踏に消えていった。 「一回ならいいんだ?」 「いつもなら真っ先に逃げてるはずなのに、今日は頑張ってたしね」 「そうね、珍しいこともあるものね…何かあったのかしら?」 俺たちが不思議がっていると、一人の男が飛び込んできた。 「す、すいません、八意先生は!?」 「はい、どうされました?」 「頭を打ったまま動けなくなった人がいて…すぐに来てくれますか?」 「分かりました、場所は?」 「その…向こうの救護テントです…」 「…どういうことかしら?」 「それが、椅子に座ってる先生に無理に酒を勧めた男が、勢い余って先生を椅子ごと後ろに…」 「…はぁ…分かったわ。 鈴仙、○○、悪いけどしばらくお願いね」 「わかりました師匠」 「はい、早く行ってあげてください。 ここはしばらく大丈夫だと思うんで」 八意先生は、愛用のバッグを持って向こうのテントに向かった。 「やれやれ…まさか先生が患者になるとはなぁ…」 「ほんと無茶苦茶ね…私達が居なかったら、ほんと悲惨だったんじゃない?」 「全くだな」 この状況で、目の前で将棋倒しでも起ころうものなら、もはや手の打ちようがないだろう。 四人いても対処できるかどうか分からないのに、今は俺と鈴仙の二人しか… …二人しか…いない… そのことに気付き、鈴仙の方を向いてしまった。 鈴仙もこちらを見ていた。 お互い、一言も発せず、身動きもしないまま、時間が流れた。 ドーーーーーーーーーーーーーーン その音に、俺も鈴仙もびくっと体をふるわせた。 「花火が始まったみたいだ。 お、こっからもよく見えるな」 「本当、綺麗ね…」 テントから少し外に出て、花火を眺める。 暗闇に咲く光の華をしばし眺めていた。 ふと、横に居る鈴仙を見る。 花火の光が、鈴仙の瞳に映り、色とりどりに輝いてる。 気が付くと、俺は鈴仙の肩を抱いていた。 鈴仙もこちらに体を預けてくる。 「…綺麗だね…」 「うん…」 俺と鈴仙は、花火が終わるまで、そのまま立ち尽くしていた。 …今しかない、本気で気持ちを伝えるなら。 「すいません!うちの子が転んでしまって…」 足に怪我をした子供を抱いた母親が駆け込んできた。 「あっ、はい!こちらに座らせてください。 ○○、創傷用の一式用意して」 「あ、ああ、分かった!」 …ま、次の機会を待つか… しばらくして、八意先生は向こうのテントでそのまま待機する旨連絡が来た。 てゐは結局逃げたのか、そのまま戻ってくることは無かった。 鈴仙は「もう!結局逃げたのねあの詐欺ウサは!」と怒っていた。 そんな鈴仙をなだめつつ、やってくる患者の治療を続け、祭りは終了した。 「これで終わりかな…お疲れ様、鈴仙」 「うん…ほんと疲れちゃった…」 鈴仙は耳までぐったりしていた。 「た、ただいま~」 「ちょっとてゐ!今まで…って、なんであんたがぐったりしてんのよ」 「ひ、姫に捕まって、そのまま今まで市中引き回し…」 「それはまた、大変な目に遭ったな…」 「それじゃあ責めるに責められないわね…ご苦労様」 「とりあえずかき氷以外は確保してきたよ~」 「お、それじゃ早速食べるか」 「うん、もうおなかぺこぺこ!」 出店の焼きそばやお好み焼きを食べながら、くだらない会話をする。 次こそは言葉で伝えよう、そう思いながら。 花火が始まって、しばらくした頃。 「チョコバナナおまちど~」 「あらてゐ、どうしてこっちに?」 「あっちは熱くて近寄れないのよ~」 「ふふ、そういうことね。 それじゃ、かき氷は私が頂いちゃおうかしら」 「半分ちょ~だい~」 うpろだ1276 今日は幻想郷でもっとも暑い日らしい そして暑いといったら倒れる人も多いそうで、永遠亭で手伝いをするようにと師匠に呼ばれたので 来てみたら案の定 輝夜「あちいぃ~溶ける~溶ける~」 ……とまあ、こんな感じであったので普通に師匠の手伝いをすることにした 永琳「あらよく来たじゃない。てっきり運ばれてくる方だと思ってたわ」 ○○「そんなにやわじゃないですよ師匠。それで何を手伝えばいいんですか?」 永琳「そうね……とりあえず運ばれてくる人たちがとのくらいのものか調べておいて」 ○○「了解しました。……それで鈴仙はどこに行ったんですか?」 永琳「あの子なら町に出かけてるわよ。里のほうでも倒れる人が多くてここまでこれないからって」 ○○「あの鈴仙がね……優しいところもあるんだなぁ」 永琳「ふふっ、今頃気づくようじゃまだあなたもダメダメね」 ○○「???」 永琳「じゃあよろしくね」 なんか変な師匠。うふふと笑いながらどっか行っちゃったし それにしてもあの鈴仙がわざわざ里の方へ出向くなんて……明日は雨だろか? ……って早く師匠の手伝い終わらせないと それにしても鈴仙か…… 師匠に言われたとこはきちんとやるし、 いつも俺に対しては厳しいけど言ってる事は正しいし 髪さらさらで可愛いし、 ウサ耳だし、 赤い眼もなんかかっこいいし ……俺、鈴仙のことどう思ってんのかなぁ…… 鈴仙「ただいま、あれ、○○じゃない」 ○○「っと、よお、れいせ……ん……?」 鈴仙「どうしたのよ?」 の、ノースリーブだとぉ!? ま、まさか今までにこんなことがありえたか!? ○○「な、なぁ鈴仙?」 鈴仙「何よ?」 ○○「なんで今日はそんな格好なんだ?」 鈴仙「え?暑いからに決まってるじゃない」 ○○「だ、だよな~あははは」 鈴仙「ま、まさか……ちょっと近寄ってこないでよ?」 ○○「なんで?」 鈴仙「あんたもどっかのバカと同じで「腋サイコーーー!」とか抱きついてこないでよね!」 ○○「……悪いがそこまでは腋に執着はしていないぞ」 鈴仙「ほっ……」 ○○「まったく人をなんだと思ってやがる……」 鈴仙「そ、それじゃあ今の私どう……思う?」 今の私?そんなもん可愛すぎるにきまってるじゃないか! っと危ね~思わず本音を言っちまうところだったぜ でも……本当に可愛いよなぁ…… 鈴仙「○○?」 ○○「のわぁ!い、いつの間に横に!?」 鈴仙「ねぇ……私のこと……どう思う……?」 すすすすすすs擦り寄ってこないでくださいれれれれれ鈴仙 りりりりr理性ががががが ○○「そ、その……す、すすすすす」 鈴仙「す?」 ○○「す……す、すごく可愛いと思う……」 鈴仙「そう!嬉しいよ○○!」 ……ああ、なんだろうこの笑顔を見たらなんでもできる気がするぜ…… 永琳「そう、それじゃあこれも追加でヨロシク」 ○○「……ハッ、し、師匠!?勝手に心読まないでください」 鈴仙「何考えてたの?」 ○○「い、いやなんでもない。そ、それよりこれ早く終わらせようぜ」 鈴仙「そうね、とっとと終わらせましょう」 永琳(うふふふ、上手くいったわね。この「自分の本当の気持ちに気づく薬」……あとはこのまま……うふふふふふふ……) 輝夜(えーりんがこわいよぉ……) ○○「鈴仙そっちはどうだ?」 鈴仙「うん、もう終わるよ」 よ、ようやく気持ちが静まってきたぜ…… 鈴仙「○○?」 ○○「へっ?あ、ああ」 鈴仙「そのさ……この後空いてる?」 ○○「あ、ああ」 鈴仙「大事な話があるんだけど……いい?」 だ、大事な話!?ももももももしかしてそれって!? 鈴仙「その……ここじゃあなんだから外に出て話ていいかな」 ○○「それで……大事な話って?」 鈴仙「その……あのね……」 こ、これは愛の告白ということですか!? そ、そそそそそんな心の準備が…… 鈴仙「実は……」 ○○「ゴクリ……」 鈴仙「実は○○は師匠に薬を打たれてるの!!」 ○○「俺も鈴仙のことs……ってええ!?」 鈴仙「そうなのよ……って○○何うつむいてるの?」 ああ、なんだろうこの悲しさ…… そう、そうだったのか……ということはこの状況を!! ○○「はっ!?鈴仙っ!」 鈴仙「っ!!そこか!!」 永琳(ちっ気づかれたか……まぁいいデータが取れたからいいわ。ここは退散ね) ドロン! 鈴仙「遅かったか!」 ○○「もういいよ鈴仙……どうせデータ採集に使われてただけだから……」 鈴仙「それにしても……何でそんなに落ち込んでるの?」 ○○「ああ、それは俺が鈴仙のこと好きだから、てっきり鈴仙も俺のこと好きだと思って……あはは、これもきっと師匠の薬の せいだよね」 鈴仙「!?……そ、それは……私も……その」 ○○「えっ?」 鈴仙「わ、私も○○のことが好きだから……」 ○○「あ、あははは、な、なんだ両思いだったのか」 鈴仙「そ、そうみたいね……あははは」 ○○「あははは……」 鈴仙「ははは……」 ○○「……」 鈴仙「……」 ○○「そ、そろそろ戻ろうか」 鈴仙「そ、そうね戻りましょ」 永琳(うふふふ、鈴仙よく見破ったけどまさか自分も打たれてるなんて思ってないわよね……うふふ、いいわ~初心な恋愛…… ここからきっと二人とも大人への階段を上って……うふふふふh) 輝夜(……さっきから永琳「うふふ」としか笑ってないし……死亡フラグかしら……) てゐ(いや!あんた死なないやん!?)
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鈴仙1 1スレ目 55 「大勢の仲間を見捨てて逃げ出した私に幸せになる資格なんてあるわけない!!」 夜の竹林に響き渡る声。普段の鈴仙からは考えられない迫力だった。 アポロ13の到達を発端とする月の探索により、月の兎は幻想となった。この間永遠亭を襲撃してきた賊は、つまり、幻想郷に迷い込んだ月の民だったのだろう。 彼らが現れたことによって、長年の間鈴仙の心の中に閉じ込められていた罪悪感が蘇り、重い枷となって鈴仙を縛り付ける。 そうしてそれは、単純な拒絶となって俺の前に立ちはだかった。 「どんな過去を歩んできても、それが幸せになれない理由になんてなるわけないだろっ……」 体は自然と動いていた。両の腕を鈴仙の背に回して、強く抱きしめた。 驚いて一瞬体を硬くするが、それ以上の抵抗はない。 俺は自分の決意を固め、揺るぎない物にするために、続けた。 「お前にどんな過去があっても関係ない。それがお前を苦しめるというなら、俺が全部取り除くから」 「……私は卑怯な女なんだよ? 私と一緒にいたら、貴方まで不幸になる」 鈴仙の声は既に涙交じりだった。 「それでも構わない。お前といられるなら、月だって敵に回してやる」 小さな嗚咽と、笹が擦れる音だけが静かな竹林にいつまでも響いていた。 最初の台詞が何を言っているのか意味が解らんと言うやつは永夜抄のおまけ.txtを読んでくれ。 今回のNG 「それでも構わない。お前といられるなら、月の頭脳だって敵に回してやる」 ピチューン 1スレ目 57 うどんげ、月兎してもいいかな? 1スレ目 64 俺「さあ、鈴仙。ちゃんと俺の目を見て言ってくれ。俺を好きだと」 優曇華「う……あう……そ、その……」 (少女幻視中…) 俺「ぐぁぁぁぁあぁぁっっ!目が!目がぁあぁぁぁあああっ!」 BAD ENDING(ありきたり) 1スレ目 119 121 126 128 130 133 150 153 「…全く、永琳さんも無茶な事言うよ…」 永琳さんに薬学を教えてもらう事になり、僕は材料を集めに山奥まで来ていた。 「まだ着かないの、その場所に?」 「…飛べれば早いんだけどね」 隣を歩いている少女――鈴仙・優曇華院・イナバもその手伝いとして着いて来て貰った。 この山って飛ぶことが出来れば、それほどの距離にはならないんだろうけど、 飛べない僕には難所でしかない。 「そう言えば優曇華も飛べるんでしょ? だったら先に行ったら?」 「ダメ、師匠にちゃんとあなたを連れて帰るように言ったから、一緒に行くの」 そう言って、一応僕にペースを合わせてくれるのは嬉しいんだけど やっぱり、効率とか考えれば飛んでいってもらうのが早いんだけどな… 「てゐみたく飛べるんだから、先に行ってとってきたほうが早いよ」 「…だめ」 それでも譲らない優曇華。 「…だから、優曇華」 「鈴仙」 突然、自分の名前をハッキリと言う優曇華。 「あなたって、私以外の人にはちゃんと名前で呼ぶよね。 てゐ、永琳師匠、輝夜さま …でも私だけ、名前で呼ばれてない」 「いや、それは…みんなそう呼んでるから――」 「鈴仙!」 …どうやら、僕が名前で呼ぶまでこの口論は続きそうだ。 「だから、優曇華?」 「鈴仙!」 「…うど――」 「鈴仙!」 目が赤い、いや…いつもの事だけど、この表情は…泣きそうだ。 やっぱり、そう呼ぶしかないのか… 「…鈴仙」 「…何?」 「…行こうか、日が暮れちゃうよ」 「…うん」 既に妖怪とかが出そうな時間の空だった。 「…これで、一応揃ったのかな?」 僕にとっては見知らぬ草花とかばっかりだ。 でも、鈴仙のおかげもあってか、永琳さんの指示した材料は、全部集まった。 「ねえ」 「…うん?何、鈴仙?」 集めた物をまとめながら僕は彼女の方を向く。 既に日の暮れているこの場所は、暗いながらも月の光で鈴仙の姿を映していた。 「私が、月から逃げてきたって言ったよね?」 「…それは、一応聞いたけどさ」 鈴仙の重い過去のお話だ。 この話は、彼女の口からではなく、永琳さんの口から聞いた事だが。 「私は、今でもちょっとだけ後悔してるの」 「そりゃ、そうだろうね」 きっと家族とかも居ただろうし、友達だって居たはずだ。 それを置いて逃げてきたら、僕ならきっと耐えられない。 「でも、嬉しい事もあったんだ」 「うん、永琳さんやてゐ、輝夜さまに会えたからだろう?」 「それもあるけど…」 そこで一瞬、息を吸う。そして、僕の方を真っ直ぐに向き 「あなたに、会えたから」 笑顔でそう言った。 それに対して僕はどう返すべきなのか、頭が真っ白になりながら考えた。 「…ぼ、僕も…鈴仙と、会えて…嬉しい、よ?」 「――さ、帰りましょう? 師匠も心配してるだろうし」 そう言って顔を真っ赤にしながら、背を向ける。 「鈴仙!」 ビクッと、一瞬彼女の体が硬直する。 「…僕は、鈴仙の事が好きだから」 「――!」 暗がりでも照らす光が、彼女が震えているということが分かった。 「…返事は、いらないけど」 「…――」 「え?」 蚊の鳴くような声で、何かを呟いた。 「私も、あなたが好き…大好き…!」 「うん…」 僕達は月の照らす中で、抱き合い…その後、山を後にした。 「とりあえず、ちゃんと材料は集めてきたみたいだけど…二人とも随分と遅かったわね」 永遠亭に辿り着いて早々に永琳さんに言われた言葉がそれだった。 「…探すのに手間取りまして」 とっさに口に出た言葉は、きっと通じはしないんだろう。何せでっち上げなのだから。 あからさまなため息をつきながらきつい目をして 「…何のためにウドンゲを付いていかせたと思ってるの?」と永琳さんは言う そりゃ、材料を探す為だけど… 「そうでした、師匠。 それで一体何を作るつもりなんですか?」 鈴仙の言葉で僕も思い出した。 確かにそれを聞いてない。 初心者にとって本当に初歩の初歩とは聞いていたけど…それが何なのかは分からない。 「あぁ、言ってなかったわね」と 永琳さんは言葉を切り…少し考えるようなふりをして、やがてこう言った。 「…秘密よ」 教えてはまずい事なのか、いやそれとも面白そうだから、ただ黙っているのか… 目が笑っている事から考えると、やっぱり後者なんだろうなぁ… 「さぁ早速、薬の製作に入りましょう。ウドンゲ、あなたはちょっと出て行きなさい」 その永琳さんの言葉に驚いたのか 「え、私も手伝いますよ?」 と、鈴仙は言った。 「ダメよ。これは彼の修行だから、でも、そうね…。 後でその薬の実験台になってもらおうかしら」 「え…」 実験台――そのあからさまな単語に鈴仙は一瞬で後ずさる。 そりゃ、誰だって実験台になんてなりたくないって… 「大丈夫よ。風邪薬みたいな物だから」 それは結局の所、風邪を引いた人じゃないの無意味なのでは? 「…そ、それじゃ、頑張ってね」 鈴仙はそう言いながら、さっさと部屋を出て行った。 残された永琳さんと僕の間に沈黙が包み込む。 「…まずは、調合の分量から言っておくわ。 これを間違えると薬は毒になるの 薬も度が過ぎれば毒とはよく言ったものね。大体、このくらいの分量ね」 「はい、えっと…こっちの分量はこれくらいでしょうか?」 「もうちょっと少な目ね。 分量をミスしたら、それだけあの子が苦しむわよ?」 「脅さないで下さいよ…」 いや、これはもう脅しじゃないけど 「脅しじゃないわよ?あなたがミスしなければいい話だから」 それもそうか。薬学を志す身として、ちゃんと最初の作業くらいは成功させないと! 僕は目の前の作業に取り掛かった。端で笑っている永琳さんの様子も気になるけど… 「…ふぅ」 外に出てから、私はゆっくりと溜め息をついた。 何を作っているのか気になる一方で、彼が大丈夫かという不安に襲われている。 「大丈夫…だよね」 いくら師匠でも、そんな事をするはずはないし…多分、大丈夫………のはず くいくい そんな考えが浮かんだ途端に私の服の袖が引っ張られた。 その方を向くと、二匹の妖怪兎が私の方を見ていた。 「えっと、どうかしたの?」 見下ろすような形をやめて視線を合わせて、その様子を見る 「れーせん…」 と一度私を指差して自らを指差す。 「――」 そしてもう一匹が、今、部屋の中に居るであろう人物の名前を舌っ足らずに言い その指を自分に指す 「う~」 と急に二人の妖怪兎が抱き合うような形になる。 「れーせん、だいすき」 「わたしも、すき」 …ボッといきなり顔が熱くなったような気がした。 いや、気がしたじゃない。現に熱くなっている。 「あ、あ、あ、あ…あなたたち…見てたの!?」 「う!」 首を縦に振る…という事は肯定の証らしい。 しかしあんな山奥に偶然に行くなんて事は考えられない。 つまり、誰かに頼まれていったという事だろう。 「…怒らないから正直に言ってみて。誰に頼まれたのかな?」 そう言って私は敢えて立ち上がった。 別に威圧するわけでもない。自然な行動だ。私は怒ってないし。立って見下ろす形に なるのは普通の事だ。うん、間違いない。 「てゐ!」 「てゐ!う~」 「そう…てゐなのね…」 自分でも頬が緩んでいる気がする。 自分でも不思議に落ち着いている。あまりにも怒りが過ぎてしまうと、 その頭は急速に冷却されて逆に落ち着くという事を、師匠の文献で見た気がする。 いや、そんな事は…どうでもいい。 「あの子ったら…少しお仕置きが必要みたいね…。ふふ、うふふふふ」 鈴仙…実験台なんて大丈夫なのかな? この薬、毒薬って事はないだろうけど…やっぱり飲ませる身としては 心配だ。 「ほら手が止まってるわよ」 「は、はい」 当の本人は全く教える気配すらないし… 「永琳さん…」 「何の薬を作っているかなんて質問は三十二回目だから却下するわよ」 「………」 バレてるよ。 「毒薬なんて作る気ないから安心しなさい。誰が好き好んで鈴仙を殺すもんですか」 それも、そうか。 「…そう、ですね」 家族同然なんだから、苦しめるような真似はするはずがないんだ… …僕が変な事をしない限りは。 「それじゃ次の作業ね」 そう言った時だった。 ガシャァァァン と、大きな何かガラスのような物が割れる音がした。もっともこの永遠亭にガラスなんて ないはずだから、きっと何かが暴れる音なんだろう。 「…何でしょうね?」 「さぁ?」 そう言いながらも含み笑いをする永琳さん。 …やっぱり見当はついてるって事かな。 「これで最後だから、やり方は紙に書いておくわ」 そう言って簡易なメモを残して、永琳さんは部屋から出て行った。 きっと、原因を調べに行くのだろう。絶対見当はついてるはずだろうけど… 「それで、出来たのね?」 「はい、出来ました」 僕の手元には確かに薬がある。 結局何の薬かは教えてもらってないけど。 「あの、本当に鈴仙に飲ませるんですか」 「そうじゃなきゃ、薬の成果が試せないでしょう?」 …風邪薬みたいなもんだとか言ってたような気がするんですが。 やっぱり、怪しいもんだ。 「てゐは…さっきボロボロだったし、他の誰かが連れてくるはずね」 「え、てゐがどうかしたんですか?」 「…少しね」 やっぱり目が笑っている。 もしかしたら、また何かあったのかもしれない。 「……遅くなりました」 ……静かに出てきたのは凶悪なオーラを漂わせてた月の兎だった。 満身創痍と言うか何というか…ともかく、疲れているということはハッキリと分かる。 「…とりあえず、これでも飲みなさい。疲労回復くらいはするかもよ?」 と、素早く僕の持っていた薬を奪い取って鈴仙に渡した 「じゃあ、遠慮なく…」 鈴仙は疑う事もなくその薬を放り込んだ。 「…あの、永琳さん、本当に飲ませて大丈夫だったんですか?」 数分経っても、飲んだ彼女に変化は見られない。 かと言って、永琳さんの言った事も信用できないんだよな… 「大丈夫でしょ。 あなたが変な失敗をしてない限りは」 「それこそ大丈夫です。だってずっと隣で分量とか細かく計算したじゃないですか」 「師匠、結局これは何の薬なんですか?」 「いや、だから秘密なんだけどね」 思ったように効果が出ていない…ってところかな? 表情から予想するには。でも、効果が出ない方がきっといい。 僕はそんな予感がしていた。 だが、観察をして更に数分が経ってから…それは起こった。 「う、ん…」 「…どうかしたの、鈴仙!?」 「効果が出てきたみたいね」 「効果って…もしかして、あの薬の!?」 どうやら心拍は上がってるようだし、顔も赤い。 風邪とはまた違った症状みたいだけど…汗をかいているみたいだ。 「と言うよりも、僕に何の薬を作らせたんですか!?」 「…その状態で気付かないの?」 「熱…いよ」 弱っていると言うよりも、どことなく色っぽい雰囲気を出している鈴仙。 やっぱり、これって… 「あの、薬ですか?」 「えぇ、あの薬よ」 悪い予感的中。僕の勘は当たるようだ。当たっても嬉しくないけど。 「熱…い。脱い…で、いい?」 「待て待て待て!鈴仙!落ち着いて!脱ぐな、いや、脱がないで!」 ここで何か起きたら、間違いなく僕のリミッターが外れるような気がする。 これは予感じゃない。確信だ。 「ちょっと、永琳さん! どうにかして…って居ないし!」 いつの間にか、永琳さんの姿はどこにもなかった。 いや、それどころか、永遠亭中の気配がない。 「…れ、鈴仙さん?そう引っ付かれると、大変身動きが取れないのですが」 「だぁめ…汗かいたら、ちょっと…寒くなったの…」 ダメだ。僕はこのままだと、終わってしまう。 何かが終わる。 でも……きっと、またこの世界に帰って来れるだろう。 きっと…そして、また鈴仙と会えるように―― 蛇足 いつもの永遠亭にいつもの日常が再び始まっていた。 あの日の僕の記憶はところどころ曖昧だが、 きっと、ロクな事になっていないのだろう。 鈴仙は花の異変を解決して戻ってきたばかりだ。 …まだ、季節外れの花が咲いているところを見ると、完全とは言えないみたいだけど。 「おはよう」 「…お疲れさま。昨日は鈴蘭を取りに行ったんだってね?」 「うん…おかげで色々疲れたわ」 まだ寝足りないのか、まぶたを擦る鈴仙。 「…眠ったら? まだ時間的には余裕があるでしょ?」 朝早くに永琳さんの持っている文献を読むのが、僕の日課である。 まぁ、鈴仙はこれにたまに付き合う程度だけど。 「……何かあったのかな?」 「え?」 自分じゃ気がついてないみたいだけど、目が赤い。 また泣いたのかな?あの時みたく。 「涙の線が残ってるしね」 「…っ!」 図星を指されたのか鈴仙は顔を隠すように僕の胸元に抱きついてきた。 多分、また泣いたんだろう。 「大丈夫、鈴仙は…優しいよ」 「私、自分勝手って言われたよ…?」 「…それでも、罪を認めて泣くことが出来るなら…僕は鈴仙と一緒にいたい」 「でも、でも…」 頭を撫でながら僕は出来る限り優しく言い聞かせる。 「幸せな時に罪は思い出さなくてもいいんだ。 勝手だけど…僕と一緒にいる間は、罪は忘れてくれないか?」 楽しく幸せに居たい、その想いだけを語りかける。 「私…あなたと一緒にいたい…居たいよ…!こんな罪、忘れたいよ…!」 「大丈夫だよ。僕が一生、鈴仙についてあげるから」 罪は裁かれなきゃならないなんて…そんな事はない。 どんな者でも幸福な時間を過ごす権利はあるはずだ。 だから、彼女を守っていきたい。この脆くて儚い少女を… 「ねえ」 「何だい?」 「…さっきのって、ぷ、プロポーズって事でいいのかな?」 「ぷ、プロポーズ!?」 「…違うの?」 「いや、そんなあからさまにがっかりしないでよ!いいって!プロポーズって事で! 嘘偽りないんだから!」 「本当?」 「うん、キミとなら、ずっと歩いていける…だから――」 蛇足の蛇足 「…れーせん!」 「あ、何?」 あの出来事から二日ほど経っていた。 また、あの妖怪兎の二匹が居たのだ。 あの時と同じようにひざまづく形で二匹を見る。 「…れーせん、――とずっと一緒?」 「いっしょ?」 またてゐ辺りに盗み見しろとでも言われたのか、 その妖怪兎は例の出来事を知っていた。 でも今度はあの時と違って、怒りなんてない。むしろ誇らしいくらいだ。 「うん、私にとって大事だし、一生懸命になってくれるのが…うれしいから」 「う?」 「彼とだったら、ずっと一緒に歩いていける…」 「きみとなら、ずっと歩いていける?」 あの時彼が言ってくれた言葉そのままだ。 その妖怪兎達の言葉に私は頷く。幸せになれるから。 「あなた達も、そういう人がいるんだよ?」 そう、私にとっての彼のように―― ─────────────────────────────────────────────────────────── 1スレ目 322 長いSSやあまあま小話なんてかけないので 短くスパッとプロポーズしようと思う。 うどんげ! そのうさ耳僕にも貸してください(*ノノ) ─────────────────────────────────────────────────────────── 1スレ目 370-372 微エロ注意……かな?言葉よりも行動で。鈴仙ファンの方許して。 がつん、と脳髄を直接殴られたかのような衝撃。 視神経を焼きながら、電流が頭の中を駆け巡っていく。 声を出すことさえ許さない激痛。 「くっ…………あっ…………ぐっ…………あああっ!?」 何だ? いったいなんでこんなことに? 疑問符が頭の中で暴れているだけで、とても形にならない。 苦しい。どうにもならないくらいに苦しい。 今すぐこの頭蓋骨を包丁で叩き割って、煙を上げている脳を両手で掻き出して視神経をそのままずるずると引きずり出したいくらいの痛みが走る。 俺は両目を押さえてうずくまった。目から激痛が頭に駆け上がってくる。 呼吸ができない。喉が痙攣している。 いったい、なんで………… 逗留していた永遠亭の主、蓬莱山輝夜に頼まれて廊下の奥の奥、薬品の材料倉庫にまで誰かを呼びに行ったその先で…………. 「ぐっッ!がはぁっ!」 唾液が飲み込めなくて俺は喉をかきむしって咳き込む。 このまま、死ぬかもしれないと本気で思った。 「――――!――――ってば!ねえ、しっかりして!」 俺の名前を呼ぶ声が、かすかに耳に入った。 肩に手らしきものが置かれて、上体をゆすぶられるのが分かる。 やめてくれ、かえって頭が痛くなる。 「――――!ねえ!ねえってば!お願いだからしっかりしてよぉ」 震えながら閉じていた目を開ける。シュールレアリズムが具現したような歪んだ視界。 「息を吸って。そして吐くの。ほら、深呼吸して」 何か考えることもできず、その声に人形のように従った。 息を吸って吐く。その単純な動作の繰り返しさえも忘れそうな激痛の中、ひたすらに同じ行為を反復していく。 ようやく、乱れた視界が形を取り戻していく。 俺の肩に手を置いて、こちらを心配そうに見つめているのは………… 「れ、鈴仙…………」 オモチャのような耳をした月の兎の少女。そのルビーよりも赤い瞳が、俺を見ていた。 ざくりと、目から心臓までその瞳の赤が貫いたよう。 「よかった……………………」 俺は……何を……考えている? 肩に置かれた手が、気になって仕方がない。 「鈴仙…………」 「なに?まだどこか痛むの?」 顔と顔が、額と額が触れ合わんばかりに鈴仙の顔が近づく。 「いや、もう……大丈夫だから……」 必死に顔を背ける。頭は割れんばかりに痛むのに、胸の内は冷たくも深い炎が熱を放ち始めてきた。 その白くてふかふかの兎の耳。 柔らかそうな血色のよい頬。 そして、長い髪から香る甘い香りが、 頭の誰かを、狂ワセテイク。 俺は……鈴仙を…… 今まで、こんなことは思いもしなかった。ただの月の兎だ。まだ少女だし、それに、人じゃない。 いや、違う。前から、俺を見る鈴仙の目は異なり始めていた。 俺と楽しそうに話していた鈴仙。風邪を引いたときは永琳さんを差し置いて看病してくれた鈴仙。俺にしか見せない顔で笑ってくれた鈴仙。 俺は……鈴仙を…… ははっ、なんて……馬鹿なことを。 「じっとしていて。すぐ、誰かを呼んでくるから」 肩から離れてしまう手。 行ってほしくないと、心の底から思った。 それと同時に、頭がこれ以上ないくらいに強く痛んで、 俺はせっかく取り戻した意識をまた手放していた。 手だけが勝手に動き、去ろうとする鈴仙の手首をつかんで 床に、押し倒していた。 俺は……鈴仙のことを…… コワシテシマイソウダッタ。 「きゃあっ!?」 床に背中を打ち付けて、痛みと驚きの混じった声を上げる鈴仙。 その声に、胸の中の暗い情念がさらに燃え盛っていく。 何が起こっているのかわからずに反射的にもがく体を押さえつけ、両手首をつかんで頭の上で一つにする。 「ひッ…………や、やめてっ!」 怯えたような声が、かえって耳に心地よい。 鈴仙の開いた脚の間に体を入れ、腹を押さえて動けないようにさせた。 じっくりと眺める。 これからこの玩具を、好きなようにできる。 陰惨な喜びが、口元に勝手に笑みを作らせる。 「やめてぇ、お願いだからやめて!正気に戻ってよ!」 いくら叫んでも、ここは倉庫の奥まった場所。助けなど誰も来ないさ。 さて、どうやって楽しもうか。 腹に置いた手を上にやり、鈴仙の上着のボタンをはずして広げさせる。 「こ…………こんなの、あなたは望んでない!こんなことするはずないもの。だから正気に戻って!」 耳元で叫ばれたような気がする。 必死に体をねじって抵抗しているが、力では俺のほうが上だ。 正気、ね。 たしかに、あの赤い瞳を見てから俺はこんな行為に及ぼうとしている。 だがそれは鈴仙、お前が原因だろう。お前のその、赤い瞳が。 ネクタイを首から無理やり取った。 隅に放り投げたその手で、ワイシャツのボタンに指をかける。 「い……やっ…………もう…………やめ……て…………」 涙目で哀願する様は、俺の心の征服欲を満たそうとする。 が、まだ満たされることはない。 ならば、もっとこの兎を堪能すれば、少しはましになるだろうか。 試してみるのも、悪くない。深くものが考えられず、自分の体のしていることが自分のしていることとは別のような気がする。 ボタンを立て続けに半分ほどはずして、鈴仙の反応を見る。 「もう…………お願い…………もどっ……て…………」 さっきまで全力でもがいていたせいで疲れたのか、抵抗は鈍い。 両手を頭の上で押さえられ、上着とワイシャツを半ば脱がされた姿。 スカートは片方の脚が膝を折っているせいでまくれて、太ももまで見えている。 そして、なおもこれ以上はやめて欲しいと懇願する顔。 その、赤い瞳。 鈴仙の瞳が、俺を狂わせていく。 「こんなの……こんなのって…………ひどいよぉ…………」 耳元で聞こえた声に、涙の気配が混じり始めていた。 けれども。 俺はそのまま、のしかかっていた全身を鈴仙に重ねた。 すすり泣く声で、目が覚めた。 赤にかすむ視界の中、左右を見回してその声の主を探す。 すぐ隣にいた。 鈴仙だった。 顔を覆って泣いている。 「俺は…………」 何てことを、してしまったんだ。 欲望のままに、俺は鈴仙に………… どんなに許しを願っても許されないことを、この女の子に。 絶望と自己嫌悪が、鏃となって心を抉る。 「鈴仙…………」 何と言えばいいのか、何と謝ったらいいのか分からず、俺は名を呼ぶことしかできない。 「ごめんなさい…………」 だが、謝ったのは鈴仙の方だった。 「どうして、君が謝るんだよ……」 「ごめんなさい…………ごめんなさいごめんなさい。悪いのは全部私。あなたは何も悪くないから。全部、私の瞳のせい」 「そんなことあるか。俺は確かに鈴仙の赤い目を見た。そのせいでおかしくはなった。でも、欲望を抑えられないで、鈴仙をはけ口にしたのは俺自身だ。俺は、俺を許せない…………」 「違うの。そうじゃないのよ」 鈴仙は泣きながらこっちを見る。 初めて、何かがおかしいことに気づいた。 鈴仙は服をきちんと着ている。ネクタイも歪んでいないし、上着にもしわはない。あれだけ無理やりひどいことをしたのに、長い髪にも白い肌にも乱れや傷はなかった。 俺は、夢を見ていたんだろうか。だとしたら、どんなによかったか。 でも、そんな希望に逃避することも許されない。目の前の鈴仙の涙が、俺の行為を現実のものだと告げている。 なら、何が違うんだ。 「お願い……怒らないで聞いて欲しいの。あなたは私の目をまともに見てしまって狂気に駆られた。衝動が現実化して、それで……その……こんなことに」 「ああ…………全部、俺が悪い。鈴仙、もし何かあったらそのときは責任を……」 「それが、その…………あなたが、ええと、その、色々した相手は私じゃないの」 「はぁ?」 「だから、あなたは私だと思ったみたいだけど、それは幻視。本当は私じゃなくて別の人なのよ。ここにいた」 それで全てが繋がった。なぜ鈴仙が謝るのか。そして彼女が無事なこと。よかった、もう少しで俺は鈴仙に取り返しのつかないことをしてしまうところだった。 イヤ、チョットマテ。 ってことは、これはここにいた誰かを鈴仙と勘違いして襲いかかったのか?それは誰?誰なの? Aてゐ B永琳さん C輝夜様 あああああ!!全員駄目だ!助けてめーりん――――(゚∀゚)――――! Aてゐの場合~「ね~ね~、私赤ちゃんができちゃったみたい。責任とってくれるよね?」←妊娠詐欺で一生強請られる B永琳さんの場合~「私がどれだけ痛い思いをしたか、分からせてあげるわ」←直径が俺の頭くらいある座薬挿入の刑。ひぎぃ! C輝夜様の場合~「死ね」←生身で大気圏突入の刑。灰も残らない OH MY GOD!どのルートでもBADENDは暴走特急。スティーブン・セガールでも止められない沈黙の要塞。アホ毛の神綺様でもヤマザナドゥ様もハード・トゥ・キル! 俺は自分でも蒼白となっていると分かる顔を、泣いたせいでさらに赤くなってしまった瞳の鈴仙に向ける。 もう耐性がついたのか、瞳を見てもなんともない。俺の根性は中古のヒューズか。いっそホムンクルスに殺されてしまえ。 「俺…………誰に不埒なことをしちゃったわけ…………」 鈴仙はあからさまなまでに視線をそらしつつ、指で俺の後ろを指す。 それはあたかも呪いのように。 見たくないと必死に頭の中に住んでいる俺の良心たん(推定7歳。好物はお好み焼き。ラッキーカラーはすみれ色)が叫んでも、脊髄はその絶叫を無視し体ごと振り返る。 そこで、半裸で俺を待ち受けていたものは………… 「彼、ここの薬品倉庫に資材を卸しに来ていたの。……あなたは彼を呼びに来たんでしょ?」 そこにいたのは、満足げな色をメガネの奥の瞳に輝かせてこちらを熱く見つめる香霖堂の店主(♂)だった。 ウホッ!いい店主! 「(もう一回)やらないか……」 (フラグが立ちました。香霖ルートに移行します。もう変更できません。強制です。逃げても無駄です。追いかけます。諦めてください)
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鈴仙のネクタイ 読み:れいせんのねくたい カテゴリー:Set 作品:永夜編 ATK:(+2) DEF:(+2) 【セット】〔自分の手札の 永夜編 のカード1枚を控え室に置く〕 [自動]このセットカードが 永夜編 のパートナーにセットされた場合、自分の控え室の 永夜編 のイベントカード1枚を手札に加えてもよい。この能力は【裏】でも発動する。 既に私の罠に嵌っている事に気が付いていないのかしら? illust:モカモカ 永夜-054 R 収録:ブースターパック「OS:東方混沌符 -永夜編-」 参考
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/890.html
鈴仙11 水鏡 -みずかがみ- Sanity Mirror(新ろだ579) 「お願いします、○○さん」 「……そっか。よしよし、わかった。僕に任せて」 僕はいつもその一言でどんな大変な仕事でも何でも引き受けてしまう、 そしてどんなに無茶をしても全てをやり遂げるようにしている。 そんな僕をみんなは信頼してくれる。僕を頼ってくれる。それがとても嬉しい。 実は仕事を頼んでくるのは、人間だけじゃなく、妖怪もいる。 例え妖怪でも人間である僕を頼ってくれる事実はとても嬉しい。 ……さすがにそれは、大っぴらには言えないんだけど。 「すみません、いつも。 本当にありがとうございます」 「期待してて。 なんとかその通りにやり通してみせるから」 「……はいっ」 期待されると嬉しい。だから期待以上の結果を常に出す。 そしてみんなが喜んでくれるのがまた嬉しい。 そんな感じで僕はここ、幻想郷に来ても頑張っている。 ……けれども、最近は仕事を引き受け過ぎて、僕が当たり前の様にできる限界を既に超えている。 疲労は気力で無理矢理抑え込んで、できるだけみんなに悟らせないようにはしているけど。 みんなの信頼を裏切るわけにはいかない……なんとしてもやり遂げないと。 でも、結局無理が祟って翌日朝、慧音さんの寺子屋の手伝いに行った時に僕は気を失って倒れてしまった。 夕方。竹林の中にある永遠亭に赤みが射す。 教室でいきなり倒れてしまった僕は永遠亭に担ぎ込まれた。 永琳さんの診断では……いや、診断してもらうまでもなく、過労が原因……しばらくは安静の身。 てゐちゃんの話では、鈴仙と慧音さんが血相変えて永琳さんの元に運んだらしい。 全く、大袈裟だな……ただの過労なのに。 今は永遠亭で僕用に宛がわれていて、生活している一室……いや回りくどいな、僕の部屋で安静にしている。 点滴を打っているため、左腕はあまり動かせない。 ……この布団以外で倒れて、この布団で目を覚ましたのは二回目か。 今、隣で鈴仙が林檎の皮を剥いてくれている。手慣れた手つきにしばらく見惚れていた。 僕が意識を失っている間、初めて幻想郷に来た時と同じ様に、鈴仙はずっと僕の隣で看病していてくれたようだ。 永遠亭の雑務には家事も含まれる。そういった雑務は殆どを鈴仙がこなしている。 手が空いているときは永琳さんも、気まぐれで姫様やてゐちゃんが手伝ってくれる事もあるらしいけど。 ……ああ勿論、僕も夕飯の支度をする時間の前に帰って来ていれば、鈴仙を手伝っているよ? まぁ、そう考えると鈴仙が林檎の皮を剥くのが上手なのは当たり前と言えば当たり前か。 そんな事をぼんやりと考えていた。 「……あ」 鈴仙が不意に声をあげる。 「ん?」 「半分くらい剥いちゃってから聞くのもなんだけど……○○ってリンゴの皮ってついてた方が好きな方?」 「あー、そだね。別にそのまま剥いちゃって構わないよ。例え皮が好きだとしても、剥いた皮だけで食べれば良いから」 「あははっ、確かにそうだね。でも、比べたらどっちが好きなの?」 ……なんか今、別の意図も聞かれてるような雰囲気も鈴仙から感じたが、今は気にしない方が利口だろう……多分。 「気分に拠るけど、普段は剥いてある方かな」 「そっか、よかった」 ニコッと微笑む鈴仙。 まぁ、常々思ってたけど可愛いよねこの娘は、色んな意味で。 ……本当に色んな意味で。 …………いけない。 いけない(skmdy)的な雑念に完全に支配される処だった。 別の事を考える事にしよう。 ……って、大事な事を失念していた! 「結局みんなにかなりの迷惑をかけてしまったな。 ……不甲斐ない僕を里のみんなはひょっとしたら怒っているかもしれない」 自嘲気味に僕は呟いた。 けれども、鈴仙はその言葉を聞いても微笑みを崩さずに。 「えっと、さっき里に薬の補充しに行った帰りに慧音さんと話してたんだけどね」 鈴仙は慧音さんから聞いた、人里のみんなの反応やその他諸々を話し始めた。 まず、僕が色々な仕事に追われて疲労が限界に来ている事は鈴仙も慧音さんも、そして永琳さんも知っていた。 そして、里のみんなも薄々気付いていた。 それでも、嬉しそうに大変な仕事を引き受ける僕の顔を見ると何も言えなかった。 いつ倒れてしまうか判らない。そんな状況でみんな冷や冷やしていたという。 結局、最終的に僕は倒れてしまったと知った時は、みんな申し訳なさそうな顔をしていたらしい。 「あとね……」 寺子屋で鈴仙と慧音さんが僕の容態について話をしているとき、里人のひとりが訪ねてきて鈴仙に対して。 「○○さんに頼り切り、また○○さん甘えて頼り過ぎていた私達に落ち度があります。 どうかまずご養生なすってくださいませ、とお伝え戴けませんか」 むしろ自分たち里人が悪いと言わんばかりの様子でそう言っていたと。 「……そんなに気にしてたんだ、僕の体の事、みんな」 鈴仙は林檎の皮を剥き終って、一息。 「うん、もちろん。 私だって物凄く心配してたんだよ? 永遠亭に帰ってくるとき、○○はいかにも平気そうな……。 飄々としたって言うのかな、そんな顔してるけど」 さっきまで微笑んでいた鈴仙の顔が曇る。 「私の能力、知ってるでしょ? 波長を見ればみんなわかってしまうの」 ……そういえばそうだった。 「○○がみんなから色々な小さな仕事を引き受けて」 林檎は食べ易い大きさにする為、まず包丁で真っ二つにされた。 「みんなの役に立つ事ができるのが嬉しい。 それは波長を見るまでもなく、私だってわかるよ。 というか、私だってそうだもの」 置き薬の確認をしに行く時の事かな。 最近の鈴仙は里のみんなからも信頼されていて、よく里に顔を出すようになった。 見た目も可愛いし、性格も優しいので、老若男女問わず結構な人気があるらしい。 阿求ちゃんは幻想郷縁起の修正をしなくちゃいけませんねー、なんて笑いながら言っていたよ。 具体的には「人間友好度:高」、本当の性格や人当たりの良さについての加筆修正、添削と。 まぁ、人間、知らないものに対しては不安や恐怖を感じるものなのだから、認識が変わればまた書くべき事が在るのだろう。 鈴仙は林檎を四分の一の大きさにしながら続ける。 「○○の仕事は、大変だけどみんなのためだから……。 ちょっと無理してまでやってるみたいだけど」 鈴仙の手が止まる。 「一つ一つは小さな仕事。でも積み重なればそれは大きな仕事」 鈴仙は顔を向けて僕の目を見る。 いくら僕が自身の能力のお陰で鈴仙の目を見ても平気だからって、そうじっと見つめられると困るんだけどな。 「そんな大きな仕事を抱えているのに、また小さな仕事を引き受けちゃう」 わかってるんだ、それは。 「そうしたらまたそれが積み重なって、別の大きな仕事になっちゃう」 悪循環になってしまっていたのはちゃんとわかって……居たんだけど。 「○○はみんなを大事にしてる。けど、私の……えーっと、私たちの、大事なものは大事にしてくれてない」 ……え? 鈴仙に言われた事に動揺する僕。 僕は何かを見落としている? ……鈴仙やみんなが大事にしている物を僕は無下に扱っている? じっと僕の目を見る鈴仙。何かを訴えかけているのはわかる。 けどそれが何なのか動揺している僕の頭では浮かんで来ない。 「……はぁ」 鈴仙は呆れた様に溜息を吐いて、林檎に目を戻した。 「リンゴ、四分の一が良い? それとももう一つ割る?」 「えっと……もう一つお願い」 「うん」 ……鈴仙の感じからすると僕はやはり大事な事はまだ判って居ないらしい。 「はい、できたよ」 鈴仙は綺麗に八つ林檎を切り分けて、白い磁器の皿に放射状に並べた。 「綺麗に並べてみたよ」 クスクス笑いながら嬉しそうに切り分けた林檎の輪を僕に見せる。 「綺麗に並んでるから形を崩すのが勿体無いかも」 「じゃ、私が崩しちゃおうかな」 ひょい、とひとつ林檎を摘んで僕の口元に持ってくる。 「はい」 ニコニコと笑顔で僕の顔を見ている鈴仙。 僕が手で受け取ろうとすると、手を引っ込める。 ……動物にやる意地悪とかじゃないんだから、素直に頂戴よ。 僕が手を下ろすと鈴仙は相変わらず楽しそうな笑顔で僕の口元に林檎を持ってくる。 意図を図りかねていると……いや、鈴仙がやろうとしてる事はなんとなく察しが付くけど。 「はい、あーん」 ……恥ずかしいって! もし窓の外に文ちゃんが居たらどうする気だろう鈴仙は。 「そしたら幻朧月睨(ルナティックレッドアイズ)で撃退しますよー?」 考えてる事を読まないでください。さとりさんじゃないんだから。 「そんなに窓の外や縁側の方を気にしてたら、波長読まなくてもわかるわよ。 あの文が覗いてたらどうしようとか考えてたんでしょ?」 からかう鈴仙を無視して窓の外の確認をする。 縁側の確認をする。取り敢えずは居ない。 「……よしよし、烏天狗達の姿は見えない、と」 ……と言っても動けないから見える範囲しかできないけど。 「……むー」 う。 流石に今のは意地悪過ぎたか。 恨めしそうな目で見る鈴仙。 「今の『よしよし』で思ったんだけどさ。 ○○って、どんな人に何を言われても……。 『よしよし』の一言で全部受け入れたり、引き受けちゃうんだよね」 今思うと確かに悪い癖かもしれない。 「さすがにちょっとお人好し過ぎるよ?」 ちょっと唇を尖らせて、拗ねたように言う鈴仙。 ちょっと可愛いかも。 「うん、それでも鈴仙の言うことも、また『よしよし』なんだよね。 ああ、けど鈴仙のときは……別の意味の『よしよし』もあるかなー」 僕は鈴仙の目をまっすぐ見て、微笑んだ。 鈴仙の顔がちょっと赤くなる。 そして呆れたような感心した様な感じで微笑みながら言った。 「……もう。 そんな事言われたら何も言えなくなっちゃうじゃない」 鈴仙のさっきから言いたい事はわかってはいる。 こんなだから体を壊してみんなを心配させてしまったのだろう。 こんなだから色々な事件に巻き込まれてしまうのだろう。 誰かの言うことを受け入れずに跳ね除ける。 またそれも一つの考え方ではある……したくはないけど。 柔軟な考え方をするには色々な人の言葉や考えを聞く。 自分の置かれている状況を常に把握しておく。 そしてそれを材料に自分でもしっかり考える事こそが重要なことなのだ。 自分を過信しない。 謂わば「自己管理」だ。 僕はそれが結局できていなかった、それだけだ。 ……そのたったひとつの理由が致命的だったんだけど。 「もう、無理はしないでね? 気を失ってる○○を見たとき私、血の気が引いたの。 あと……仕事が手に余るようなら私は喜んで手伝うよ?」 いや、もう理由は一つあったね……もっと大事な事を失念していた。 「私、○○と一緒ならどんな事でも頑張るから!」 そっか。鈴仙にとってそしてみんなにとっても大事なものって……そういう事か。 <今は頼る相手が居るんだから、ひとりで抱え込まず、誰かに相談するといいよ> これは随分前に僕が鈴仙に言った言葉だ。 「今は頼る相手が居るんだから、ひとりで抱え込まず、誰かに相談するといいよ、○○?」 その時のお返しとばかりにちょっと意地悪く、でも嬉しそうに笑う鈴仙。 <うん、そだね……ありがとう> 「そうだね……ありがとう」 「うん!」 前と同じ遣り取り。立場は逆だけど。 <あの、早速で悪いんだけど……ちょっと、いいかな> 「えーっと。早速で済まないんだけどさ。一つ…いや二つ仕事、頼まれてくれるかな」 「うん、どんな仕事?」 鈴仙は興味深々で僕の仕事内容を聞いてくれる。 こんな楽しそうな鈴仙、そうしょっちゅう見られるものじゃないな。 「一つ目はこの包みを依頼人に届けて欲しいんだ。 場所は地図で印を付けとくから」 「了解であります! もうひとつの任務は何でしょうか隊長!」 脱走兵だった鈴仙なのにこんなノリができるのも、あの時、僕が相談に乗ってあげたからなのかな。 「妖怪の山のにとりちゃんに注文していた品が今日、完成するらしくてね」 「うん、にとりに何頼んだの?」 「香霖堂の眠れる式神を起こす装置、ってとこかな。 まぁ、どういうものかはまた後で説明……」 どごーん! 「げほっげほっげほっ!」 砂煙の中から咳き込む声が……ひょっとしてこの声は。 「けほっけほっ」 「けほっけほっ」 砂埃のせいで同時に咳き込む僕と鈴仙。 「ちょっと、何! 妹紅の襲撃!?」 あ、姫様が出てきた。 「げほっ、げほっ、○○さん、長らくお待たせしました! 注文の品がやっと完成したでありますよ!」 砂煙が晴れると、さっきの鈴仙みたいなノリの、敬礼しているにとりちゃんがそこにいた。 「○○さんが倒れたと文様から聞きまして。 御無理をさせないよう配達に来ましたっ!」 「けほっ、だったら砂煙上がらない着地をして欲しいんだけどなぁ」 やっぱり超妖怪弾頭の二つ名は伊達じゃないな……色んな意味で。 「あら、貴女はこの間の……」 「輝夜さんお久しぶりです! にとり工務店改め、にとり電気店の配達です!」 「さっき○○が何か頼んでたとか聞いたけどそれ?」 姫様の発した言葉に鈴仙がビクッっと反応する。 「あ、あの……ひ、姫様、いつから聞いていたんです?」 鈴仙、そんな怯えなくても。いや、気持ちはわかるけどさ。 「半分くらい剥いちゃって――ってところからかしら。 鈴仙、あなた意外と大胆よね~。 あ~んって私も○○にしてみたいわぁ~」 なんか幽々子さんや紫さんを連想する様な雰囲気で鈴仙をいじる姫様。 ていうかそれって、一番最初の会話……。 ……と言う事はずっとニヤニヤしながら今まで様子伺ってたっぽいね。 さっき妹紅さんの襲撃か! とか勘違いしたって事は……隣の部屋で聞き耳でも立ててたのかな。 ……まだ迂闊なことしてなくてよかった。 「いや、あのですね姫様、あれは、その……」 「私や永琳を差し置いて。 自分だけ幸せになりそうなウサギさんは~……悔しいからこうよっ!」 「ひゃっ!? あははははははははは! 姫様あはははは! やめてくだあははははは!」 あー、出たよ姫様お得意のくすぐりの刑。 「あー、えーと。止めた方がいいですかね? あれ」 呆然とくんずほぐれつしている鈴仙と姫様を見て困ったように、にとりちゃんは言った。 「気にしないで、うちではよくある光景だから」 半ば諦めが入ってる僕。 「ちょっと、○○っ、たすけてっ、あははははは!」 僕に助けを求める鈴仙。 「幸せそうで本気で妬ましいのよ! こちょこちょこちょこちょ!」 ……はぁ、仕方ない。 「あー、姫様。 一応僕、病人なんですが」 これで意図は察してくれるだろう。 「……あー、そういえばそうだったわね。 イナバいぢりに夢中になっててうっかり忘れてたわ」 手を止める姫様。 「ひゅー……ひゅー……。 助かったー……ありがと○○ー……。 ……やっぱり本当に大好きー……」 息も切れ切れの鈴仙……。 ……って今なんか物凄い爆弾を投下した音が聞こえたんだが。 「ちょっと、鈴仙! どさくさに紛れて何めっちゃ恥ずかしい告白してんのあんたはっ!」 便乗して姫様をからかう側に加勢しようか。 「……うん。僕も鈴仙の事、大好きだよ」 まぁ……想いの告白、と言うにはちょっと軽い感じがするけど。 今の僕と鈴仙にとっては、既にこんなもんだ。 当たり前の事、だから軽い感じでいいんだ。 でも多分、僕は今ちょっと顔赤い。 間違いない。 風邪かな……いや、とぼけても仕方ない。 「うー……姫様にやっと一矢報いましたよー……」 えーと、まぁ、何だ。 「…………」 ぽかーんとした表情で固まってる姫様。 徐々に表情が状況を理解した感じに変わって行く。 がくり。 「……やっぱりイナバに先越されたと言うのは……。 この蓬莱山輝夜、本当に一生の不覚だわ……」 あ、くずおれた。 「○○ー……えへへぇ」 やっと復活した鈴仙が僕の「左腕」にしがみ付く……。 ……って当たってる! 大きくてやわらかくて気持ちいいのが! いやそれよりもそこ、点滴刺さってるんですけど! 「……あ、ごめん。痛かった?」 その事にすぐ気付く辺りは鈴仙は流石かな……。 「いや、刺さってる部分に直接触れては居ないから大丈夫だけど」 「じゃ、こっちからなら大丈夫だよね?」 点滴的には大丈夫だけど別の何かが大丈夫じゃないです。 ……って何か言う前にしがみ付かれてる! ……やーらけー。 「やっぱり胸なのね? 鈴仙のその大きな胸なのね!」 くずおれた体勢のまま。 顔だけをギュンと物凄い勢いでこちらに向けて叫ぶ姫様。 ……いや確かに大きめの胸は好きだけどさ。 ていうか、胸なら姫様もそこまで負けてはいないと思うんですが。 そもそも永琳さんや鈴仙ほどじゃないにしろ、姫様もそれなりに結構あった様な。 ……いや、ごめんなさい、見ようとして見たんじゃないんですよ。 あれは事故だったんですよ。 「……いや、真面目に答えるとしたら。 今まで一緒に過ごした時間の長さだと思います」 幻想郷に来て初めに逢ったのは鈴仙。 幻想郷を知る為に色々な所に出掛けた時も横に鈴仙が居た。 仕事を始めるようになってからは、一緒に過ごす時間は減ってしまったけれど。 僕たちの家……永遠亭に帰ってきたときはいつも鈴仙が出迎えてくれていた。 特別やることがない時に永遠亭に居るときだってそう。 いつの間にか僕は鈴仙と一緒に居るのが当たり前になっていたんだ。 「点滴で思い出した。僕、一応過労で倒れてる身だからさ、その鈴仙……」 「うん……ごめんね、無理させちゃって。 それじゃ、○○のお使い行ってくるね」 荷物を持って出かけようとする鈴仙だが……。 「あ、忘れてた」 皿の上にある林檎の一欠けを僕の口元に持ってきた。 ……恥ずかしいけど、まぁ、いいか。 「はい、あーん」 ぱくっ。 もぐもぐ……ごくん。 「あれ、素直に食べちゃった」 「今更でしょ、もう」 「ちぇ、恥ずかしがる○○が可愛かったのにー……」 それが狙いだったのか。 なるほど。 鈴仙は林檎の一欠けを一つ摘んで。 もぐもぐ。 ごくん。 「ん、おいしー。 さて……と、ホントにそろそろ○○のお使い行ってくるね。 あ、姫様とにとりちゃんと一緒に残ってるリンゴちゃんと食べてね」 そして頼んだ荷物を持って鈴仙は部屋を後にした。 「あのー、私、何をすればいいんでしょう……」 そういえばずっと、ひとりおいてけぼりのにとりちゃん。 「ああ、ごめん。とりあえずそれの使い方を聞こうかな」 「はいっ。あ、でも今○○さんを独占しちゃうと鈴仙さんが怒ったりしませんか?」 「大丈夫、もうそんな小さな事で怒る娘じゃないから、彼女は」 「『よしよし』、ですか。 お互い物凄く信頼してるんですね」 「そういうこと」 「じゃ、発電機と蓄電機の使い方や調整とかの説明と相談ですねー」 病床でも話くらいは聞けるので、にとりちゃんの説明をのんびり聞く事にした。 姫様はツッコミ待ちなのか、さっきと同じ体勢のままじっとしてる。 ……しばらくスルーしよう。 鈴仙にいぢわるしたオシオキってことで。 ----- 「○○も酷いなー……私もお師匠様も結局出番なかったし。 姫様もくずおれっ放しだし。結局鈴仙しか目に入ってないねあれは」 「ちょっとてゐー、今ウドンゲに頼めないから手伝ってくれるー!」 「はいはい、今行きますよっと」 END /*------------------------------------------------------------------------------------------------------ あとがき・おまけ☆かたりべえーりんのまめちしき 皆さんこんにちは、やごころえーりん☆永遠の17歳でーす! ……いえ、自分でも無理があるのはわかっているのよ。 でも心だけでも17歳で居たいわ。 これからかなり説明長い説明が続くのだけど、そこはちょっと我慢して。 読んでて気分が悪くなったら私がたっぷり愛情込めて看病してあげるから、こっちに来なさい。 それじゃ、始めるわね。 「水鏡(みずかがみ)」と言う言葉があります。 「みかがみ・すいきょう」とも読めますね。 まぁ、それらはどれでもいいんですけど。 大事なのはその文字が意味する内容です。 中国に……美鈴さんは関係ありませんよ? 中国の歴史書・もしくはそれを元にした創作小説、「三国志演義」には……。 水鏡(すいきょう)先生と言う方がいらっしゃいました。 その水鏡先生の口癖が「よしよし」だったそうです。 それでその事を奥さんに咎められたらしいのですが……。 「お前の言う事もまた『よしよし』」と、どんな意見でも真摯に受け止めて大事にすると言う彼の考え方は賢人らしいと私は思います。 作者はウドンゲと○○のやり取りの中で、似たような事をさせてみたかったらしいのですが。 果たして上手く行ったのかしら。 さて……彼の能力についての補足説明をしますね。 彼、○○の能力は東方風に言えばとりあえずば「正気に戻す程度の能力」と言えます。 この、タイトルにある「水鏡」とは「模範的な行動」の例えとして使われる事がある言葉です。 彼は、他人のずれてしまった道筋を正す能力に長けていたんですね。 能力自体は別に人妖などに限った話ではないのですが。 ずれたものを正す……それは「指導力」と言う形でも表に出ます。 彼の指導を受けた人妖は、皆、どういう経緯であれ結果的に正しい道を歩んで行きました。 結局最後まで彼自身はその事は知りませんでしたけどね。 彼が寺子屋の手伝いを、里の守り人である上白沢慧音さんに依頼されたのも。 皆が正しき道を真っ直ぐに進んで行ける様に慧音さんが願ったからなのでしょう。 彼はその「正気に戻す程度の能力」の影響で、正反対の能力を持っている鈴仙さんの狂気の瞳の効果を中和してしまいます。 だから、彼は鈴仙さんの目を直視しても何の影響も無く、正気を保つ事ができました。 彼女は過去を悩み、苦しんでいました。 そんな彼女に以前彼はちょっとした相談に乗ってあげました。 悩みを吐き出した事で気が楽になったのか。 それとも彼が何か良い方法を教えたのか。 あるいは彼が持つ能力が勝手に作用した結果なのかはわかりません。 でも、彼女は……鈴仙さんは間違いなく。 以前の様に悩み、苦しみ続ける様な事は殆どなくなりました。 ふと、心に思う事があったりはする様ですが……。 彼が傍にいて支えてくれている事で自分を責めてばかりの鈴仙さんは過去のものとなりました。 私の元に来て、気軽に相談しに来るようにもなりましたしね。 今回のお話は、そんな彼女を導いてくれた彼に、同じ様な形で彼女が恩返しする……そういう趣旨のお話でした。 そうそう、作中の「よしよし」が示す意味を推理してみると面白いかもしれませんよ? 新ろだ752 「鈴仙。」 突然○○に名前を呼ばれた。 彼は非常に寡黙な男性だ。文字通り必要最低限の事しか話さない。 そのせいで師匠からは「機械みたい」と評され、姫からは「彼と居ると空気が重くなる」と言われ、 てゐからは「悪戯しても反応が無いからつまらない」と言われるほど無口だった。 実際、私も彼と仕事をしている時しか話した事は無い。 その内容も「~を運び終わった。」とか「次は何をすれば良い?」といった、仕事に関するものだけだ。 だが、彼は寡黙だが心優しい人間だと言う事を私は知っている。 相手が妖怪だろうと何だろうと怪我人の治療を最優先し、怪我人を守る為なら自身を犠牲にできる程の人間だ。 私も彼に助けられた事がある。薬草集めをしていてに妖怪に襲われた時、彼は真っ先に妖怪に攻撃を加え私から興味を逸らした。 大怪我を負った彼が妖怪から逃げ切って永遠亭に着いた時にも、自分よりもまず私の心配をしてくれた。 そんな、言葉よりも行動で示すタイプの人間だ。 私は彼に次第に惹かれていった。だが彼は相変わらず無口で、話しかけようとしても早々に自分の部屋に戻ってしまう。 仕事の時に話しかけても一切返事はしない。いつも通り、仕事に関する事だけ話しかけてくる。 そんな彼が仕事以外で話しかけてきた。どうしたのか尋ねると、 「後で縁側に来てくれないか?」 彼が自分から話しかけ、私を呼び出した。意外すぎて呆気にとられてしまった。 ふと彼の手を見ると酒瓶があった。今日は何かあるのだろうか。 仕事を終わらせて彼に言われた通り、縁側へ出た。 彼は縁側に腰かけて月を眺めていた。私もつられて月を見る。 成程、今日は中秋の名月だったか。夜空に月が煌々と輝いている。 「鈴仙。」 彼が手招きをしている。私は彼の方へ歩き出し、隣に座った。 「今日は中秋の名月だ。だから酒でも飲まないか?」 単刀直入かつ単純明快な一言。私は○○の意外な発言や動作をもう少し見たくなって了承した。 「月が綺麗だな。」 唐突に彼が話す。 「月を見ているとあの日を思い出す。」 私が彼と出会った日も今日と同じ形の月だった。幻想郷に迷い込み、妖怪に襲われていたところを私が助けたのだ。 それ以来、彼は何かと私の仕事を手伝ったりしてくれた。 「あの日は本当にありがとう。鈴仙のおかげで助かった。非常に感謝している。」 彼と一緒に仕事をしているうちに、彼の声色で感情を読み取る技術が身に付いたようだ。 いつもの無感情な声ではなく感謝の念が籠った声だった。 「これを。」 彼が何かを差し出す。何かと思い見ると二つ折りになった紙だ。どうやら手紙らしい。 私はその紙を開いた。何か書いてあるので読んでみる。 『私、○○は鈴仙・優曇華院・イナバが好きだ。』 酒を噴きそうになった。文章の一行目から告白である。 彼の方を見たが、月を眺めているだけだった。だが耳がとても紅潮している。照れているようだ。 陰では「感情が無いのかも」だの、「もしかすると同性愛者なのかも」だのと言われていたが、やはり彼も普通の人間だ。 そんな彼を見て少し微笑ましくなった。 『私は貴女にとても感謝している。貴女が居なければ私はこの月を眺めていなかっただろう。 何時からか、この感謝の念が貴女に対する恋慕の情に変わっていた。貴女と共に居るだけで心が落ち着くようになっていた。 だが私は、面と向かって直接言うどころか、このような手段でしか想いを伝えられない臆病者だ。 唐突で馬鹿げた事を書いているは分かっている。もしよければ、私と付き合って貰えないだろうか。 それと、あの時の礼を改めて書きたい。本当にありがとう。』 文章はここで終わっている。 私は彼にここで少し待ってて欲しいと伝え、部屋に戻った。 しばらくして、彼の所へ戻った。そして先程貰った手紙を返す。 そして彼に、中を開いて読むように言った。 私は部屋に戻った時に、手紙の下の方の空いているスペースに返事を書いていたのだ。返事はもちろんOK。 そこに気付いた彼は嬉しそうな表情になっていた。 私は彼の肩にもたれかかり、彼は私の肩を抱いて二人で月を眺めた。 あの日と同じように煌々と輝く月を、その眼に焼き付けるように。 ――――――――――――――――――――――<あとがきっぽいもの>―――――――――――――――――――――― 月を眺めてたらAMSからうどんげへの愛が逆流してきたので書き上げたらなんかよく解らん物になってたでござるの巻 寝不足万歳 ――――――――――――――――――――――<あとがきっぽいもの>―――――――――――――――――――――― 新ろだ800 「鈴仙……」 秋の寒空の下、公園のベンチに座り二度と会えないであろう人の名前を呟く。 「……寂しいな」 自分から帰りたいと望んだわけではない。一ヶ月、幻想郷で過ごしてみてから決めろと永遠亭の皆からも言われた。 その時、もしまだ帰りたいようならばしかるべき手段を取ってくれると、それまでは永遠亭で過ごせばいいと…… 「もう二度と戻れないのかな」 気がついたら元の世界へ戻ってきていた、幻想郷へ迷い込んだ当初帰りたいと思っていたこの世界はいざ帰ってくると、とても虚しく感じた。 「こうしていても仕方ない、帰るとするか」 何かに引寄せられるようにこの公園まで来て約一時間、 何かが起こることを期待していなかったわけでもないが何事も起こらず、 日が落ちてきたことも相まって冷えてきたのでそろそろ帰ろうと思いベンチを後にした。 「○○、○○だよね」 公園の出口へ向かって歩いているときかけられた声に咄嗟に反応することが出来なかった。それは二度と聞くことが出来ない筈の声だったから。 「鈴仙?本当に……本当に君なんだね」 確かに聞こえた声は彼女の声、服装はこちらの世界でも違和感のない服装をしているが紅い瞳は確かに彼女であることを示している。 「無事に会えたみたいだね」 「本当にありがとうございました、大事なデートなのに……」 彼は……そう、確か彼もこちらの世界から向こうに迷い込み住み着いた人間だった筈。 「それじゃあそろそろ行くとするよ。僕達が出来るのはここまで、後は鈴仙さんと○○さん次第だからね」 そういうと彼等は突如現れた隙間に入り、いなくなってしまった。隙間妖怪、八雲紫にでも頼んでおいたのだろう。 「でもどうして外界に来ることができたんだ?」 「それはね……」 鈴仙から聞いた話を要約すると八雲紫が寝ぼけて俺を間違って外の世界に送ってしまったらしい。 その後、姫様と永琳さんが八雲紫のところへ掛け合い、丁度企画していた外界ツアーに便乗して、 ツアーと同条件の神無月の間だけという条件で鈴仙をこちらへ送り出してくれた。 そしてこちらの地理に通じていない鈴仙を心配して先ほどの彼が道案内を買って出てくれたという、 自分の彼女とのデートがあるのにもかかわらず。 「……というわけなの」 「あの二人には感謝してもしきれないな」 隙間があった方向を向きながら、心の中でありがとうと、また今度会ったときに直接御礼をしなければ。 「それでね、無理を行ってここに来たのはどうしても確認しなければならないことがあるからなの」 「そういえば、彼も後は俺達次第とか何とか言っていたけ……ど」 振り向いた瞬間、口を塞がれた。目の前に見えるのは鈴仙の顔、ということは…… 「○○、いえ○○さん。」 「はい」 いろいろ聞きたいことはあったけど、鈴仙の瞳がとても真剣だった事もさながら、 初めての経験に混乱していたこともあり返事をすることしか出来なかった。 その表情は何の感情も出すまいと仮面をかぶっているようだった。 「私、鈴仙・優曇華院・イナバは○○さんをお慕い申しております」 「俺「最後まで聞いて、お願い」」 そう俺の言葉を遮った彼女の顔は先ほどと同じ何の感情も宿っていない様に見えた、 不安という感情を殺すことは出来ず、元々紅い眼を赤くして涙を湛えている点を除けばだが。 「私は、神無月の最後の日、外界ツアーに参加している人たちが帰る日に幻想郷に帰らなければなりません。 もし○○さんが、こちらの、世界、に残り、たいので、あれ、ば……」 最後のほうは泣き声で言葉になっていなかった。ただしなにを伝えたいのかは分かった、 そしてそれが俺のことを思ってということも、だからこそ、それ以上は言わせない、言わせてはいけないと思った。 「もういい、わかった」 「えっ……」 「俺は、鈴仙、君が好きだ。こちらの世界に帰ってきても君のことを考えなかった日はない」 「私、こわかった○○に拒絶されたらどうしよう、こっちに残るって言われたらどうしようって」 「鈴仙……」 「それでも、これが最後の機会だから、もう辛い事から逃げるのはやめようって」 彼女の目からはとめどなく涙が溢れ出てくる、もう限界だった。彼女を抱き寄せてもう一度気持ちを伝える。 「もう一度言う鈴仙、君が大好きだ、これが俺の気持ちだよ」 これ以上彼女が泣いているのを見るのが辛かった、それも俺のためにここまで神経をすり減らして、自分の想いを偽ろうとして。 うん、もうこちらの世界への未練はない。この少女と一緒に歩んでいこう。 「鈴仙、一緒に幻想郷へ、いや永遠亭へ帰ろう」 Megalith 2011/01/01 今年は兎年。つまり、私たち兎角同盟の年。 今年こそは兎鍋撲滅、そして兎権を人権よりも高く。 というか私、鈴仙・優曇華院・イナバの権力を高く! なんて、そんな抱負をより強くした所で。 「○○ー?」 と、私を慕ってくれるその子がいる確信を持って襖を開けると。 「……寝てる」 しかもコタツで。 昨日は「年越しまで起きてる」なんて言って姫様や私と一緒に起きていた。 でも、○○は年を越す前に寝てしまって、部屋に連れていこうとしたけど、姫様に自分がやるから良いと言われてしまって。 本来なら、それを断ってでも自分で運ぶべきだったのかもしれないけど、私も年を越した瞬間に眠くなって、あとは姫様に任せて部屋に戻ってしまったのだ。 その姫様がここにいないって言う事は、この子を放って眠りに行っちゃったらしかった。 姫様ひどいなぁ、なんて思いながら近付いて寝顔を眺める。 「このままだと寝正月になっちゃうよー?」 と言いながら、可愛らしい頬をつんつん突っつく。 起きない。身動ぎもしない。 「…………」 愛らしい頬をむにむにしてみるけど起きない。 師匠に変な薬でも飲まされちゃったのかな、なんて思ってしまうくらい、深く眠っているみたいだった。 「…………」 波長と位相を見て、みんなの位置を探る。 ……大丈夫、近くにいない。 でも、やっぱり不安で、周りをキョロキョロと探ってしまう。 本当に誰もいないのを確認した所で、○○の寝顔を眺める。 深い寝息が聞こえる。 逆に、私の心臓の間隔は浅くなる。 少しずつ、顔を近づける。 起きている時にこんな事しちゃったら、きっと○○が困っちゃうから。 だから、寝ている時に―― 気付いたらもう視界は○○で一杯で。 それでも止まらないまま、私は。 「ん……ちゅっ……」 ○○の唇を奪ってしまった。それはきっと一大事。 唇を押し付けるだけじゃ物足りなくて。 起こさないように、静かに○○の唇を啄ばんだり、私の唇で挟んだり、舐めたりする。 「……っはぁ」 これ以上やると流石に起こしちゃいそうだったから、○○から離れる。 少しだけ頭がボーっとする。自分の顔が赤いのも分かる。 ○○の顔が見れない。 私の中で火がまだ燻っているようで、○○を見たらきっと何をするか分からない。 申し訳ないけど、寝ている内に部屋を出て行ってしまおう。 また、私が落ち着いたら見に行こう。その時にはきっとこの子も起きているはずだ。 そう思って、立ち上がろうとした時だった。 「う、うどんげ……お姉ちゃん……?」 「……ぇ」 声が聞こえて、そちらを見てみれば。 ○○が眼を開けて、私を見ていた。 あれ、だって、でも、さっきまで寝てて、あぁでもやっぱりさっきのは気付かれてたんじゃ、って今はそんな事考えてる場合じゃなくて。 何か、なにか言わないと。 「ち、ちちちちちが、違うから! 今のはっ、そのっ、えっと、事故! そう事故なの!」 「……?」 「あのっ、○○が寝てたからちょっと寝顔見てたら可愛いな、なんて思って、もっとよく見たいなって思ってたら気付いてたら顔が近くなってそれで近付きすぎちゃったっていう事故なの!」 自分でもひどい言い訳だと思う。でもそれでも何か言っておかないとやってられなかった。 「な、なにが……?」 ○○は分かっていないようだった。 嬉しいような、悲しいような。 「ぁ、い、今のなし! な、何でもないっ。何でもないからっ」 「あ、うん……」 こたつに脚を入れて腰を落ち着けて、何度も深呼吸する。 今度は別の意味で顔が赤いのが分かる。きっと今の私は自分の眼と同じくらい顔が赤い。 新年早々、私は何をやってるんだろう。 ○○は相変わらず分かってくれてないらしく、私を心配そうに見つめながら、こたつのみかんに手を伸ばした。 そして、止めた。 「あ、そうだ。うどんげお姉ちゃん」 呼ばれて、私は赤いままの顔を○○に向ける。 そこにあったのは。 「あけましておめでとう!」 眩しい笑顔だった。 私は、この子の素直な所も好き。気を使ってくれる優しい所も好き。甘えてくれる所も好き。 でも、やっぱりこの笑顔が、一番好き。 それはきっと、私だけじゃなくて、姫様も、師匠も、てゐも同じ。 そんな○○の笑顔を、年が明けてから一番最初に見れた私は、とっても幸せな兎なのかもしれない。 でも、それでも、私は○○が大好きな事には変わらない。 「……うん、あけましておめでとう」 そう言いながら、こたつを○○と同じ位置に入り直しながら、○○を抱き上げて私の膝の上に乗せる。 ○○は困った顔をしていたけど、すぐに嬉しそうに私に身体を預けてくれる。 やっぱり良い子。こんな良い子の寝込みに、キスをしていた自分がとても恥ずかしい。 ごめんね、と心の中で謝りながら、私も○○を抱きしめて身体を預ける。 ――今年は、○○とずっと一緒に居たいな。 なんて、この部屋にくる前の抱負がいとも簡単に切り替わりながら。 姫様達がやってくるまでの間、○○と二人きりで、このゆったりとした時間を過ごしたのだった。 Megalith 2011/07/21 そろそろ日も沈もうかという夕暮れ時、高台にある公園のベンチに二人並んで座って、赤く染まる市街地をぼんやり見下ろしていた。 ブレザーを着たウサ耳の少女が、俺に綺麗な赤い目を向けきた。じーっと見つめていると吸い込まれそうだ。 彼女が黙って見つめてくるのに耐えきれずに俺は尋ねた。 「鈴仙……その、どうしたの?」 彼女は黙って俺の手を握ると、そのままちょっとだけ肩を寄せてきた。 鈴仙の重みと暖かさが押しつけられる。彼女に右手を押さえられたせいで抱き寄せることもできずに、俺はじっとしているしかなかった。 ちらりと横目で見ると、鈴仙の大きな胸がブレザーの布地を窮屈そうに押し上げている。胸の谷間に赤いネクタイが隠れて……挟まって見えるぐらい大きい。 そんなことを考えているとも知らずに、鈴仙は俺に身体を預けたままつぶやいた。 「夕日、綺麗だね……」 「うん……」 彼女の丸いほっぺたは夕焼けに照らされて茜に染まり、 (ぷにぷにして……柔らかそうだな) そんなことを考えてしまう。 鈴仙がこっちを見ると、にっこりほほえんで、 (あっ……指、絡めて……) 手をぎゅっと握られた。心臓を直接鈴仙の細い指で抱きしめられたみたいで、どくんと鼓動が跳ね上がる。 俺はこんなにドキドキしてるのに、鈴仙は澄んだ顔で俺を見ているのが何となく悲しい。ひとりだけ勝手に興奮しちゃってるみたいで…… 「こうして、ふたりでいられるのが幸せだね……」 「そうだね……」 鈴仙に見られるのが恥ずかしくて、半分沈んだ夕日に目を向けた。町がきらきら、まぶしい。雲は真っ赤に染まって、烏の影が北へと動いていく。 「でも、なんだか寂しいね……この景色も、あと10分ほどで消えちゃう……」 当たり前のことだけど、妙にセンチな気分で、鈴仙の手をそっと握り返す。 鈴仙は俺の手に両手を重ねると、首を振った。 「ううん。あなたがいるから、寂しくないよ……」 ……それ、反則…… 鈴仙は俺の腕をぎゅっと抱きしめて……おおきな胸、当たってる……俺の耳元に口を寄せて囁いた。 「ずっと、一緒にいるから、ね」 「ああ……鈴仙……」 顔を向けると鈴仙は目をつぶって、赤い唇をこちらに向けていた。 ごくりと生唾を飲み込んで、本当に俺なんかでいいんだろうかとちょっとだけ考え……悩み……意を決して優しく重ねあわせる……ふにふにしてて、暖かい…… しばらく唇の柔らかさを味わったあと、名残惜しそうに離れると鈴仙は目を開けてとろんとした表情で俺を見つめた。 赤い瞳に再び魅入られ、俺は鈴仙を抱き寄せて、 「もう一回、いいかな……」 「うん……」 もう一度くちづけを交わした。 いちゃいちゃする前の話だよね、これ Megalith 2012/07/24 仕事がなかなか終わらずイライラしていた○○の傍にいる鈴仙。 「ねぇー○○、なにしてるの?」 「……仕事だ」 「ふーん、また仕事してるんだ」 「……ああ」 「いつ終わる?」 「……さぁな」 「少し休憩しない?」 「……い・や・だ」 「なんでぇ?」 「あと数時間で仕上げなきゃいけないからだ」 「休憩しないと体に悪いよ?」 「……わかったからあっち行ってろ」 「ぶぅー○○がかまってくれない」 「………」 「何か手伝おうか?」 「……いい」 「飲み物は?」 「……いい」 「じゃあ何か作ってく「ああぁもう!少し黙れ!」」 「えっ…」 「少し仕事に集中したい」 「…うっ…うん」 「だからこの部屋から出ていけ!」 「……分か…った」 バタン 「少しきつめに言い過ぎたかな」 「でも、あと少しだし気合い入れていくかな」 「しかしなんであんなにしつこかったんだろうな?」 「いつもは空気を読んでくれるのにな」 ドアの向こう側 「…はぁ……○○、怒っちゃったなぁ」 「今日は私の誕生日なんだけどな…」 「毎年毎年いくら仕事が忙しくてもきちんとお祝いしてくれて…」 「笑顔で『おめでとう』って言ってくれて、そのあと一緒に食事して…」 「何か嫌なことでもあったのかな」 「でもいきなりに私に『出ていけ!』はないよね」 「少し凹んじゃうよ」 「…そういえば、私の誕生日を決めてくれたの○○だったなぁ…」 「てゐが私に誕生日がないってことをいじられていた時に○○が来て」 『じゃあ俺が決めてやるよ』 「って言ってくれて、三日くらいして決まったんだよね」 「その時の私は『こんな日を決めて意味があるのか』なーんて思っちゃったけど」 「誕生日が来るたびに、誠心誠意手作りのプレゼントを私に作ってくれるうちに惚れちゃったんだよね」 「……はぁ」 「○○は私に愛想尽きちゃったのかな」 「あ…れ…」 「ひっぐ、ぐすっ」 「なんで…涙が…で…でるんだろう」 「も…もしかして○○は私の…こ…と嫌い…に…なっちゃったの…か…な…」 「そんなの…や…だよ」 「兎は寂しいと…死んじゃうんだよ…」 2時間くらいたった後のドアの向こう側じゃない方 「ふぅ、終わったー」 「さてと、三連休も終わりk…ん?」 「あっ!!今日って鈴仙の誕生日ジャマイカ!」 「あぁー成る程、だから鈴仙はあんなにかまってさんオーラ全開だったのか…」 「思い出してみれば随分酷いこと言っちまったな」 「もうちょっとしてからこれを渡そうと思ってたんだけど、あんなこと言ったんだしな」 「謝ってくっかな」 そのあとすぐのドアの向こう側 「すぅ…んぅ…」 「おっと、寝ちゃったのか」 「……だよ」 「?」 「…まってよぉ○○ぅ、いっちゃヤダよう」 「ん、夢か?」 「私を一人にしないで○○ぅ、ずっと一緒にいてよ○○ぅ」 「私にはあなたが必要だよ」 「なんでも…なんでもするから、私を捨てないで…私に別れるなんて言わないでよ…」 「…おねがいだよ…」 彼女の瞼の端には涙が玉の様に溜まっていた。 「…鈴仙」 そっと手を握ってやる、そして耳のそばで 「ごめん、絶対に離さないからな」 と囁く。 「…うん!、って本物の○○?」 「おはよ鈴仙、俺がいつ偽物になったよ」 「うぅ…なんでもないよ」 「その、さっきはごめんな鈴仙。俺も少し言葉に気を付けるべきだったよ」 「…私あなたに嫌われたかと思ったんだよ」 「すまん」 「他に何か忘れてない?○○」 「う~~む、分からん」 「…本当に?」 「ああ、本当に」 「……ぅ」 鈴仙の瞳が大きくなった気がした。 「……えぅ」 「鈴…仙…?」 俺は何か幻術をかけようとしたのかと思った、だが彼女の綺麗な瞳には大粒の涙がまた溜まっていた。 「毎年毎年どんなに忙しくても私の誕生日だけは忘れていなかったのに…今年は忘れてたんだね」 「……」 「毎年あなたがくれる手の込んだプレゼントが嬉しかった でも今年はプレゼントらしいものを一個もくれなくて そして○○の態度も私に対して冷たくて、○○に何かしたかなって もしかしたら愛想を尽かれたんじゃないかと思って このまま別れちゃうんじゃないかって」 鈴仙が震えながら言っている 「…そしたらあなたは私の誕生日を覚えてくれていなかった」 「それh「言い訳しないでっ!!」」 「言い訳…な…んて言わな…いで」 別れるなら…もっと前にし…てよ もう私にはあなたしかいないの あなたしか愛せないの 自分勝手かもしれないけど あなたのすべてが愛おしいの でも…あなたが嫌いになったら わたしはどうしたらいいの? ねぇ教えてよ…ねぇ… うわぁぁぁぁん」 泣かせてしまった。彼女を大事にするって決めたのに、泣かせないって約束したのに。 俺は最低の大馬鹿野郎だ。この償いは…態度で示すしかないだろう。 「今日、お前を2回も泣かせちゃったな」 「なん…で…知ってる…のっ…」 「お前の瞳が赤かったからさ」 「…分からないくせに」 「俺は鈴仙のかわいい顔を一番近くで見てるから言ってるんだ」 「…ばか」 「鈴仙、ちょっとこっち来て」 「なあに」 少しだけ震えている鈴仙をぎゅっと抱きしめた、そしてそっと唇にキスをした。 「っ/////」 「俺、鈴仙を大事にするって誓ったのにな」 「その愛しい人を泣かしちゃってる」 「おまえををこんなに心配させちゃったんだな」 「…そうだよ」 「じゃあ鈴仙を悲しませるようなことは一切いたしません」 「…うん」 「今後一切鈴仙に対して冷たい態度をとりません」 「うん」 「そして不肖○○、これから鈴仙を一生幸せに致します」 「えっ?それって」 「はいこれ、今年の誕生日プレゼント」 「これって…」 「俺と鈴仙の愛の証だよ」 「…開けてみてもいい?」 「もちろんさ」 なかには緋色に輝くルビーをもった指輪が 「わぁ…」 「鈴仙の綺麗な瞳に似てたから買ったんだ」 「褒めても何も出ないよ」 「結婚しよう鈴仙!」 「!!!!」 「………ってあれ」 「……」 れいせんはかたまってしまってうごけない! 「おーい」 「!!!ごっごごごごごごめんなさい!!」 「えっ…それって…」 「いやち違うの!!嬉しいんだけど、ほっ本当に、わっ私なんかで、いっいいのかなって!」 「…じゃあ俺が別の人の所に行ってもいいんだね」 少し意地悪に言ってみる 「えっ…」 「そっ…それは絶対にイヤ!○○は私だけのものなんだからっ」 「大胆だなぁ」 「///」 「じゃあ誓いの口づけを」 「うん!」 「「俺(私)は鈴仙・優曇華院・イナバ(○○)のことを一生大切にしていくことを誓います」」 そうして月明かりの下、一対の影がそっと重なり合った 「ねえ○○」 「どうした?」 「こっ…子供何人ほしい?」 「……」 ○○はかたまってしまってうごけない! 「あれっ?○○?」 「……」 「おーい」 「……作ろう」 「…目が血走ってるよ?」 「今すぐ作ろう!さあ!Now!Right Now!」 「えっ、ちょっ、いやああああ(嬉)」 今日も幻想郷は平和であった… 夜中のテンション怖い うpろだ0037 春。それは出会いの季節。 春。それは別れの季節。 誰かと誰かが出合い、誰かと誰かが分かれ、誰かと誰かが愛し合う。 そして幻想郷でも、一つの出会いと、別れが起ころうとしていた... -春- 「うーーん! 今日のお仕事終了! さあて、帰ってごはんの用意しなくちゃね」 永遠亭に続く小道。月の兎である鈴仙・優曇華院・イナバは、師匠の永琳からの 仕事をこなし、今まさに、永遠亭に帰る途中である。 花の香りが心地よく、疲れた体を癒してくれる。空気がおいしい 「このごろ薬の注文が増えてるね...やっぱり春だから花粉症の薬ばっかり。 まあ、こっちは売れるからいいんだけどね」 というのは、表向きの理由だった。売れてくれるのは嬉しい。だけどそれよりも、誰かの役に立っているというのが 嬉しかった。仕事が増えるのは大変だけど、その分やりがいもあった。 ...てゐが来ないのは少し不満だが。 「...ま、いいか。今は今晩の献立を考えなきゃね 確か昨日の残りがまだあったから.........!」 足が止まる。違和感が、というよりもこれは...人の気配。距離はここからだいたい......歩いて3分くらいだろうか。 でも、林の中。それにかなり微弱な気配だ。どうして気が付けたのだろう...? 人の気配は、動いていないみたいだ。ここは人里からは離れているし、妖怪も出ることが、ごくまれだがある。 「...もしかして、妖怪に襲われた? 気配は小さくて、動いてない。 けがをして動けないと考えると...」 その可能性は十分にあり得ると思った。それにもしそうだとしなくても、鈴仙は気になっていた。 どうして気づけたのか、自分でも確認したかった。 けがだったら尚更だと、鈴仙は気配があった林の中を進むことにした。 「この辺りだと思ったんだけど...あ!」 林の中を進むこと約五分。草木をかき分け、鳥の鳴き声を聞きながら歩いていると、一人の男性を見つけた。 背が高い...190はあるのではないだろうか。前髪が長くて、目が隠れてしまっている。近づいてみてつむっていることが分かった。 ここまではいい。 問題なのは、男性の状態だった。 男性は、服がボロボロになっており、とてもやせ細っていた。それに、服がビショビショで顔色が良くない。 ......これはまずい! 人と接するのは苦手だけど、そんなこと言ってられない! 「ちょっと! 大丈夫ですか!? 聞こえてますかぁ!? そうなら返事をしてください!」 呼びかけながら、男性の状態を確認する。よし脈はある! でもこのままじゃ危ない。すぐに永遠亭に行って治療しないと... 服の上からでも、傷の多さには気付くことができた。手や足には最近できたであろう傷が何か所もある。服には、血のにじみがたくさんできていた。 本当にまずい。早くしないと、取り返しのつかないことに... 「......う、んんっ...うう...あ...?」 「! 気がつきましたか! 体は大丈夫ですか?」 意識は戻ったみたいだ。目をつぶったままだが、そっちの方が私の能力を気にしなくてよくなるので、むしろ都合がいい 「...君は誰だ...あと、この状態で大丈夫だと思うなら...君は異常だ...うう...」 「私のことについては後でです! 立てそうですか? 駄目なら肩を貸すか、おぶっていきます!」 「なら、肩を貸してくれ...女の子におぶわせるようなことは、日本男児としてしたくはない... しかし肩ならば、恰好はつくだろう...」 なんかしゃべり方がおかしい。でもそんなことを気にしている暇はない。 「さて...どうにか立ち上がらなければ...」 男性がそう言いながら、目を開けた。 「...!!!???」 そして男性と目があい、とても驚いた様子を見せたかと思うと 「な、ななななななななななななな」 「ど、どうしたんですか...具合が悪かっt」 「何なんだ君のその姿はーーーーーーーーーー!!!!!????」 ...物凄いリアクションを起こし、けが人とかのレベルじゃない動きで跳ね起きた。 たとえるなら...変態行動をレミリアに見られた咲夜さん...ってところかなぁ... 「え、ちょ、まってくだs」 「どうして兎の耳をつけているんだい!? コスプレをする人がこんな場所にいるとは思えないし、私生活でつけるとも思えない! いや待て私生活でこんなところに来るとも考えにくいしいや待て待て! 林に兎...シチュエーションを考えた行動ということか!? そう考えると、その紫の髪についてもつじつまが合ってくる! コスプレならば、オリジナリティー、個性を出すために髪の色をあえて奇抜にするのも 一つの手段だ!!」 「き、奇抜とは失礼ですね! そう見えるかもしれないですけど、地毛なんですから文句とかは言われたくn」 「じ、地毛だって! そんなのありえない普通髪の色というのは遺伝子として受け継いでいくもので、親と同じ髪の色になるのがほとんどだ! そして君の話している言葉は日本語だそして「さしすせそ」の発音が「shi」のように空気を多く含むものではない! そう考えると日本人である可能性が高い そしてそして日本人の地毛は多いのが黒茶色の人もいるがほとんどが黒だ! そしてその中で紫などありえない! ......確認させてくれ!!」 「え!? いやそんなk「失礼!」ひゃうっ!」 男性は私の言葉をさえぎり、髪に触れてきた。それも頬の近くのを。 腰を曲げて手に触れ、まじまじと、興味しんしんに髪を見ている。は、恥ずかしい.........!! それに、手が首筋や頬の下のほうに当たってくすぐったくなってしまい、思わず声を出してしまう。 「や、ちょっと! どこ触ってるんですかやめて下さひゃあっ!!」 「無論君の髪の毛だ! ...本当に...地毛なのか...!?」 「さっきそう言ったじゃないですか!! いいから話してくださいこの変態!」 「そうだ、この兎の耳も!」 駄目だ話を全く聞いてくれない。仕方ない力で眠ってもらって... 「うひゃあっっ!!!」 男性が腰を元に戻し、今度は耳を片方触ってきた。 「この耳、暖かい...それに君の今の反応...まさかこの耳、神経が通っているのか!? そんなバナナ!!」 「だから触らないでください! あと本物とは言いました!」 「いや、さっき君から聞いたのはこの奇抜な髪が地毛だということだ!」 「奇抜っていうなとも言いましたぁーーー!!」 「どうなっているんだこの耳は!?」 「――――――――――――――っ!!」 そう言いながら、今度は両手に1つづつ、私の耳を握ってきた 「い、いやぁぁぁぁーーーー!!!!!!」 「アジスアベバ!!」 思わず、思いっきり顔をひっぱたいてしまった。けが人だというのに。 ぶたれた男性は後方へ2メートル位吹っ飛んで、これまた思いっきり地面に倒れた。 「ハァ、ハァ......あ!」 まずい、やってしまった! これ以上はやばいとか言ったの自分なのに! 駆け寄って、安否を確認する。 「ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」 ......返事がない...!!!! こ、これは本格的にまずい! 早く永遠亭に行かないと! 私は男性をおぶると、永遠亭に向けてできる限り速く飛行し始めた。 あーさー目ーが覚ーめたらもおーー昨日みたーいな日ー常はなーくてー 目が覚めたら、こんな歌が頭にながれてきた。なぜかって? そりゃあ... 「今この状態を完璧に表現しているからだろうな」 そんな独り言をつぶやいて、私、○○は目覚めた。 「さてと、とりあえず現状把握がしたいところだが...」 辺りを見回すと、電気スタンドやテーブル、過敏に添えられた可憐な花など、いろいろなものが見える。 「しかし、このテーブルの形、ベッドがリクライニングする機能、そして極め付けが...」 自分の腕から伸びている、点滴の管。その存在が、ここは病院であると物語っていた。 つまりここは病院である! 「と、普通なら思うだろうな。でもここは病院じゃない...いや少なくとも、」 『日本に存在する病院ではない』 「あら、なかなか推理力があるのね。その分だと、どうやら助かったみたいね。 よかったわ、鈴仙てば心配しすぎなのよ...」 パチパチという手をたたく音とともに、一人の女性が部屋に入ってきた。 赤と青を基調とした服に、銀色の長い髪を一本の三つ編み? にしている。 「とりあえず、いろいろと質問したいのだが...よろしいでしょうか?」 「あらあら、敬語なんて使わなくてもいいのに。 鈴仙と喋ったときはそんな口調じゃなかったのでしょう?」 「鈴仙...とは」 「覚えていないのかしら?」 そういうと赤青女性は、頭の上で両手を耳のようにした。 「成程。その子がここに連れてきてくれたんですね」 「思い出してくれたみたいね。一応、あの子も私も、あなたの恩人ってことかしら」 「では、その恩人の名前を聞かせてくれないでしょうか?」 「おっとごめんなさい、まだ言ってなかったわね。では改めて」 「私の名前は八意永琳よ。よろしくね...えっと」 「○○です。すみません、こちらから名乗らずに」 「いいのよ気にしなくて......さて、○○。 悪いけど、こちらからあなたに質問、および『この世界』の説明をさせてもらうわ」 そして私は、新しい世界を、幻想郷を 兎の彼女、鈴仙・優曇華院・イナバを知ることとなった。 「...では、始めましょうか。二人ともいいかしら?」 「問題ない」 「大丈夫です、師匠」 居間に通された私は、鈴仙と再会した。あちらもいろいろと話したかったようだが、 永琳さんに「積もる話は説明を終えてから」と言われてしまい、また後でということになった。 「じゃあまず、○○に幻想郷や私たちについて説明しましょうか」 「よろしく、永琳さん」 そして、永琳さんからの説明が始まった。 「...と、いう訳」 「...成程。簡単にまとめると、ここは私が元いた世界とは違う場所で、私は迷い込んできた人だと。 そして永琳さんは月の住人。鈴仙はへっぽこ兎であると」 「まあそんなところね」 「へっぽこは余計です! 師匠もナチュラルに肯定しないでください!」 「いや敵前逃亡とか...へっぽこにふさわしいと思うが」 「違うわ。それを言うなら敵前逃亡兎よ」 「さすがにそのまんますぎないか?」 「二人ともいい加減にしてください!!」 ちょっとからかいすぎたようだ。鈴仙は拳を握り締めて正座したまま、こっちを睨んでくる。 かわいらしいと思ったのだが、この状況でそんなこと言ったらそれこそ怒られてしまうだろう。やめておいた。 「ふふふ、ごめんなさいね鈴仙。ちょっと面白くて」 「もう...」 「しかし○○、あなたよく平然としていられるのね。普通の人だったら、ここまでかなり驚いていると思うわ。 「いや、驚いている。面に出していないだけだ」 「でも、鈴仙は「○○は驚きまくってた」って言ってたわよ?」 「そうですよ! 本当に怪我してたのか、不思議に思えましたよ...」 「すまない。あまりにもカルチャーなショックでな」 「まあ、そのあたりも含めて、今度は○○について教えてもらおうかしら」 「了解だ。では...」 私は、この世界とは違う場所で暮らしていた...ということになるのだろうな。日本って知っているか? 「いえ...少なくとも、私は知りません」 「えっと...ごめんなさい、私もよくわからないわ」 まあ、そこが私の暮らしてた場所で、そこからここに来たんだな。 「○○は、向こうで何をしていたの?」 ......教授として、仕事...というか、研究をしていた。そこまで有名じゃなかったがな。 「へえ...教授かあ...先生みたいなことをしていたんですか?」 .........それは 「...鈴仙、それは今あまり関係ないわ。教授だった、だけで十分よ」 (...!) (いいのよ、言いたくないんでしょ?) (...すまない) 「○○、向こうでここに来たきっかけとか、原因とか...些細なことで良いの、教えてくれない?」 そうだな...えーと......あれ? 「どうしたの?」 「どうしたんですか?」 .................................忘れた。 「え! 忘れた!?」 「き、綺麗サッパリにですか!?」 ああ、綺麗サッパリにだ。言葉の使い方がうまいな鈴仙は。 「いえいえそんなkじゃなくてですね! 本当に覚えてないんですか!? どこかに行ったとか、何かしたとか!」 ...全然? 「知りませんよそんなの! こっちが聞いてんですから!」 「落ち着きなさいな鈴仙...本当に覚えてないのね?」 ああ、まっっったくな。 「それなら仕方ないわね。これまでも、そう言った事例はあったもの、何とかなるでしょう。 軽い記憶障害なら、すぐに向こうに戻るか、ここで思い出すかのどっちかね」 それなら良かった。 「大丈夫...でしょうか? 私のせいじゃ」 それはない。 「で、でも......」 もう一度言う、それはない。受けた本人が言うんだぞ、信じろ。 「だからってそんな...」 「鈴仙、彼が言ったのならそれでいいの。受け入れましょう」 「師匠...分かりました。そういうことにしておきます」 そうだな、そういうことにしといてくれ。 「じゃ、いったんお開きにしましょうか。もう夕方よ?」 「え、もうですか!? 夕飯の支度しないと...お先失礼します!」 鈴仙はそう言うと居間を出て、奥の部屋にきえていった。 「...さて○○、これからの事なんだけど...とりあえずここにいてもらうわ。 患者を放っておくわけにもいかないし、鈴仙が迷惑かけてるしね」 「鈴仙は迷惑なんてかけていない、むしろ恩人だ。永琳さんも言ってただろ?」 「ふふふ、そうだったわね......あの子ね、人が苦手なの」 「? 唐突になんだ。しかし私が話してみて、そうは思えなかったのだが」 「............貴方だから......大丈夫なのかもね...」 「何か言ったか?」 「いいえ何も? じゃあ○○、リハビリもかねて鈴仙の手伝いをしてきてくれない?」 「そうするか。他にすることもないしな」 「よろしくねーー」 「少しの間でいいから、彼女のことも...ね」 「? ○○さん、何しに来たんですか?」 台所...というより、厨房のようなところで鈴仙を発見した。 「永琳さんに手伝ってこいと言われてな。それでここに来たんだが...」 「いいんですか? それなら、そこの食器棚からお皿を出してくれませんか?」 「分かった」 そんな感じで食事の用意は順調に進み、もうすぐで終わるというところだった。 「あの...○○さん」 「何だ鈴仙。言われた作業ならもう終わってるから心配するな」 「えと、そうじゃなくて...私が○○さんをひっぱたいちゃったことなんですけど...」 「...そのことなら気にするな。親父にはすでにぶたれてたからな」 「親父...?」 「すまん、分かるわけなかったよな。ていうか、謝るならこっちの方だ」 「え......」 「いやさ、私が謝ることならたくさんあるだろ?」 ○○さんがそう言った後、少し考えてみて......納得してしまった。 確かに、普通の人ならば謝るべきところがたくさんある。さすがに自覚していたのだろう。 「そうですね...たっくさんありますね...でも、いいんです。 私がやったことも許してもらったし、そういう気持ちがあるなら、私はいいです」 「いや、形だけでも謝らせてくれ、本当にすまなかった!」 「.........今のは聞こえなかったことにします!」 「...何故」 ○○さんは不思議そうにしてるけど、答えは単純だった。 「私が謝ってないからです。だから、○○さんも謝らなくていいんです。 今回のことは、お互いがただ許しあった。それでいいんです。 だから......」 ○○さんの正面に立って、顔を見上げる。表情はよくわからないけど、関係ない。 今考えたことを、○○さんに話すだけ。 「おあいこってことで......いいですか...?」 真っ直ぐに○○さんのことを見て、話すことができた。 そう思ったその時、○○さんの右手が、私の左頬に触れてきた。 「え! ま、○○さん!」 「もしかして、また私の髪がどうのこうのですか!? 何度も言いますがこれはj」 「いや、そうじゃなくて......」 「可愛いなって、思ってさ」 「......か、かわわわわわわわわわ!!!???」 いきなりの言葉に、頭が混乱してしまう。うまく話せなくなっている。 お、落ち着くんだ私! 落ち着けぇー、落ち着けぇーー!! 「ま、○○しゃん! えっと、しょの! あn「おーい二人ともーー! まだできないのかしらー?」 「おっと、永琳さんが待ってるな。早く作るか」 「え、ええと...はい!」 どういうことか聞こうと思ったけど、聞けなかった。 でも、師匠が途中で話してなくても、いえたんだろうか...? (『可愛い』だなんて...ああもう! どうしたらいいの...!?) ご飯を食べてから寝るまでずっと考えてはいたが、結局わからないままだった。 言い訳という名の謝罪 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。 イチャついてないと思った方...おっしゃる通りです返す言葉もございません... 次の機会がありましたら、チャンスをください。 それでは
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鈴仙10 新ろだ205 夕方ともなると、気温も下がり出し、炬燵が恋しくなってくる。 炬燵でのんびりするのは大変心休まる一時ではあるのだが、大きな問題がある。 出る気がしなくなることだ。 週末の仕事を終え、永遠亭へとやってきた。 姫様や八意先生への挨拶もそこそこに、炬燵へと直行する。 人里から永遠亭までの道程を歩けば、体もすっかり冷え切ってしまう。 炬燵はすっかり凍ってしまった俺の体をとろかせる。 「炬燵はいいねぇ…」 「いいよねぇ…」 先に炬燵でくつろいでいたてゐと、互いにだらけきった表情で話す。 「○○、顔が溶けてるよ~?」 「凍ってたから溶けていいんだよ~」 「それもそうだね~」 「鈴仙は~?」 「まだ師匠の手伝いじゃないかな~」 「そっか~」 俺はもぞもぞと炬燵から這い出し、鈴仙が居るであろう調合室に向かう。 「炬燵虫が動いた~」 「炬燵虫はてゐだろ…ってマジ寒い…」 「後ろの鴨居に掛かってるどてら使いなよ~」 「おう…サイズが少しきついけど…って、これ鈴仙のか?」 「よくわかったね~」 「匂いで」 「変態」 「俺は紳士だよ」 「変態という名の紳士か~」 「それは否定しない」 「しなさいよ~」 馬鹿な会話を終えて廊下に出る。 どてらが無かったら、即炬燵に駆け込んでいそうなほど冷え込んでいる。 俺はとっとと調合室に向かった。 日の当たらない北側に、調合室はある。 薬の品質保持の為とはいえ、冬場は非常に寒い。 早いところ鈴仙の仕事を片付けて、一緒に炬燵に入りたいところだ。 調合室の前に着き、戸をノックする。 「はい、誰かしら?」 「俺」 「あっ、入って。 今ちょっと手が離せないの」 調合室に入ると、踏み台の上からさらに手を伸ばして、棚の上に荷物を載せようとている鈴仙が居た。 「なあ鈴仙」 「んー……な、なに?」 「少し浮けばいいんじゃ?」 「あ」 可愛いなぁもう。 材料の片付けと器具の洗浄、殺菌を手伝い、一緒に居間へと向かう。 「何か随分と寒いわ…」 「そりゃそうだろ、もう日もすっかり落ちてるし」 俺は着ていたどてらを鈴仙に着せてやる。 「あっ、これ、私の…」 「居間にあったんで、ここまで借りてきたんだ」 「ん…○○の匂いがする…」 「変態」 「そうかも」 「てゐに言われたことを返しただけなんだが」 「何て答えたの?」 「俺は紳士だって」 「変態という名の?」 「否定はしない」 「似たもの同士ってことかしら」 「似たもの夫婦って言葉もあるぞ」 「プロポースはまだ?」 「準備中です」 「暖かい時期にしようね」 「そうだな」 居間に戻ると、鍋と姫様、八意先生にてゐが待ちかねていた。 「やっと来たわね、おふたりさん」 「悪いわね、○○。 今日はちょっと使った器具が多いの忘れてたのよ」 「ほら二人とも鍋そろそろ煮えるよ~」 炬燵は4つの辺がある。 一つに姫様、一つに八意先生、一つにてゐ。 ならば俺と鈴仙の入る場所は。 「んしょっと」 「ん~、あったか~い」 「二人とも躊躇無く並んで入ったね~」 「なんか鈴仙、からかい甲斐がなくなっちゃったわねぇ」 「それはそうよ、毎度毎度輝夜にいじられてたら」 「ええ、もうすっかり慣れました。 ね、○○♪」 「だな、鈴仙」 鍋の中身はなんだろうかと考えつつ、俺と鈴仙は肩を寄せ合っていた。 他の三人もこの光景には慣れたようで、ニヤニヤしながらも鍋の様子を伺っていた。 「さ、もういいわよ」 鍋奉行の姫様が蓋を開けると、良い匂いが部屋に広がる。 今日は鴨鍋だ。 「わぁ、美味しそう!」 「月曜日だったかしら、妹紅とやりあおうかっていう時に、編隊組んで飛んできたから二人で撃墜してきたのよ」 「で、どっちが勝った?」 「妹紅が四羽の私が六羽、圧勝よ!」 「さすが姫様ね~」 「えっへん」 「ほらほら、美味しいうちに食べましょう。 お酒もあるわよ」 週末恒例になっている、五人での食卓。 鍋と酒で盛り上がりつつ、夜は更けていく。 鍋も雑炊で締め、食後はのんびりと… 「ドロー3!」 「ドロー3!」 「ドロー3!」 「ドロー3!」 「ぎゃー!」 ウノをやっていた。 そして、俺の命運は永遠亭十二枚コンボで尽き果てていた。 「さ、○○。 わかってるわね?」 「く、くそう…」 外はついに雪がちらつきはじめている。 「負けた貴方が悪いのよ」 「くっ…」 気温はまだ下がりつづけている。 「ほらほら、早く行った行った~」 「じ、慈悲を…」 その距離、五十メートル。 「ごめんね、○○。 でも、ルールだから、ね?」 「分かってるよ…ううっ」 蜜柑の置いてある台所への果てしない旅路。 ルールで走るの禁止…というか、既に寝ているイナバも居るので走れないのだが。 すっかり冷え込んだ台所で、蜜柑を籠に山盛りにする。 まだ閉じていなかった窓から、月明かりが差し込んでいる。 ついでに窓を全て閉じ、炬燵のある居間へと戻る。 既に手足の先は冷え、寒さは体を包み込んでいた。 「ただいまー!」 「おかえり、○○…っ!?」 居間に戻り、蜜柑の入った籠を炬燵の上に置く。 そしてすぐさま炬燵に潜り込み、鈴仙を思い切り抱きしめる。 「ま、○○!?」 「ん~鈴仙あったかい…」 「も、もう、仕方ないなぁ…」 鈴仙も俺の背中に手を回し、抱き合う形になる。 とても暖かい手が、冷え切った俺の背にじんわりと熱を与えてくれる。 それを見ていた三人は、炬燵から這い出した。 「「「あっつ~……」」」 それはそうだろう。 俺ですら、既にのぼせているんだから。 新ろだ208 幻想郷は十二月ともなると雪が降り積もる。 犬は喜び庭駆け回り、猫は炬燵で丸くなる。 そして兎は… 「なあ鈴仙」 「なぁに、○○」 「俺は今、年賀状を書いているんだ」 「御得意様とかに送るんだっけ?」 「そのとおりだ。 それでだな鈴仙」 「うん」 「背中に張り付くな、書きづらいから」 「じゃあ、抱っこして」 「だから年賀状が書けないだろう…」 「○○、冷たい…」 「はいはい、終わってから存分に抱っこしてやるから」 「じゃあ、それで妥協するわ」 そう言って鈴仙は俺の背中から離れる。 背中から温もりが消え、体が一気に冷えていく。 「…これはこれで寒いな」 「でしょう? 炬燵で書いた方がいいんじゃないかな。 さっき火は入れてきたから」 「そうするか…」 自分の部屋での年賀状書きを諦め、炬燵のある居間へと向かう。 筆記用具一式を持ち、廊下に出る。 …鈴仙は背中に再び張り付いてきた。 動きづらくはあるが、暖かいのでまあ良しとする。 炬燵はすっかり暖まっており、非常に快適だ。 しかし、年賀状はやはり書きづらい。 「鈴仙、何故同じ場所に入る?」 「嫌?」 「普段なら俺から同じ場所に入るが、今に限れば嫌だな」 「ちぇ…」 「書き終わらないうちは抱っこもできそうにない」 「それは死活問題ね」 そういって鈴仙は、俺の右側から、炬燵の反対側に移動した。 鈴仙の側に置いてある火鉢の上では、鉄瓶がしゅんしゅんと湯気をたてている。 鈴仙はその湯でお茶を淹れて、俺の傍に差し出してくれた。 「ありがとう、鈴仙」 「年賀状書きは大事だと思うんだけど、さすがに百五十枚一気に書くのはムリだと思うんだけど」 「うん…分かってはいたんだが、色々忙しすぎて先延ばしに…」 「そうねぇ…」 「…俺だって、鈴仙とくっついていたいけどさ、やることはやらないと」 「分かってる。 分かってるけど…それでも、寂しくなるの」 「……ごめんな、俺がもうちょっと達筆で筆が早ければ良かったんだが…」 「え、あ、いや、ごめんなさい……そんなつもりじゃ…」 「ああ、分かってる。 …向こうに居たときに、プリンターに頼り切ってた自分を恨んでるだけだ…」 「外の道具は本当に便利だものね。 技術自体は月には及ばなくても、その用途と工夫は月とは比べ物にならないもの」 「発想の多彩さは間違いなく人間の強みだね。 同じ用途で多種多様な製品を見ると、つくづく思うよ」 「短い命で何かを為そうとするなんて、最初は愚かに見えたわ。 例え果てに辿り付いても、その頃には寿命だもの」 「だが人間は知を次の世代に語り継いだ。 己の歩みをわずかな時間で歩ませ、その先へと導いた」 「…で、その結果が、○○のハマってたゲームってわけね」 「……ごめん」 「このあいだの神無月…確かに久々の里帰りだし、色々思う所もあったと思うけどさ…。 買い込んだゲームに夢中で年賀状書くの忘れてたとか、ちょっと酷いと思わない!?」 「う……」 「私のこともほったらかしで…そんなにゲームが好きなら、その主人公のシャノアとでも結婚すればいいじゃない!」 「……分かった、鈴仙」 「え、あ、いや、冗談よ?」 「ゲーム全部粉々にする」 「あ、その、そこまでしなくても…」 「また相手しなくなるぞ?」 「いや、その、気にしなくていいから…」 「…鈴仙が寂しがってるのに、放っておくような奴が、将来、良き夫になれるとは思っちゃいないさ」 「えっと、その…」 「ごめんな、鈴仙。 寂しい思いさせちゃって…」 「あーもう待って○○! ゲーム壊したりしなくていいから!」 「え……」 「確かに、夢中になっててちゃんと相手してくれないことはあったけど。 何か目的を達成したときの嬉しそうな顔、私は好きなの。 …その後も、上機嫌で私と話してくれるし、夜も、その、優しくしてくれるし…。 それに、私の話を聞いてないわけじゃないもの。 いつだったか、ゲームやってる○○に『耳が寒い』って話したら、次の週末には長い耳に合わせた毛糸の帽子を用意して…。 夢中になってても、私のこと、忘れてないんでしょ? …さっきのは、ちょっと意地悪に言っただけだから…ね?」 「……鈴仙」 「ん…?」 「俺は右利きだから、左側ならその、入っていても年賀状は書けるぞ?」 「ふーん……ねぇ○○?」 「な、何だ?」 「もっと素直に言ってくれると嬉しいな?」 「……鈴仙、お前を感じていたいから、俺の左側に来てくれないか?」 「ふふ、喜んで」 まあ、たとえ左側に居ても多少は書きづらいのだが。 筆は多少遅くなるが、幸せな気持ちで年賀状は書き終えることが出来た。 犬は喜び庭駆け回り、猫は炬燵で丸くなる。 そして兎は、俺とくっつき温まる。 新ろだ218 幻想郷でもクリスマスというものが広まっているらしく、ここ、永遠亭でもクリスマスパーティーが開かれている。 と言っても、参加者は永遠亭に住む者達だけだが。 クリスマスパーティー(という名目の、いつも通りの宴会)を開いて、皆で騒いでいた。 宴も終わりに近づいた頃、自分は酔いを醒ます為に縁側に出て風に当たっていた。 とは言うものの、今は師走。空気はとても冷たく、のんびりと当たっていられるものでは無い。 だが、そんな事が気にならない程酔っていた。 そのまましばらく当たっていて頭も冴え始めた頃、肩に何かを掛けられる感触がした。触ってみると上着のようだ。 誰が持ってきてくれたのか確認しようと立ち上がりかけた時、隣に誰かが腰を下ろした。 鈴仙・優曇華院・イナバ。月から逃げてきたという玉兎である。 「こんな所でボーッとしてたら風邪引くわよ?」 どうやら自分の事を心配してくれていたようである。 「でも、ここならすぐに酔いも醒めそうね。」 鈴仙に感謝の言葉を述べ、しばらく談笑した。 「そういえば、鈴仙に渡したい物があるんだ。」 「え?私に……?」 自分はこの日の為に、前日から鈴仙が喜びそうなものを探して里を練り歩いていた。 だが、なかなか良さそうなものが見つからず、結局買ったのは髪飾りである。 「ちょっと目を瞑っててくれ。」 「ん……」 鈴仙の髪にプレゼントを付けてあげる。 「これで良し、と。」 「もういい?」 「ああ、いいぞ。」 目を開けた鈴仙に手鏡を渡す。 「あっ……」 鈴仙が手鏡を覗き込むと、髪にウサギ型の髪飾りが付いていた。 「どうだ?気に入ってくれるかなと思って買ってきたんだが……」 「かわいい……ありがとう、○○。嬉しいなあ……」 どうやら気に入ってくれたようだ。非常に嬉しい。 「いやあ、中々鈴仙に似合いそうなものが無くてさ……気に入ってくれるかどうか心配だったんだ。」 「うん……ありがとう。こんなかわいい髪飾りをくれて……」 「気に入ってくれて嬉しいよ。でさ、俺……鈴仙に一つ、言いたい事があるんだ……」 「何?」 「あのさ、鈴仙……もし、良ければ……お、俺と……その……付き合って、くれないか……?」 「えっ……?私、と……?」 「ああ……嫌ならはっきり言ってくれて構わない。ただ、俺は鈴仙が好きなんだ。幻想郷に住む誰よりもお前を愛してる。」 幻想郷に迷い込んだ時、妖怪に襲われていた自分を助けてくれて、自分を永遠亭に住まわせる事を永琳さんや姫様に提案してくれた鈴仙には本当に感謝している。 その感謝の気持ちがいつしか、恋慕の情に変わっていた。 「あの……私からもプレゼントがあるんだけど……受け取って、くれる……?」 「え?ああ……いいよ。」 「じゃあ……目、瞑ってて……」 「わかった。」 ちゅっ…… 唇に柔らかく、温かいものが当たる。 鈴仙にキスされたことに気付くのにそう時間は掛からなかった。 「鈴仙……?」 「あの……私からのプレゼント……気に入って、くれた……?」 「ああ……ということはもしかして……」 「うん……あの、私で良ければ……その……ふ、不束者ですが……宜しくお願いします……」 「ありがとう、鈴仙……」 「○○……」 ふと気が付くと、外は雪が降っていた。 粋な計らいをしてくれた神様に感謝しながら、自分達はもう一度キスをした。 新ろだ300 「鈴仙…できればこんなことはしたくない…」 「私もよ、○○…でも、仕方が無いの」 互いにデザートイーグルの銃口を向け合い、隙をうかがう俺と鈴仙。 「そうだな…いずれはこうなる運命だったんだ」 「ええ、もう終わらせましょう…」 互いの微かな動きを合図に、銃口から飛び出したそれは… 「……俺の勝ちだ、鈴仙……」 「……まさか耳を狙うなんてね…ヒットー…」 「よっしゃ!恵方巻き係は先生&鈴仙チームな!」 「うー…負けたー…」 「よくがんばったわよ、ウドンゲ…まあ、諦めて作るとしましょう」 「やるじゃない○○! まさか永琳と鈴仙に勝てるなんて思わなかったわ!」 「ふふふ、サバゲーなら幻想郷最強になれるぜ!」 「あら、それじゃあリアルサバイバルではどうかしら?」 「いやごめんなさい幽香さんカンベンしてください」 今日は節分。 普段は普通に豆まきをするのだが、数日前に姫様のお供で行った香霖堂でエアガンが見つかった。 遊び方を説明したら、ものすっごい明るい顔して 「それじゃあ、節分はこれで豆合戦ね!」 などと言い出したのだから… でも豆なんて普通飛ばせないですよ、なんて言ってたらスキマですよ。 当日までにしっかり数を用意して、なおかつ大豆対応にしてくるんだから流石だ。 そんなわけで、大勢の人妖を呼んでの豆まきサバイバルゲームと相成ったのだった。 姫様チームと八意先生チームに分かれて、負けたほうが全員分の恵方巻きを用意するというルールで始めたのだが、これがまた凄かった。 霖之助がゲームの開始に気付かないまま豆エアガンの考察に夢中になってるうちに第一の犠牲者になったり。 神奈子様がオンバシラバリケードを作ったら、その中に諏訪子様がBB手榴弾をぶちこむわ。 早苗ちゃんと射命丸が二人で風を起こして防御する後ろから、紫さんがスキマ開いてデリンジャーぶちこむわ。 その後スキマからお尻だけ出てるのを発見して幽々子様がガトリングぶちこむわ。 勇儀が萃香を盾に特攻したら、てゐが仕掛けてあったクレイモアをまともに喰らうわ。 魔理沙が弾幕はパワーだぜって言いながら撃ってたら弾切れ起こして逆に総攻撃喰らったり。 パルスィが俺を見ながら妬ましいわと言いながら見事なバリケードポジションでなかなか手が出せなかったり。 八意先生がガン・カタばりの活躍を見せてたと思ったら、足元に散らばった豆で転んであっさり撃たれたり。 姫様にダンボールかぶって近づいて奇襲をかけたレミリアが、その身を呈して姫様を守るイナバ達を本当に羨ましそうに見てたり。 その隙に妹紅がPSG-1で姫様を打ち抜いて姫様がorzしてたり。 幽香さんが両手にガトリングでダブルスパークしてたら、やっぱり弾切れで総攻撃喰らったり。 俺と鈴仙以外で最後に残った衣玖さんが空気を読んでやられたり。 他にも色々あったようだが、まあ俺が見た範囲ではこんなとこだった。 負けたチームが恵方巻きを作り始めている。 具材も色々と用意してあり、皆思い思いの恵方巻きを作っている。 それを見ていた勝利チームも、結局「面白そうだから」と作り始めてしまった。 結局、みんなで好き勝手に作りまくることとなり、勝敗など既にどこかへ行ってしまった。 しばらくして、山のような恵方巻きが出来上がった。 単純に人数で割れば、一人三本はありそうだ。 まあ、たらふく食べる人…いや亡霊がいるから問題はないのだが。 それでも余ったら土産にでもすればいいし。 「はい、○○。 私の作ったやつよ」 「ありがとう鈴仙…って、これ人参多くない?」 「ふふふ、兎の人参好きを甘く見ちゃ駄目よ?」 「俺は人間だって…」 「まぁまぁ、食べれば分かるから♪」 「やれやれ…美味しくないってことはないだろうからいいけどね。 それじゃ、最初の一本は皆で恵方を向いて食べようか」 「今年はどっちかしら?」 「東北東ですね、先生」 「これって、無言で食べるんだっけ?」 「うん」 「なんかシュールよね~、この人数だと~」 「確かに…」 「それじゃ…」 「「「「「「「「「「「「「「「「「「いただきまーす」」」」」」」」」」」」」」」」」」 みんな一斉に恵方巻きをほおばる。 俺も人参たっぷりな恵方巻きをほおばる。 ……おい。 もぐもぐ もぐもぐ もぐもぐ もぐもぐ もぐもぐ もぐもぐ もぐもぐ もぐもぐ ちゅ 「…鈴仙、何をしてるのかな?」 「人参たっぷりの恵方巻きを食べてたの」 「恵方向いてないよな?」 「○○が居る方向が私の恵方だからいいのよ」 「……鈴仙の分があるし、場所を入れ替えて食うか」 「うん♪」 場所を入れ替えて、二本目を食べ始める俺と鈴仙。 皆のニヤニヤした視線を感じるが、結局やってしまった。 「……大変、ここに恐ろしい鬼が居るわ!」 「ん、あたしのことかい、パルスィ」 「勇儀じゃないわ、もっと恐ろしい…そう、嫉妬を操る私なんて足元にも及ばない。 嫉妬を生み出す鬼よ!」 「「「「「「「「「「「「「「「「「……なるほど」」」」」」」」」」」」」」」」」 「……展開が読めてきた」 「ふぇ?」 「逃げるぞ、鈴仙!」 「えっ!?えっ!?」 「鬼は外よ、皆! あの妬ましい鬼に豆を撒くのよ!」 「「「「「「「「「「「「「「「「「サー、イェッサー!」」」」」」」」」」」」」」」」」 各々が得物を持ってこちらに襲い掛かろうとする中、俺と鈴仙は大慌てで竹林に逃げ出した。 永遠亭からある程度離れたところで足を止め、呼吸を整える。 「鈴仙、たまには空気読もうぜ?」 「うん、さすがに気をつける」 「空気を読むのは大切なことですからね」 「「衣玖さんいつのまに!?」」 「ちなみに、今の空気を読みますと…」 「鬼が居たぞーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 「といった具合になります♪」 「「ギャーイクサーン!」」 結局、人里の薬局まで逃げることになった俺と鈴仙だった。 「嫉妬って怖いね、○○…」 「いや、あれ明らかに面白がってるだけだろ…」 「怖いからくっついてていいよね?」 「そうだな、怖いから今夜はくっついてようか」 「今日はもう遅いから、永遠亭に帰るのは明日にしよ?」 「そうだな、帰るのは明日でいいだろう」 「ねぇ、寒いから布団に入ろう?」 「そうだな、布団に入ろう」 「○○が好きだから、キスするね」 「そうだな、俺も鈴仙が好きだから、キスするよ」 ちゅ 「おやすみ、○○」 「おやすみ、鈴仙」 鬼ごっこの疲れもあって、そのまま俺と鈴仙は眠りに落ちた。 お互いに冷えた身体を温めあいながら。 ─────その頃永遠亭では───── 「ねぇねぇ、煽っておいて、あんたは追いかけないの?」 「追いかけっこは苦手なのよ。 あ、そっちのでんぶ多いやつ頂戴」 「案外食べるのね~。 もう七本目よ?」 「大丈夫よ、食べても太らない体質だから」 「むしろあんたが妬ましいわ~」 新ろだ518 ○○「女の本音チェッカー、ねぇ・・・・・・」 永遠亭の一室で一人の男が呟く。彼の名は○○、色々あってこの永遠亭に居ついた外来人である。 そんな彼は、あてがわれた自室でパソコンを操作している・・・・・・ ここは幻想郷でありながら、えーりんの謎技術によって外の世界のインターネットを利用できるのだ。 これは娯楽の多い外の世界からやってきた○○にとって、とてもありがたいことだった。 何せ幻想郷には外と比べて娯楽が極端に少ない。そこで暇つぶしといえばもっぱら インターネットなのだが・・・・・・そこでたまたま、「『女の本音』チェッカー」なるサイトを見つけたのだ。 ○○「ま、試してみますか・・・・・・」 カタカタとキーボードを叩く音が部屋に響き、マウスのカチリ、という音がする。 ○○「・・・・・・キモイ、って・・・・・・」 先ほどと別の名前を入力。すると今度は・・・ ○○「全力で嫌い・・・・・・」 またもや別の名前、そして落胆のため息。それがもう一度繰り返された。 ○○「う~む・・・・・・相性悪いのかねぇ・・・・・・」 永琳「○○~? ちょっときて~」 ○○「あ、はい! ただいま!」 ここの薬師の声に呼ばれ、○○は部屋を出て行く・・・・・・パソコンの電源を消し忘れたまま。 ーー十分ほど後 鈴仙「お~い、○○~・・・・・・ってあれ? 居ないのか・・・・・・あ、電源つけっぱなしじゃないの。 ・・・・・・うん? 女の本音チェッカー・・・・・・へぇ~、こんなの見るんだ、あいつ・・・・・・」 入れ違いになるようにして入ってきたウサ耳の少女がつけっぱなしのパソコンを覗き込む。 電源を消そうとしただけなのだが、そこに映っていた画面が彼女の興味を引いた。 鈴仙「ええと・・・・・・『○○』 『うどんげ』『鈴仙』『鈴仙・優曇華院・イナバ』って、どれも私じゃないの・・・・・・ どれどれ結果は・・・・・・? うわ、これは酷い」 鈴仙「まったく・・・・・・こんなもの、真に受けるタイプじゃないと思うけどねぇ・・・・・・」 ーー数分後 ○○「・・・・・・ん? しまった、電源を切り忘れてたか」 薬師の用事を済ませ○○が戻ってくると、パソコンがつきっぱなしであることに気付く。 そしてキーボードの上に見慣れない紙が一枚おいてあることにも。そこに書かれていたものは・・・・・・ 『私 →[結構好きよ]→ ○○ P.S. こんなもん見てないで直接聞きに来なさい』 ○○「こ、これは・・・・・・」 鈴仙「○○ー! 置き薬の集金に行くわよー! 電源切り忘れないようにねー!」 ○○「れ、鈴仙! 人のパソコンを・・・・・・!」 鈴仙「消し忘れてたあんたが悪いのよ! 早くしないとおいてくわよー!」 ○○「ああっ! ちょっとまって!」 永遠亭から一組の男女が出発する。その二人はとても仲良さげに竹林を里へと駆けていった。
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鈴仙4 314 「あわてんぼうのサンタクロース、クリスマス前にやってきた~♪っと」 実際そんなサンタがいたら迷惑極まりないが、今回は俺がサンタだ。 そんなヘマはしない。 本日、十二月二十三日、クリスマスイブイブだ。 俺が居候させてもらっている永遠亭の面々には クリスマスと言う概念がないらしいが、今回は他の幻想郷の面々が クリスマスパーティを開くと言うことなので、今年から開かれるらしい。 もっとも、彼女たちのことだからただ騒げればいいだけなのかもしれないが。 「うむ、クリスマスツリーはこれで万全だ」 ちなみにここは紅魔館。 内装が和風の永遠亭では、それこそクリスマスを開くのには向くとはいえない。 むしろ、周囲に竹などあるから七夕のほうがムードが出るかもしれない。 うん、織姫と彦星のことについて語ったら、似合わないとか言われそうだけど、 やるんだったら、一応言っておこう。 きっとまたやることは酒盛りだろうけど。 「こっちはもう終わったわ」 同じように飾り付けをしていたメイド長の人が音もなく現れる。 「あぁ、こっちももう終わります」 大体、飾りつけも終わる。 これが終わったら、あとは帰るだけだ。 「ところであなた、クリスマスプレゼントは買ったの?」 「あー、いや、一応自分で作ったものを…」 そう答えると驚いたように彼女は目を丸くする。 普通に見れば俺自身、物を作るような人間には見えないだろう。 「作ったものって、もしかして置物かしら?」 その言葉に首を振る。 俺にとっては置物を作るほうが難題だ。 綺麗に陶器を作れるとは思えないし。 「や、ちょっとだけ服を…」 「服!?」 そのメイド長さんの驚きようは意外なんてものじゃなかった。 まるで、ありえないと言うように俺のほうを見る。 「はは、始めは誰もがそういう反応しますね。でも、最近の鈴仙やてゐの服とかは 俺が作ったものですよ?」 あの時、忘れもしない二ヶ月前、鈴仙とてゐの服を 俺の頭脳で何とか作り上げたものだ。 「あなた…何者よ?」 「…コスプレイヤーの知り合いに技術を伝授された奇妙な奴…でしょうか?」 「コス…?」 「あー、衣装とかそういうのを着たり作ったりする人です」 俺は専ら作るほうが専門だけど。 さすがに着るのはちょっと…勘弁してほしい。 「へぇ、じゃあ作るのは慣れてるのね?」 「えぇ、今回は一応普通の女性が着れる程度の服を作ったんですけど…」 「どうかしらね?」 考えてみれば体格差はかなりあったりする。 こっちの永琳さんと、ここのお嬢様とじゃ、かなり差があるんだよな…。 「ま、楽しみにしておくわ」 「プレゼント交換に当たったら、ですけどね」 交換会なんて結局の所、何十分の一の確立だし。 簡単に当たるとは思えないなぁ…。 …ここの館のお嬢様が運命でも操らない限りは。 いや、逆に運命を操られたらまず間違いなく当たるんだろうな。 やらないと思うけど。 そうこうしている内に、とっくに日が暮れて俺は帰るルートを辿っていた。 プレゼント交換用の服は完成しているのだが、本命に渡す服…というか衣装は まだ完成していない。 「鈴仙…気に入ってくれるといいんだけど…」 そう、俺の本命は鈴仙だ。 言うなれば一目惚れ。 彼女と出会ってから、割と人生が変わった気がする。 「問題は…補修が大変なんだよな。あの衣装」 生地自体が、香霖堂にあったから良いにしても もしかしたら、二度と作れないかもしれない。 「ま、何とかなるか」 そもそも、この衣装の存在自体も言うなればネタに近い。 ここから回想に入ってみるとしよう。 これが俺が衣装を作るまでの過程である。 『ねぇ、この箱何?』 俺の荷物を整理していた鈴仙が、それを持ってきた。 『あー、それアニメDVDの箱…そっか、服作る資料で持ってたんだったなぁ…』 『え?この可愛い服作るの?』 やはりこの時も鈴仙に驚かれた。 可愛いかどうかは置いといて、 『まぁ…一応は作る予定だったんだけど…着る人がなぁ』 ここに来てから、作るつもりなんて欠片もなくなった。 『じゃあ、作ったら私が着ようか?』 俺の心臓が飛び跳ねました。 萌えとか胸キュンなんてチャチなもんじゃ断じてねえ。 もっと恐ろしい、彼女の片鱗を味わったぜ… 『どうかした?』 『あ、いや、まぁ作る予定は未定って事で…』 こうして、俺はクリスマスまでに彼女の服を作ることを決意したのである。 それは(ピー)月だったんだが… まぁ、そんなこんなで四苦八苦しながら、俺はクリスマスの当日を迎えてしまったわけだ。 だが、最高に「ハイ!」ってやつだアアアアアアハハハハハハハハハハーッ! 「…何でそんなに壊れ――はしゃいでるの?」 いつの間にか寄っていた鈴仙にジト目で見られていた。 まぁ、向かう途中の森の中で某吸血鬼のように高笑いをしてれば、普通引く。 誰だってそーする、俺もそーする。 「いや、こっちに来てからのクリスマスだし、それなりに楽しみなんだ」 「…あなたって、楽しむことを考えるとあんな高笑いをするの?」 「…普通はしないけどな」 そんな他愛のない会話をしながら、俺と鈴仙は紅魔館までの道を辿った。 一応両方のプレゼントをスタンバイしてある。 一つは交換会に提出するプレゼント、もう一つは隣にいる彼女に渡すものだ。 攻守において完璧だ! …守は置いといて。 「ところで、鈴仙は何を用意したんだ?」 「ん、私は――」 そこで鈴仙は言葉を切って 「内緒」 と舌を出していった。 あぁ、もう可愛いなこんちくしょう 「…あなたは服を用意したんでしょう?」 「まぁ…普通の人が着れるサイズを…」 基準にしたのは適当だけど…。 むしろ、鈴仙の衣装を作るので必死だったので、こっちのほうは手抜きなのは内緒だ。 二着作ったので、出来ればそれで勘弁してほしい。 普通の体格サイズと幼女体格サイズ。 クリスマス会が始まり、何時間も経過した。 そんなこんなで、ドンチャン騒ぎだ。 進行が適当だからこそ、騒ぐときに騒ぐ、それが一番だ。 「さ、そろそろプレゼント交換でもしましょうか」 と、人形遣いの鶴の一声で、ようやく、プレゼント交換までに至った。 「…さーて、何が当たるのか…」 出来れば俺の提出したプレゼントは、大きい子と小さい子がいる場所に行くことを祈ろう。 「十三番はどれ?」 吸血鬼のお嬢様が番号を呟きながら選ぶ。 こういうとき、自分の提出したものが自分の所に帰ってきてしまうと悲惨でしかない。 俺の番号は十六番、俺のプレゼントは十九番だ。 「えっと、十三番っとは」 そうして探していると、やたらと軽いプレゼントが当たった。 いや、袋は軽いのだが中身がちょっと重い。 鉛とか、そういうものが入っているようだ。 「あぁ、私のね」 嫌な予感がした。 「…永琳さんの?」 ごめんなさい、何となく中身が分かってしまいました。 「薬…ですか?」 「そう、滋養強壮剤」 何が目的で仕込んだんですか、あなたは? つーか、こんなの貰っても普通は嬉しくない。 「不満?」 「いや、貰えるものは貰いますが…」 「ふふ、じゃあ、帰ったら私の部屋に――」 「師匠!」 顔を真っ赤にした鈴仙が来ていた。 「あらあら、妬けるわね」 この人の本気がどこまでなのか分からない気がした。 「うぁ、藁人形だ!アリスだな?これ入れたの!」 「誰よ?お守りなんて入れたの。巫女に送りつけるなんていい度胸じゃない」 「って、私ナイフ貰ってもしょうがないわよー!お酒ーお酒ー!」 「…本は嬉しいんだけど…男性の写真集…誰?」 「お肉ー」 他の人達はそれはそれで、楽しんでいるらしい。 「あー、服だー!藍さまーお洋服ー!」 どうやら思惑――あった訳じゃないが、どうやら希望は叶ったらしい。 八雲紫の式とその式ならば、ちょうど服もぴったり合う…か分からないけど 多分大丈夫だろう。 「なぁ鈴仙、ちょっと外に出ないか?」 宴もそこそこ落ち着いた所で、目的の彼女を呼び出す。 きっと最後のほうで何かあるのだろう、吸血鬼のお嬢様が含んだ笑いをしていた。 それも考えながら、俺は彼女を誘う。 「ん、まぁいいけど」 「決まりだ。じゃ、行こうか」 彼女の手を引いて、外に出る。 冬だからか、外に出ると冷気が俺たちを包み込んだ。 「ほら、大丈夫?寒くない?」 鈴仙が俺のほうを心配そうに見上げた。 そう言いながら、見た感じ彼女のほうが寒そうに見える。 「…大丈夫。だけどお前の方が大丈夫か?」 「うん、私は大丈夫」 そいつは重畳だ。 こう寒いと、意識がなくなることはない。 眠くなる可能性はあるけど。 「ほら、プレゼント」 「…え?」 紙袋を受け取った彼女は目を丸くしていた。 うむ、予想通りの反応だ。それがおかしい。 「…え、えと、これは?」 「クリスマスプレゼント。 …まぁ、本来はサンタクロースが渡すものだけど 今回は俺で勘弁してくれ」 「ん…うん!」 まぁ、彼女が喜んでくれたならこれでよし。 「…別に大事にしなくていいから、一回くらいは着てもらいたいな」 「えぇ、だってこんな素敵なら、一回は着てみたいしね」 それだけ聞けば十分だ。 「あ…私、プレゼント返せない」 「大丈夫、大丈夫。俺のプレゼントを貰ってくれるだけで」 単なる自己満足に過ぎないが、それでも俺は十分だ。 彼女に贈り物をしたって言う事実だけで… 蛇足―― 翌日、十二月二十五日。言うなればこっちが本当のクリスマスである。 昨日は結局、外にいたせいか軽く寒気がした。 「寒い…」 良い子の枕元にはサンタクロースがプレゼントはあるらしいが この年でそんなものを貰っても―― 「お、おはよう」 目を覚ますと、枕元には俺の作った衣装を着込んだ鈴仙が座っていた。 …… ゴシゴシ …… ゴシゴシ ……!? 「魔法少女リリカルれーせん」 思わず呟いてしまった。 ここまで可愛くなると、作った甲斐があるというものだ。 「え?」 「…あ、いや、なんでもない…着心地は?」 「うん…ピッタリだけど…ちょっとだけ、胸のほうがキツいかな?」 確かに、その辺のサイズは分からなかったので、ごまかし程度に作ってしまったが。 よく見ると、ちょっとだけ胸が強調されてるように見える。 そこだけ見ないように、顔を背ける。 今絶対に鏡を見れない。 「着てくれたのは嬉しいんだ。っていうか、すっげえ嬉しい」 「ど、どういたしまして」 微かながら、彼女の顔は赤い。 ぎゅっ… 「あーもうかわいいな鈴仙は!」 「う、うぅ…」 微妙に鈴仙にとっては羞恥プレイかもしれない。 でも、俺はこんなに幸せだった。 こんなクリスマスはありかもしれない。 サンタに感謝…ってね。 後書き ===衣装の裏=== オレは……生き返ったんだ 故郷… プロポーズスレでみんなと出会った時…門板のスレを裏切った時…にな… ゆっくりと死んでいくだけだった…オレの心は生き返ったんだ…みんなのおかげでな……… 幸福というのはこういうことだ………… これでいい 気にするな…………… ===衣装の裏ここまで=== とりあえず、いつものパターンで完成させました。 補足 ※鈴仙の衣装というのは某魔法少女をイメージしたものである ※鈴仙のリリカル姿を描いてみたは良いが、あまりにも適当すぎたのでボツった ※コスプレイヤー姉に衣装を作った…。そういう時期も私にはありました… 4スレ目 149 『鈴仙!俺を狂わせてくれぇっ!!!』 正気でも狂気でも、幸せであればいいじゃない。 みんなまったり行こうよ。 避難所 52 避難所 33を受け ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「○○さん、また酒にやられたんですか?」 鈴仙が心配そうに覗きこむ。 「どうやらそうらしい。おかしいよなぁ…今日はあまり飲んでないのに…」 そう答えると、鈴仙は少し考えた後…… 「そうですか…じゃあここでは満足した治療も出来ませんので永遠亭に行きましょう」 と、言って○○の手をとった。 「え?いや、ちょっと、そんないいって」 「いいえ、悪化したらどうするんですか。強制ですよ」 そう言って鈴仙は○○の目をじっと見た。 「え、ちょっ!顔近いって!!、ってその妙に紅い目は何…を……」 鈴仙の目をしっかりと見つめてしまった○○、あえなくダウン。 「ふふふ……」 -永遠亭 鈴仙の自室- 「……うぅ~……ってハッ!!」 ○○が目を覚ますとそこは永遠亭っぽいところだったが、まだ一度も入ったこと無いところだった。 「ココは……?」 「あ、気がつきましたか」 不意に声が聞こえ、その主のほうを見ると…… 「おわぁっ!れ、鈴仙……なんで一緒に寝てるんだよ!?」 鈴仙が○○の横で寝ていた。 「あ、すいません……○○さんの治療をしていたら眠くなってしまって……その……気を害したのならばごめんなさい……」 そう言うと鈴仙はしゅんとしてしまった。 「いや!そんな気を害したとかそう言うんじゃなくて……む、むしろ暖かくて良く眠れた……って何を言ってるんだ僕はっ!!」 「え……?」 あわてて否定したおかげで余計なことまで言ってしまう。 でも鈴仙は何故か赤面して黙ってしまった。 つられて○○も黙ってしまう。 ………… 半刻ほどして鈴仙が口を開いた。 「あ、あの○○さん……今日は……その……もう少し……このままでもいいですか?」 「え?……あ、ああ。いいよ……」 「本当ですか?ありがとうございます」 「いや、別にいいよ。僕も……まぁ、うん……」 ……結局○○は永遠亭で一夜を過ごすこととなり、翌日鬼と天狗に折檻をもらったとか…… な ん だ こ り ゃ 全然文としてまとまってない。 文に文章のまとめ方を習ってきます…… [森]λ… 4スレ目 700 「一人で過去を背負うことなんて無い。俺が死ぬまで、隣で支えるから。 ・・・迷惑なことなんてあるか、断ったって傍にいてやるさ。」→鈴仙 うどんげは好きな相手に告白されても、迷惑がかかるからって涙ながらに断りそうなイメージを幻視した。 よって2行目を追加したした次第。 5スレ目 161 「なあ鈴仙」 「なあに?」 「押し倒していいか?」 「………ごめん、今なんて?」 「いや、『押し倒していいか?』って言ったんだが」 「……………」 「………駄目か?」 「…………だっ…ななな何、何言ってるのよ貴方って人はぁー!!」 パァーン 「ふぐぉッ!」 あ~っと! 鈴仙くんの平手で ○○くん ふっとばされた~! そのまま鈴仙は文字通り脱兎の如く走り去ってしまった。 「くっ…駄目だったか……」 「あらあらウドンゲもウブねぇ。 まぁこれだから貴方たちを見てるのは楽しくて堪らないのだけど。」 「見てないで助けてください永琳さん……姫様もいらっしゃるんでしょう?」 「あら、バレてたの。流石ねぇ」 「もういい加減慣れました。痛つつ……」 「それにしても貴方にしては随分積極的だったじゃない。何かあったの?」 「いや、なんだかそういうのが流行ってるらしくて……」 「ふぅん。外では変なことが流行ってるのねぇ。」 一方、うどんげはというと……… 勢いで走り去ったものの何処へ行ったらいいかわからず、永遠亭に戻ってきていた。 しかし帰って来たはよかったが、顔を合わせづらかったので庭でうろついているところだった。 「はぁ…はぁ…まったくもう、あの人はいきなりなんてことを……」 ふと、○○の行ったことが反芻された。 「でも………彼にだったら………いい、かも………」 「ふーん、成程ねー」 「ッッッ!!! て、てゐ!!!」 突如、竹林の影から不敵な笑みとともに白兎が現れた。 「い、今のはちが…そういう意味じゃなくって!」 「ふふーん、意外と大胆なんだねぇ。みんな聞いて聞いてー!鈴仙ちゃんがー」 「うう、やめてー。」 時既に遅し、てゐに知れた時点で、その話は永遠亭の全員に知られたと同じことを意味するのだった。 その後○○と鈴仙の間には気まずい空気が流れていたが、 その他大勢はいつ押し倒すのかと期待に胸を膨らませていた。 ちなみに鈴仙自身もちょっと期待をしていたのは秘密だ。 すまん、今まで書いたこと無いのに勢いだけでやってしまった。 しかもイチャイチャできてない上に微妙に流行が終わってる気がする・・・ 5スレ目 199 遅れたけど、つまりこういうことですか? 「鈴仙。嬉しい話があるわ」 いつものように鈴仙と採取してきた薬草の仕分けをしていると、八意永琳大先生がにこやかな顔で入ってきた。 イナバ達はそこらではしゃぎ回り、輝夜様はたまたま野草集めにやって来た妹紅と鉢合わせ、殺し合いの真っ最中。 至って平和な永楽亭の昼下がりである。…一区画を除いて。 「え、なんですか師匠? 良い話というのは」 「貴女、胸が大きくなっているみたいよ」 「へぇ、そうなんですか……って、はいぃぃ!?」 全く想像してなかった話に顔を赤くする鈴仙と、あまりにも脈絡の無い話に思わず頭を柱に打ち付ける俺。 「大体従来比にして…2、3センチは増量ってところかしら」 「いや、その、嬉しい…のは嬉しいんですけど、…師匠なんで知ってるんですか?」 「鈴仙、乙女には誰にも教えたくない秘密が十や二十くらいはあるものなのよ(はぁと」 「それ、多すぎやしませんか永琳さん…?」 こちらにウインクする永琳先生。…ツッコミ所満載だが、敢えて黙っておくのが身の為である。 「因みに、今の貴女のトップは8じゅ」 「わーっ! わあぁぁーッッ!!」 「そうねぇ…毎晩のように彼と励んでいたらそうなるのも当z」 「わぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!」 必死に言葉を遮る鈴仙。これも弄られ役としての宿命か。というか師匠、見てるんですか? …なんか関係を知られているということが意識されて、顔が赤くなる。 相変わらず庭からはイナバ達の楽しげな声が響き、雄叫びや爆音が聞こえる。 「カァァァァァァァァァァグヤァァァァアァァァァァァッッッッ!!!!!!!!」 「モオォォォォォォォォォォコオォォォォォォォォォォッッッッ!!!!!!!!」 ……庭の一角は無事だろうか? クレーターとか出来てないだろうか? しかし凄い叫び声である。魂に火をつけろ? 「最近鈴仙ったら身体検査もさせてくれないんだから…久しぶりに驚いちゃったわ」 「師匠…あれは普通『身体検査』と呼称される行為とは違うと思います…」 どうやら、俺の想像を超える「アレ」な行為が日夜繰り返されていたらしいようなそうでないような。 まぁ今はその「身体検査」をするのは俺の役割だけどなうはははは… …と師匠に言ったら、一抱えもある座薬を捻じ込まれたのは苦い記憶だ。 なんだか危険な世界に目覚めてしまいそうです、あぁん。 …外からはイナバ達の声がしなくなってきた。どうやら総員退避命令が下ったようである。 「アァァァァァカシックゥゥゥ・バ○タァァァァァッッ!!」 「ムウゥンヒィィリング、エ○カレーショォォォンッッ!!」 …段々両者が危険な世界に転がり落ちて行っているようだが、毎度の事なので黙っておく。 結局薬草の選別をしたり、妹紅を連れ帰りにやって来たが諦めた慧音と共にお茶を飲んだりしてその日は過ごした。 夜ですよ …俺と鈴仙は、一つ同じ布団の中で横になっている。 彼女の長い髪が、俺に絡まっている。くすぐったくて、何となく心地よい。 外には蒼い月。月光が優しく降り注ぐ、静かな夜である。 「科学忍法・火○鳥!!」 「マ○クロウェーブ…来るッ!!」 …前言撤回。今もなお激しい闘いが繰り広げられていた。 もはやネタの披露合戦という様相を示してきているが。というか姫様、それは幻想郷的にOKなの? 月に関係あるとはいえ… 色々考えることはあるが務めて頭の中から消し去るよう努力する。つーきーの光にみーちびかーれー、なんーどもー、殺しーあうー。 「……ねぇ?」 …俺の腕に頭を乗せていた鈴仙が、こちらに尋ねてくる。 「今日も…するの?」 真剣な目で、そう問う。 返事の代わりに、鈴仙の顔をこちらに近付け、唇を奪う。 「ん……んっ……」 そのまま腰を引き寄せ、手の平を(続きを読むには泳ぐキンギョでやみなべパーティー。飛んでもNothing~) 5スレ目 368 「えーりんって、すげー美人だよな」 「はぁ? いきなり何言い出すのよ」 「ムッチムチでボインボイーンだし。おまえと正反対だな。それでも弟子なのか?」 「失礼ねッ! わ、私もその内、ぼ……ぼいんぼいーんになるわよ!」 薄い胸を張って、うどんげは声を張り上げた。 「で、その内って、いつ?」 「その……いちねんご?」 「第二次成長期終わってんのに育つわけないだろ馬鹿。一生その洗濯板を抱いてろ」 「…………」 恐ろしく狂った目つきをしたうどんげに頬をつねられる。凄まじい力だ。たぶん千切れる。 「いや、俺が言いたいのはそういうことじゃなくてですね」 必死の命乞いと土下座の甲斐あって解放してもらってから、俺はうどんげに言った。 「胸を揉んでもらえば育つって言うだろ? 新聞でも話題になってたくらいだし、大丈夫だって」 「も、揉む!?」 ちなみに、話題のその人物はイニシャルA・M。いぢられキャラばんざい!! 「なんだったら俺が揉もうか?」 「揉むなッ!」 「またまたそんなこと言って、よーしパパ押し倒しちゃうぞー」 「揉むなッ!触るなッ!押し倒すなッ!!」 「と、怒りながらも内心ドキドキなうどんげでした」 「か、勝手なモノローグ語るなッ!!」 ちなみに、本当は内心ドキドキでちょっぴり期待してたのはここだけの話。 5スレ目 622-623 「最近、胸が苦しいんですよ」 薬品棚の整理をする俺と鈴仙。 ここは永遠亭。 いつの間にか幻想郷に入り込んでしまった俺を、保護してくれた所。 カバンの中に化学Ⅰ・Ⅱなんて物が入っていたせいで、 俺は今、ここで八意永琳という人の、助手No.2として働いている。 「太ったんじゃないか?」 「ああっ、ひどいですね。 太ったんだったら、絶対幸せ太りですから、責任とって下さいよ?」 「もちろん。地獄の底まで責任とってやるよ」 そしてこの娘が鈴仙。 助手No.1にして、俺の恋人。 俺としても、まさか幻想郷で恋人ができるとは思っていなかったけれど、 この娘の熱烈なアタックに、めでたく恋人になった。 グラッ 突如、大地が揺れた。 地震だ! そう思う間もなく、俺と鈴仙は、薬品棚の下敷きになっていた。 う……。 服に付いた薬品の冷たさで目が覚める。 どのくらい経ったのか。 そうだ、俺たちは地震で下敷きになって……。 はっ! 「鈴仙? れいせーん!?」 「こ、ここです……」 見れば。 向かいの薬品棚に、下敷きになっている鈴仙が見えた。 「待ってろ! 今助けるから!」 薬品棚から這い出す。 俺は幸い、怪我はないようだ。 すぐに鈴仙に駆け寄り、薬品棚を押しのけて抱き起こす。 「大丈夫か?」 「大丈夫、と言いたい所ですが……。 少し、右の足首をやってしまったようです。 部屋まで、連れて行っていただけませんか?」 「よし、このまま連れて行くから」 その状態のまま、お姫様抱っこのように抱き上げる。 鈴仙は痛みのせいなのか、はたまたこの状態が恥ずかしいのか、 顔を赤くしながら、俺の首に手を回す。 「よし、行くぞ!」 そういった瞬間。 プツッ、と ブレザーのボタンが、弾け飛んだ。 「んっっ!」 右手で、恥ずかしそうに胸を押さえる鈴仙。 しかし、片手で押さえきれるはずもなく。 指の隙間から、慎ましやかな胸の谷間が顔を出している。 それでも、左手はそのままなのは、 俺を気遣っているのか、自分を重く見せたくないのか。 「は、早く行って下さい!」 「イエス、サー!」 そして。 ボタンを撒き散らしながら。 俺は、鈴仙の部屋までひた走った。 鈴仙の部屋。 そこは、惨状だった。 ぬいぐるみや薬品が辺りに散乱し、そこに本が折り重なって足の踏み場もない。 それは、もちろんベッドも例外ではなく。 「これは……、ひどいな」 「そうですね……。こんなときに限って師匠もてゐも姫様もいませんし、 どうしましょう……?」 そう。 俺たちが恋人になってから、 やたらと構ってくるのがここの人たち。 今日も、 「2人っきりにしてあげるわ」 と言って、イナバたちを連れてみんなでピクニックへ行ってしまったのだ。 「とりあえず、俺の部屋に行こう。 まだ俺はここに来て日が浅いから、物がほとんどない。 ベッドも、無事なはずだ」 そう言って、鈴仙を抱きかかえたまま、俺に与えられた部屋へと向かう。 思ったとおり、俺の部屋は大丈夫だった。 ベッド以外に物がほとんどないのは考え物だが。 「ほれ、鈴仙、大丈夫か」 「はい……」 鈴仙をベッドに寝かせる。 そして、水を汲んできて、濡らしたタオルを足首に巻いた。 少しは冷えるはずだ。 「すみません……」 いつにも増して、弱々しい鈴仙。 「気にするな。お互い様だ。 俺たちは、恋人だろう?」 「ありがとう、ございます……。 あの、手を握っていて、もらえませんか? あなたに触れていると、凄く安心するので……」 「お安い御用だ」 鈴仙の手を握る。 その鈴仙は、笑顔を浮かべると、 ほどなくして、規則正しい寝息を立てはじめた。 「寝られるのなら、痛みはひどくないんだな。 早く元気になれよ、鈴仙」 頭を撫でる。 立ち上がって、さっきの薬品室でも整理してこようと思った時、 クラッ 眩暈がした。 「……え?」 床がスローモーに迫ってくる。 そう言えば、動悸も激しい。 もしかしたら、さっき薬品をかぶった時に、風邪でもひいたか? そう思いつつも、 俺の頭が、大地に着くと同時に、 意識も、闇へと沈んだ。 「う……」 そう言えば、今日は気絶してばかりだな。 そう思いながら目を開くと、 「良かった……。 本当に、良かったです……っ」 眼の前に、泣きじゃくる鈴仙の顔があった。 そう言えば、いつの間にか自分のベッドに寝ている。 「あー、鈴仙?」 「3日間――、3日間も意識不明だったんですよ。 あんまり心配させないで下さい!」 「俺、どうしたんだ?」 「あなたのかぶった薬品、致死性の薬品だったんですよ! 皮膚からだから、死ぬことはないだろうと師匠は言ってましたけど、 もう、心配で心配で……。 解毒薬を作るには時間もかかりますし、 その間に何か起こらないか、気が気じゃなかったんですから!」 「悪かった。 それにお前もネグリジェだし、治りきってないのに看病してくれたんだな」 「え、べ、別にこれは……」 腕を振る鈴仙。 落ち着いて観察してみると、鈴仙の服はネグリジェにカーディガンを羽織っただけの簡単なもの。 ただ、ネグリジェはシルク製の物凄く高そうなものだが。 そこに現れる永琳。 手にはお盆を持ち、その上にはお粥と薬が何錠か乗っているのが見てとれる。 「お邪魔だったかしら」 「いえ、大丈夫ですよ」 「ごめんなさいね。地震が起きるなんて思わなかったから」 「まあ、俺の体も今のところ大丈夫そうですし、いいですよ」 「ふふふ、それにしてもうどんげったら凄かったわー」 テーブルにお盆を置くと、悪戯っぽい口調になる永琳。 止めようとする鈴仙。 だが、永琳の口は止まらない。 「うどんげったら、あなたが致死性の薬品をかぶったのを聞いて、 『○○、死にませんよね! もし死んだら、師匠を刺して私も死にますから!』 って。凄いでしょう?」 「うう……師匠……ごめんなさい」 「愛されてるわね。嫉妬しちゃうわ」 「ははは。自慢の恋人ですから」 「あら、妬けちゃうわね。では、邪魔者はこの辺で退散しようかしら」 音もなく部屋を出て行く永琳。 あとには、ばつが悪そうな鈴仙。 「嫌な女だと思ったでしょう?」 「いや、嬉しいよ。そこまで思ってくれているんだから」 「本当?」 俺の顔を覗き込む鈴仙。 「ああ、本当だ。 それより、腹が減った。そのお粥を食べさせてくれないか?」 「はい!」 途端に元気になる。 そして。 「はい、あーん」 「いや、自分で食べれるって」 「『食べさせてくれないか』って言いましたよね。 男らしくないですよ」 「いや、あれはそういう意味じゃ――」 「あーん」 どうやらやめる気はないらしい。 覚悟を決めて、俺も口を開く。 「あーん。 もぐもぐ。うん、旨いぞ」 「では、もう一口。 あーん」 「あーん」 こうして、鈴仙がお粥がなくなるまで食べさせてもらった。 だが、錠剤まで飲み終わっても、鈴仙が部屋を出て行く気配がない。 それどころか、衣擦れの音とともに、カーディガンを脱ぎ始めた。 「鈴仙?」 「あなたの症状を早く治すには、添い寝が良いと師匠が言っていたんです。 本当は全裸のほうが効果あると言っていたんですが、 それはさすがに恥ずかしいので、ネグリジェで我慢してください」 「ちょ、ちょっと待て! おおおお前、いつもパジャマ派だろう!?」 指摘箇所が違うだろう。 落ち着け、俺。 「ええ、でも薄絹の方が効果があると師匠が――」 そう言いながら、一歩一歩ベッドに近づく鈴仙。 胸がふるふると揺れているのが、ここからでもわかる。 そしてその頬は、恥ずかしそうに朱に染まっている。 「いやいやいやいや、それ絶対騙されてるから。 っていうか胸がなんでそんなに揺れてんねん」 やばい。 相当俺もテンパってきている。 「胸、大きくなったんです」 「え?」 いきなりの方向転換についていけない俺。 「苦しくなったの、大きくなってたんです。 胸に合うブラジャーがないのでノーブラですけど、失望しないで下さいね」 そう言いながら、俺のベッドに入ってくる鈴仙。 「それから。 騙されていても良いんです」 「は?」 「騙されているから、こうして、あなたと一緒にいられるんですから。 私と一緒は、いや、ですか?」 そんなことを言われて。 いやだと言える恋人がいるはずもなく。 「そうだな。2人で騙されようか」 「ええ。なるべく長く騙されましょう」 「それもなんだか変だけどな」 「ふふふ、そうですね」 そして。 俺と鈴仙は。 1つの枕で抱き合いながら眠りについた。 後日、てゐの写真により、75日ほどからかわれ続けたけど。 5スレ目 940 この前製薬の材料集めだとかで困ってたうどんげ助けたら、 お礼に永遠邸ですき焼きやるんでどう? ってうどんげに誘われたんだ。 うどんげの手料理を食せるとはまさに至福。 これはアレですね? そろそろ俺の想いも成就してOKってことですよね期待しますよ!? 「おじゃましまーす」 「いらっしゃーい、遅かったですね、もう大体できてますよ」 部屋の真ん中に鎮座する鉄板の中にはくつくつにゃーにゃーと色とりどりの食材が踊っている。 おおこれは美味そう……って、なんか赤いの多いんですけど。 「……すき焼きににんじん入れるか?」 「へ?入れないの? うちではたいてい入ってるけど?」 「(そりゃウサギのためだろ、うどんげはウサギなのかよくわかんないけど) うちは入れないなぁ。肉、ネギ、白菜、焼き豆腐、しらたきぐらいで。 あとはラストにうどん食うぐらいか」 ボッ 「え……わ、わたしっ!?」 「え、いや、俺そんなこと言ってな 「え、えとえと、悪くないですけどもうちょっと雰囲気良い場所でって私は何を言って ぷすっ ? 今の何の音? なんか首筋が チク ッ て し た け 「あらあら、私の可愛いオモchじゃなかった弟子に手を出そうなんて1200年くらい早いわ」 っていう声と共にブラックアウトせめてうどんげの手料理食わせてほしかった △ (・∀・) ってとこまで幻視した (νν …………アレ? 幻視だったんだよねヤゴコロ先生? )ノ 5スレ目 945 自分はこういうのを幻視した。 あー、でも文章長いし、幻視力足んないな……。 口調が変なのは、酔っているからということでご勘弁。 ちなみにうちはにんじん時々入ってました。 ====== 永遠亭で留守番を頼まれた。 なんでも、うどんげ以外は泊まりでピクニックに行くらしい。 家事を2人で分担して1日を過ごし、夕食の時間。 「夕食できたわよー」 食堂の方から声がする。 「おおっ、今日はすき焼きか」 食堂へと行くと。 テーブルの上に鎮座ましましているのは、紛れもなき鉄鍋。 肉の焼ける香ばしい匂いが伝わってくる。 「それだけじゃないのよ、じゃーん!」 そう言ってうどんげが取り出したのは、 「ああっ、それは月世界!?」 「そ。師匠の秘蔵のお酒。しかも純米大吟醸古酒千年物。 今日は飲むわよー!」 「って、良いのか?」 「いいのよ。大体、私を置いてくなんて、やってらんないわー!」 俺が横に座ると、 コップで酒をくいくい飲みだすうどんげ。 俺もご相伴に預かりつつ、すき焼きに目を移すが。 「にんじん多いな、おい」 「あ、ごめん。 ついつい兎用に作っちゃった、えへ」 すでに相当顔が赤いうどんげ。 これは、かなり酔ってるな。 「まあ、いいけど」 桜形に切られたにんじんを1つつまみ、口に運ぶ。 うん、柔らかく煮えてる。 「あー、にんじんは私が食べるのー!」 俺がにんじんを口にしたことに、不満を表される。 いや、そんなこと言われても。 「あー、今から食べればいいのかー」 「え?」 そう言うと、俺の唇に唇を合わせて。 舌を俺の口に割り入れて。 にんじんを奪い去るうどんげ。 「んー、おいしー」 「お、おい」 「このほうがいつも食べるよりおいしーなー。 ねえ、今から全部口移しで食べさせてー」 とろんとした目でおねだりがくる。 やばい。 ちょっと幼児退行気味のうどんげ、可愛い。 ほんのりと赤くなった肌が、それに拍車をかけている。 「なら、それに見合うだけのことをうどんげがしてくれたらいいぜ」 こんな言葉が出てくる辺り、俺も相当酔ってる。 俺も強い方じゃないもんな。 そんな俺を、うどんげは見つめると、 「うーん、わかったわ……。 あーん、で食べさせてあげるのと、 口移しで食べさせてあげるのと、 私ごと食べるの、どれがいい?」 爆弾発言をかましてくれました。 「え、いや、あの」 「んー、でも、私を食べるときは私だけを見てて欲しいし、 口移しでいいわよねー」 そう言うと、焼き豆腐を咥えて、俺にキスをせがむうどんげ。 そうして、2人で食べさせあったすき焼きは、 いつもの3倍の時間がかかったけど、 大変おいしゅうございました。 そして、夜も更けて。 鍋の中も総ざらいしたところ。 「ねえ、このおつゆどうしてる?」 「うちか? 大体うどん食べてるな」 「ええっ、私食べられちゃうの!」 「違うわー!」 おでこに、こつん。 悪戯がばれたような笑顔のうどんげ。 2人とも、酔いはまだ醒めない。 「えへへ~」 「ここはどうしてるんだ?」 「兎たちはそんなに食べられないから、いつもこれで終わり」 「そっか。勿体ないな」 「でも、そっか、うどんなのね。 ちょっと持ってくるね」 そう言って、席を立つうどんげ。 だが。 まだ酔いが醒めてない状態で動き出せば。 「きゃっ」 ガタッ 案の定。 うどんげはテーブルの足につまづき、転んでしまった。 しかも、その衝撃で鍋が大きく揺れ、汁が飛び出してしまっている。 「大丈夫か!」 「うん、大丈夫。でも――」 俺に抱きかかえられたまま、テーブルの上を見やるうどんげ。 「おつゆ、こぼれちゃった……」 確かに、つゆがこぼれて、うどんげといわず、俺といわず、あちこちに飛び散っている。 「ごめんなさい……」 しゅん、と俯かれる。 そんなうどんげが可愛くて、 「こうすれば、大丈夫だ」 うどんげの首筋にかかったつゆを一舐め。 「ひゃっ! ……え?」 「うどんは食べられなかったから、代わりにうどんげをいただくとするさ」 「やっぱり私、食べられちゃうんですねー。 でも、1人だけ食べるのはずるいですから、 私もあなたをいただきますよー」 そう言って、俺の頬をすっと舌が撫でる。 その夜は、2人でずっとあちこち舐めあっていたのだった。 次の日、永琳に酒を飲んだのがばれて、しこたま怒られたけど。 5スレ目 946 945これしか思いつかなかった 永遠亭で留守番を頼まれた。 なんでも、うどんげ以外は泊まりでピクニックに行くらしい。 家事を2人で分担して1日を過ごし、夕食の時間。 「夕食できたわよー」 食堂の方から声がする。 「おおっ、今日はすき焼きか」 食堂へと行くと。 テーブルの上に鎮座ましましているのは、紛れもなき鉄鍋。 肉の焼ける香ばしい匂いが伝わってくる。 「それだけじゃないのよ、じゃーん!」 そう言ってうどんげが取り出したのは、 「ああっ、それは月世界!?」 「そ。師匠の秘蔵のお酒。しかも純米大吟醸古酒千年物。 今日は飲むわよー!」 「って、良いのか?」 「いいのよ。大体、私を置いてくなんて、やってらんないわー!」 俺が横に座ると、 コップで酒をくいくい飲みだすうどんげ。 俺もご相伴に預かりつつ、すき焼きに目を移すが。 「にんじん多いな、おい」 「あ、ごめん。 ついつい兎用に作っちゃった、えへ」 「箸置けぇーー!」 「え?え?」 「加藤家、家訓!!」 以下略 6スレ目 255 「はぁはぁはぁ……」 俺は逃げている。 理由は簡単、妖怪に追われている。 遊んでいた因幡の子達がいた。 そしてその子達を狙う妖怪がいたので、少し挑発して俺を追うように仕向けたから。 まあ、その隙に因幡の子達は逃げてくれたので良しとしよう。 「しまった……がぁ!」 走っている途中、石に躓き転けてしまった。 そして後ろから妖怪にその大きな爪で切られる。 かなり深い傷みたいだ。 血が面白いように流れている。 これはやばいかなぁ。などと思う。 まあ、最後に因幡の子達を助けられたから良いか…… そう思った時だった…… 「大丈夫ですか! ○○さん!!」 「れい、せん?」 彼女が来てくれたのは。 彼女が来てからは、あっと言う間だった。 俺が必死に逃げていた相手がものの数秒で倒される。 なんか複雑だ…… 「○○さん!! 大丈夫ですか!?」 鈴仙が俺に呼びかける…… 「あーなんかもう無理っぽい」 背中からかなりの量の血が出ている。 それでも俺は答える。 「そんな……なら今すぐ治療しますから頑張ってください!」 彼女は泣きそうな顔で言う。 「たぶん、無駄だと思うよ」 俺はそう言う。 彼女も解っているはずだ、俺がもう助からない事は…… 彼女の師匠の永琳さんが居れば話は別だと思うが居なものはしょうがない。 「最後だと思うから言っておくよ……」 「最後なんて言わないでください!」 彼女が俺の言葉に反応する。 でも、それを無視して俺は自分の想いを告げることにした。 「鈴仙、俺は君のことが好きだ。初めて出会ったときから好きだった。」 「えっ?」 彼女は目を見開く。 「わ、わたしは「いや言わなくていい」え?」 そして泣きながら言葉を発しようとしたのを俺はさえぎる。 答えは解っている。断られる、きっとそうだから。 そんな最後は惨めすぎるから、だから俺は返事を聞かない。 「結果は解っているから。だからいい。」 彼女はそれでも何か言おうとしてくれる。 「でも!」 そんな優しい彼女がたまらなく愛しく感じる。 だから彼女に向けて精一杯優しく微笑む。 そして最後に告げる…… 「ただ覚えていて欲しいんだ。こんな奴が居たって事を……」 その一言を最後に俺の意識は途絶えたのだった…… 6スレ目 312 「月には兎がいるって、小さいころ教えられてさ。 信じてたんだよなぁ。 だから月で一人餅をつく兎が可哀想で、小さいころからよく月眺めてたんだ。 その習慣かね。今でもこうして月の綺麗な夜には、一人で酒を飲みながら眺めるのさ。 なんでかって? なんでだったかな……まぁ、たぶんそうしてやれば月の兎も寂しくないと思ったんじゃないかな。 何しろ子供の考えることだからな。 ま、なんにせよ、これからはお前と二人で呑みたいね、月のウサギさん。 ………… あぁ、伝わりにくかったか? 一世一代の愛の告白のつもりだったんだけどな。 じゃあ改めて。 好きだ鈴仙」
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鈴仙7 12スレ目 805 うpろだ882 「はっ、はっ、ふぅ、はぁ」 天狗の山にこんなものが居るとは、思わなかった 油断していたわけではない、弾数も豊富に持ってきて 兎だからか、そして冬前にうろついていた自分がいけなかったのか ともかく、背後から迫るソレから逃げる事は、叶いそうになかった 師匠に頼まれて天狗の所まで薬を届けにいったんだ その帰り、捕食者特有の、威圧感のようなものを感じた 振り向けば 映画の中でしか見る事の出来ないような大蛇 胴の太さは大木のそれ、頭だけでも子供ぐらいの大きさはあった 「な―――ッ!?」 とりあえず走った すると蛇はしゅるしゅると地面を這い、後を追ってきたのだ 苦し紛れに弾幕を、しかし蛇の皮膚は弾の一つでさえ通さなかった 「どれだけ、硬いのよっ!」 懇親の力をこめて放った弾丸も、その大蛇には意味を成さない よく見れば蛇は皮が余った状態、つまり・・・痩せている 腹が減っている蛇から逃れられる気がしない もう少しで追いつかれる、と思った時、へびの動きが止まった 「・・・え?」 蛇はZのように身体を曲げると、一気に身体を伸ばし、飛びかかってきた 「冗談じゃ無いです、よっ!づぁ!?」 蛇の口は右足を掠った、だけでなく 牙が引っかかって、一瞬で巻き疲れてしまった みしみしと、骨の、身体の、きしむ音がした 「たすけ・・・」 私は意識を失った 「ん、ぅ・・・・!?」 夢?いや・・・右足が鈍く痛んでいる それに・・・ここは? 「気がついた?」 「え?あ・・・」 「ここは僕の山小屋だ、君が倒れているのを見つけて保護したんだけど・・・大丈夫かな?」 なるほど、私は生きているわけか・・・それにしても 「御香、ですか?」 甘ったるい匂い、少しきついぐらいだ 「ああ、僕の趣味でね」 早く永遠亭に帰らなければ、そう思って立とうとしたのだが 「あ、れ?」 足に力が入らない?いや、感覚はある 咬まれたせいか?麻痺毒でももっていたのか? 「足は怪我してるみたいだから消毒だけしておいたけど・・・歩くのは無理そうだ」 困った、凄く困った 近くに蛇が居るかもしれないのに、いつまでも居られない 蛇はしつこいと言うし、何より師匠ならこんな傷なら一瞬で治してくれるに違いない 「まぁ良くなるまでいればいい、僕もまだ此処を使うから」 「そ、それは・・・ご迷惑じゃあ?」 「迷惑なら最初から助けないよ、ほら、これでも食べな」 男が差し出したのは、アケビや葡萄、木の実など いや、リスじゃ無いんだから・・・まぁでも兎だし、ありがたく・・・ 「あ、ありがとうございます・・・ん、美味し」 「僕の名前は○○・・・君は?」 「私は・・・鈴仙です」 山小屋に滞在して3日が経った 右足の傷は、恐らく呪いか何かだ 裂傷の上に、圧迫痕がある、それは・・・鱗、そう蛇の身体だ 「蛇縛りとか言う奴かな・・・これは蛇に目をつけられてるってことかしら・・・はぁ」 傷はまったく良くならない、支え無しでは歩く事もできない 右足は、完全に使い物にならなくなっていた それでも、○○さんは色々と気がついてくれて、とても頼りになる あまり起きれない私に色々と面白い話をしてくれる ○○さんは言っていた 冬眠前に食いだめしようとしたのだろう でも失敗した、きっと蛇はその餌を逃すつもりはないだろう、と 一週間も経てばお香の匂いにも慣れてくる そして、その匂いがもつ意味も 「このお香・・・貴方の匂いを隠すためだったんですね」 「・・・やっと気付いたのか」 捕食者特有のにおい、いくら誤魔化そうとも、もう無理だ 「・・・太らせて食べようなんて、最近の蛇は頭がいいんですね」 「まぁ・・・な、冬眠間近で、数ヶ月何も食ってないからな、ご馳走は、美味しくいただきたいじゃないか」 ○○さんの目は、ぎょろりと、動いた 瞳孔は縦に細く、人間のそれとは違う だが、殺気のようなものが、微塵も感じられなかった 「・・・食べないんですか?」 「ああ、食わない」 彼は、はっきりと断言した わざわざ取ってきて栄養をとらせて、なのに、食わないと 「なぜ・・・何故ですか?」 「お前と居る間、短い間だったが・・・情が移ったというか・・・お前を気に入っちまったんだよ」 私は呆気に取られた、だって、蛇が、兎を気に入った? しかも、私? 「笑いたきゃ笑え、蛇が兎に恋するなんて・・・自分でも気味悪いぜ」 彼はいきなり、私の右足を、噛んだ 「!?・・・え?」 足のしびれも、蛇の絞めるあとも、一瞬で 「毒を持って毒を制す、抗体って奴だよ・・・さぁ、これで家に帰れるだろ」 「○、○○さんっ!わたしは「頼む・・・もう限界なんだ・・・俺はお前を食いたくない」 その顔が、あまりに悲しそうだったから その悲しみに、昔の自分を― 永遠亭までの道のりは、憶えていない 気がついたら布団の中だった 師匠には一時外出禁止を言い渡されたり てゐには心配料とやらを要求されたりもした それから一週間ほど過ぎた日 「師匠~お買い物ぐらい・・・」 「駄目よ、ちゃんと検査が済むまで外出禁止、それに買い物ならてゐが行ってるわ」 私はいまだに永遠亭から出ることを許されていなかった 何でも傷口に残ってた毒が面白いから色々検査しよう、と言う事らしい 「師匠・・・私は実験材料ですか?」 「あら嫌だわ、今更気付いたの?」 こんなでも心配してくれてたのか・・・本当に? 「ただいま~」 「あ、お帰りてゐ」 「里でねぇ、面白い話を聞いたよ」 「あら、誰か未知の病気にかかったとか?」 「ぃや、人食いの妖蛇が退治されたんだってさ」 瞬間、悟った・・・きっと彼だ、そうに違いない、と 「ふぅん、蛇なんか血清ぐらいしか出来ないからつまらないわ、食材としてならなかなかだけど」 山に入ってきた里の人間を食べてしまったのか それとも里に下りたのか 「鈴仙?」 「ウ、ウドンゲ!?ちょ、ちょっとどうしたの?」 私の瞳からは、涙が流れていた 食べるべきものに惚れるなんてオカシイと、貴方は言った でも、私もオカシイんだ、食べようとする貴方を、好きになってしまったのだから あのとき、貴方がどうしても、食べなければいけないというなら 「私を、食べればよかったのに」 ○○さんはそれを拒否しただろう 私を食べろと言う兎と、それは嫌だと拒否する蛇 それはとても滑稽で、傍から見ても、おかしな光景だろう それでも、私は彼とそうありたかったのかもしれない 死んじゃったら、何にもならないのに もっと、早く会えてたら、違うかたちで・・・ 「死んじゃったら、何にも出来ない・・・か」 「う、うどんげ?」 「・・・大丈夫ですよ師匠・・・私は元気に長生きしますよ」 「え??だ、大丈夫なの・・・そう・・・それならいいんだけど」 今夜は泣くかもしれない、明日は沈んだ気分になるかもしれない それでも、いつまでもそんなではいられないから ばいばい○○さん、私も、貴方の事が好きでした end 13スレ目 62 「薬ー、薬売りですよー」 里を歩いていると、前方に見慣れた後姿 頭の上にのびた長い耳が、歩くたびにひょこひょこと揺れている 短いスカートがひらひらしている、後ろから見ていてヒヤヒヤする格好だ わざわざ長い靴下を履くぐらいならスカートの方を短くすればいいのに、と思う 「鈴仙、おつかれさん」 「え?あっ、○○さん、こんにちはっ!」 後ろから声をかけると、少しおどろいてから、元気よく挨拶を返してくれた 「・・・」 「な、なんですか?」 じっくりとその姿を見ていたら、その視線に気付いた彼女は、何事かと身構えた だから俺は考えていた事を素直に口に出した 「いやぁ、鈴仙は相変わらず可愛いな、と思っていただけさ」 「ああ、なんだそんな・・・・えええええぇぇぇぇええええ!!!?」 「ちょ、鈴仙声でかいって」 「え、あ、いや、その、そそっそそういった冗談は」 「まぁまて、俺の話を聞け、まず冗談ではない、そしてお前はお前を過小評価しすぎている」 「○、○○さんこそ・・・私は可愛くなんかありません」 断固として自らが可愛いと認めようとしない鈴仙 まぁ自分可愛い!とか言ってる奴は可愛くてもむかつくよね 「・・・ちょっとこっちこい」 俺は鈴仙の腕を掴んで、路地裏の暗がりへ連れ込んだ そして、彼女の肩を掴むと、多少強引に、唇を重ねた 「んっ!?んぁっ、ちゅ、んんっ・・・ぷぁっ」 鈴仙は顔を真っ赤にして、地面にぺたりと座り込んだ 「こういう事をしたくなるぐらいお前は魅力的ということ、アンダスタン?」 「はぁ、はぁ・・・こ、腰が」 「ん?腰がどうした」 「腰が、抜けて・・・」 少しは舌を入れたりなんかしたけど、彼女からすれば腰を抜かすのには十分な驚きだったらしい 地面に座り込んだまま、ぽーっとしている このとき、彼女のスカートが短い事を、呪ってやった 座り込んだ体勢というのは、とても無防備であるのだ 抱きしめる様な形で、鈴仙をを起こす 「あ、ありがと・・・・・・・○○さん?」 「んー、いい匂いー」 せっかくだからそのまま彼女を抱きしめてみた 出てるところは出ていて、ブレザーの上からでも柔らかい感触が伝わってきた 「○、○○さん!!?ななな、なにしてるんですかっ」 「鈴仙をだきしめて匂いをかいで身体を撫で回してる」 「そ、そういうことではなくてっ、ややややめてくださ、んぅっ!や、やめっ」 流石に悪戯が過ぎるか 悪ふざけはこれぐらいに自重しておくとしよう 「オーケーオーケー、立てるか?」 「え、あ、はい、大丈夫みた「だめか、それはしょうがない」 背負っていた鈴仙をお姫様抱っこして、薬の箱をおぶって ぎゃあぎゃあと文句を言う鈴仙を、家まで運ぶ事にした 「と、言うわけで、君は凄くかわいいわけだよ、理解した?」 持ち帰った鈴仙に紅茶とクッキーを出して、何処がどう可愛いのかを延々と話したところ 「・・・なんで・・・そんな事言うんですか・・・」 彼女は顔を赤くして俯いて、そう言った だから俺も、前々から言っていた言葉を、改めて口にしたのだ 「お前が・・・好きだから、LikeでなくてLove」 「いつも・・・いつもそうやってふざけて」 「まてまてまて、俺は本気だって・・・さっきのキスじゃ証拠にはならないか?」 「え、あ、うぅ」 思い出したのか、更に顔を赤くしてしまう鈴仙、目も顔も耳まで赤い 「も、もう一度・・・シテくれたら、わかるかも・・・」 「ぶふっっ!」 予想外の台詞に紅茶を噴いた 恥ずかしがりながらもそんな台詞を口にした鈴仙を見た俺は、俺は! お、落ち着け、素数を数えるんだ!!1,3,5、7,11,13ry 「○、○さん」 「れい、せん・・・」 本日二度目の、接吻 今度は軽く、触れる程度のキス だけど― 「こ、これで・・・解ってくれたか?」 「は、はい・・・その・・・私も、○○さんのことが、大好きですよ」 惚れた方の負けとは言うが、どっちも惚れていた場合、どっちが負けているんだろうと 鈴仙の笑顔を見ながら、俺の負けかも、と思ってしまった 「ウドンゲ遅い・・・てゐ、何か聞いてない?」 「しらなーい」 「・・・夕飯の材料・・・」 end 13スレ目 125 うpろだ948 小腹が空いて何かつまむものはないかと台所に向かう途中、部屋から明かりが漏れているのに気がついた。 「あれ、鈴仙まだ起きてるのかな?」 ちょっと気になって部屋を覗いてみると机に向かって一心不乱で何かを書き込んでいる鈴仙が見えた。 「こんな遅くまでなにやってるの?」 「あれ? ○○どうしたの? 眠ってたんじゃないの?」 「いや、ちょっとお腹空いちゃってね。鈴仙は?」 「私は師匠に纏めておくようにいわれた資料の整理。結構な量あってまだ半分くらいしか片付いてなくて」 「大変だな。無理しないようにね」 「うん。わかってる」 しかしこんな時間まで頑張ってるなんて鈴仙って意外に努力家なんだなぁ。俺は何かできることはないかと考えながら台所に向かった。 「れいせーん、開けてー。手がふさがって襖開けられないんだー」 「え? いきなりなに?」 襖を開けて顔を出した鈴仙にお盆のものを見せた。 「頑張っている鈴仙に夜食の差し入れ」 「これって、○○がつくったの?」 「うん、うどんは残りものだけどね」 盆の上にはうどんが2杯。 出来立てのうどんからは真っ白い湯気が立ち上っている。 艶やかな白い麺。鮮やかな緑色の葱と大きく切った蒲鉾。カリッと揚げ立ての海老天。澄んだ鰹だしの香りが鼻をくすぐる。我ながら改心の出来だ。 くきゅるる~ 鈴仙のお腹からかわいい音が聞こえて、顔を真っ赤にする。 「……食べよっか」 「そうだね」 部屋に入って二人でうどんをすする。 こしのある麺に熱い出汁の旨み。あっという間に出汁まで飲み干してしまった。 お腹も温まって幸せそうな顔をしている鈴仙。作ったかいがあったってもんだ。 「これで頑張れそう?」 「うん、ありがとうね。○○」 「それだけで感謝の極み」 「やだなぁ、大げさだよ」 盆の上に丼を乗せて部屋を出て行こうとすると鈴仙が呼び止めてきた。 「今度ね、私がうどんごちそうしてあげるから楽しみにしてて」 「それはたのしみだ」 「期待しててね。おやすみ」 うーん、鈴仙のうどんかぁ。やっぱり月見うどんなのかなぁ。そんなバカな考えをしながら台所にどんぶりを返しにいった。 14スレ目 19 鈴仙「○○」 ○○「鈴仙」 イチャイチャ 鈴仙「○○♪○○♪」 ○○「鈴仙、鈴仙」 ちゅっちゅっ 鈴仙「○○♪○○♪○○♪」 ○○「れーせん♪れーせん♪れーせん♪」 にゃんにゃん 永琳「あなたたちいい加減にしなさい」 てゐ「私たちがいること完璧に忘れてるね」 輝夜「まったくこれだからバカップルは」 春はバカップルが涌く季節です。 うpろだ1067 「鈴仙……またお前かぁー!!」 静かな昼下がりの永遠亭に響く声。 声の主は最近お手伝いとして雇われた若者だ。 「どうしたのー?」 「法外な量の仕事を俺の当番に回すなとあれほど言っただろが……」 「だって、あなたいつも適当に仕事済ましちゃうじゃん! その罰」 「この量だから急いで終わらせざるを得ないんだよ! ほら手伝え!」 「はいはい」 2人のお手伝いさんは、ぼちぼちと仕事を始めた。 「はいこれで終ーわりっとぉ!」 最後の書類をまとめ棚にしまう。 机の上にあった大量の書物はきれいに片付いた。 「あー……ねむー……」 「ねぇ、もしよかったら……これからどこか行かない? その……」 「パスパス。 半端ない仕事こなしたら何だか眠くなってきたわ。 晩御飯になったら起こしてこれよー」 そう言うと、彼は欠伸をしながら自室に戻ろうとし始める。 「……もぉーっ!」 鈴仙がその足を思いっきり引っ掛ける。 見事にすっ転んだのは言うまでも無い。 「ってー!」 「何よ! 折角手伝ってあげたのに御礼もないの!?」 「もとはお前が蒔いた種だろ! むしろ謝れよ!」 つまらない言い争いを繰り広げてると、人里から永琳が帰ってきた。 「あらあら、また喧嘩?」 「んもー永琳さん、こいつどうにかしてくださいよ!」 「お師匠様! こいつなんて即効クビですよクビ!」 「分かったわ。 そんなにお手伝いが気に入ったのなら、これも頼むわね」 永琳がどさりと、人里の患者のカルテをさっき片付けたばかりの机の上に置く。 「よろしくー」 永琳は耀夜の元へとすたすた去っていった。 「はぁ……お師匠様の人使い荒いのもアレなんだよなぁ…… ほら、ちゃっちゃと片付け……!」 隣に彼の姿はもう無かった。 かわりに、彼の部屋から微かな寝息が聞こえてくる。 「あああああああっっ!!!」 鈴仙にできることと言えば、やりきれない気持ちを仕事にぶつけることくらいだった。 「どうかしら? 作業は進んでる?」 永琳がやってきた。 仕事はもうそろそろ半分ほど終わろうというところか。 「ええ……あいつがいてくれたらもっと早く終わるのに!」 「ふふふ…… ウドンゲ、あなたは彼のことどう思ってるの?」 まとめたカルテがバラバラと落ちていく。 鈴仙の動きも止まる。 「な、何を言ってるんですか!?」 「だから、本当は彼のことが好きなんでしょ? 普段はああやって喧嘩ばっかりしてるけれど」 「そんなこと……ないですよ! あるわけないじゃないですか! あんな奴役に立たないし迷惑かけるしでもう本当大嫌いですよ!」 乱暴に落ちたカルテを拾い始める。 「そ。 じゃあ私がもらっちゃおうかしら……?」 「え? え?」 重要なことなので2回聴きました。 「私は彼のことが大好きよ。 ちかいうちに蓬莱の薬でも飲ませてみましょうか?」 「また変なこと考え出してー……」 「ふふふ、仕事の邪魔して悪かったわね。 それじゃあ私は姫ともう少しイチャイチャしてくるわ」 「は、はぁ……行ってらっしゃいませ……」 部屋から出ようとする永琳は、最後に振り返る。 「あなたのその目は、敵を倒すためだけじゃないのよ。 もっといいことに使いなさいね」 にっこり笑うと、そのまま廊下へと出て行ってしまった。 ひとりぽかんと残された鈴仙は、数秒考えてから、黙り込む。 「…………この目、かぁ……」 「…………」 暗い天井を眺めて、物思いに耽る。 「別に……違うってのに……」 永琳から言われたことを思い起こす。 『あなた、ウドンゲのことはどう思う?』 あの時は曖昧な答え方でやり過ごしたが、どうもそれが本当とは考えられない。 「……ハァ、何であいつに振り回されなきゃいけないんだよ……」 ごろりと寝返りをうって、考えるのを止めた。 夕食も終わり、最後に残った仕事を片付けようと鈴仙が書庫に行こうとすると、 「あー、手伝う」 どことなっくそっぽを向いて、声をかけてきた。 「あ、ありがと」 鈴仙もそれにつられてか、ぎこちなく答える。 「じゃ、じゃあ行くか」 「う、うん」 「…………」 「…………」 二人で黙々と作業をこなしていく。 雑談的な会話は出ずに、ハサミ貸してなどの事務連絡しか声を出すことは無かった。 「……何か喋れよ」 こらえきれずに呟く。 「喋るって何を」 相手の目を見ずに答える鈴仙。 手は動きっぱなし。 「何か気まずいじゃねーか」 ぼそぼそと会話は続く。 お互いに止めるタイミングを失ってしまった。 「気まずくて結構。 私は仕事をしてるのよ」 「寂しい女」 「うるさい!」 「へいへい、そう目くじら立てるなって」 それから、また沈黙が始まった。 その後も会話は唐突に現れて唐突に消えていく。 いつしか仕事も終わり、机の上はまたきれいなままに戻っていた。 「終わりっと。 じゃあ私はそろそろ寝るわ」 鈴仙が席を立ち、扉へ向かおうとする。 「ま、待ってくれ!」 鈴仙の肩を掴んで壁際へと押し倒す。 二人の顔が近づく。 「な、何するの!?」 「なぁ……真面目な話。 俺のこと、どう思う?」 慣れないことを口に出しているせいか、つい目を逸らしてしまう。 「……伝わらない」 鈴仙が、小さな声で呟く。 「何で? 何であなたには、私の狂気の瞳が伝わらないの!?」 鈴仙の目は、月の兎のそれになっていた。 真っ赤な狂気を、肩を掴まれている相手に放つ。 「何でだろうな。 きれな紅い目にしか見えない」 「……本当……なんでなの……」 明かりの炎が揺らぐ。 「何と言うか、その目にやられた。 鈴仙、俺は君が好きだ。 その目で俺だけを見て欲しい」 「……バカ。 何で先に言っちゃうのよ」 鈴仙が体をそっと抱きしめる。 同じように、肩の手も体を離さぬようにしっかりと抱きしめる。 「我侭な私だけど」 「自由気ままな俺だけど」 「 これからも仲良くしてくれるよね…… 」 てゐ「っていうのはどうだろ?」 鈴仙「何で私がそんなツンツンした役回りなの」 「俺もそんな適当な男じゃないって」 てゐ「だって、あんたたちいつでもどこでもベタベタイチャイチャしすぎなの。 まるで永琳と姫様みたいに……」 鈴仙「別にいいでしょ、あんたはあんたでどこかいきなさいよ、ねー」 「ねー」 てゐ「むむむーっ、私も混ぜてー!」 「う、わ」 てゐ「ん~♪ やっぱりあなたは私だけのものよ!」 鈴仙「何言ってるの!? 彼は私の恋人よ!」 「どっちでもいいけど誰かたすけて あ うで かゆ うま」 永琳「ふふふ……あっちもあっちで仲良くなってるけど、愛し合い方がまだまだお子様ねぇ……」 耀夜「そうね。 私達も続き、始めましょう? 私の愛しの永琳♪」 永琳「はい、そうしましょう。 私の愛しいかぐや姫♪」 -------- COOL CREATE「シアワセうさぎ」 を聴いてたら妄想駄々漏れ。 書き上げたのが23 10。 ちなみに書き出したのは21 05頃。 2時間も何やってるんだか俺 ツンツンした男女がドキドキするとこうなるってのを書きたかったけど結局てゐの妄想ストーリーで収まる。 というか本編は確実に最後の二行だと思うんだ。 初心者ホイホイなんてレッテルを貼られても、真面目なデレっ子はマイジャスティスだ! って幽々子と妖夢が言ってた。 もう本当可愛いよ冥界組。 うpろだ1163 「んー…どーするかな。暇すぎる…」 ここは幻想郷。ミリタリー同好会の仲間と富士まではいかないが樹海にサバイバルゲームに出た時に迷ってここに来た。ちなみに全身迷彩服。 「それじゃ買出しでも頼める?」 「鈴仙!?いきなりビビらせんなよ…」 鈴仙・優曇華院・イナバ。この永遠亭に連れて来てくれた人物で月の兎らしい。想像とかなり違う。ちょっと気になる存在だ。 「ハイ。買い物かご。じゃお願い」 「ちょ…待っ…」 「頼んだからねー」 もういないのか。押しつけられた買い物かご。たまには外の空気でも吸ってくるかといざ出陣。 ――移動中―― 「何買えばいいんだ?メモと金はある…か」 メモの内容は…トリカブト・乾燥したマムシ・大麻・高句麗人参・乾燥したマゴタロウムシ。マゴタロウムシはヘビトンボとかいう虫の幼虫とのことだ。 「何だよこの怪しげなオーラ全開のメニューは…こりゃ永琳師匠だな」 マゴタロウムシ以外は入手。ようやく店が見つかった。 「乾燥したマゴタロウムシ4匹で」 「あいよ」 よし。全種類ゲット。もうすぐ日も暮れる。 ――帰宅中―― 永遠亭に帰ってこのブラックオーラ全開の品物をどこに持っていけばいいか鈴仙に聞く。 「ミッション終了!このブツどーするよ?」 「じゃ師匠のとこ持ってって」 確かここだったはず。今は研究室の前にいる。ハッキリ言って物々しい。 「師匠ぉー?買ってきた品物ここ置いとくんで」 「ありがと。ちょっと中入ってゆっくりする?」 「んじゃ遠慮なく…うぉ!?スズメバチのアルコール漬け!?」 「他にも結構あるの。色々と…ね」 師匠の薬品コレクションを見ている内に夕食に。珍しく鈴仙のテンションが低い。そんなこんなで夕食が終了。中庭で鈴仙を発見。 「お。妙にテンション低いな…今日は」 「満月は…いい思い出ないから…今はそっとしといて」 「月から来たんだろ?どんな…」 「それ以上言ったら…○○でも容赦しないから…!」 背筋が凍るような眼差しで睨まれた。むしろ動けない。次の瞬間には目の前から鈴仙が消えていた。 「やたらと他人の過去を掘り返すのはやめなさいな」 「師匠…?」 「あの子の過去を少しだけ教えてあげる。永遠亭以外の人物に言わないこと」 「は…はい」 「あの子…戦争になる前に月から逃げてきたの」 「…」 「だから満月は苦手みたい。あのトラウマには触れないであげて」 「後で謝っときます」 「そうしなさい…本当は気になってるんじゃなくて?」 最後にロケットランチャー並みに一言重い一撃を見舞ってから師匠は例の物々しい研究室に姿を消した。まさか悟られていたとは。 「さすがは『月の頭脳』か…じゃ自分のミスを正しに行きますか」 知らなかった。そんなフィクションみたいな過去を持つ人物がこんなに身近にいたことが。もちろん謝りに行く。 「あ…ここにいたか…」 「まだ何か用?」 さっきの目だ。ちなみにここは渡り廊下の縁側。 「ゴメンな…トラウマに触れちまって」 「だから何?」 「今まで一口に「戦争」って言うとカッコいいイメージがあったワケな」 「アンタねぇ…戦場がどんな場所か知ってる!?銃声と断末魔と爆音が響いて必ず誰かが消える場所!そこに私は…一人で背中向けたんだから」 「……」 「それでカッコいいなんて…よく言えるわ。それが怖くて逃げて来た私が言えたことじゃないけど」 「そりゃ確かに戦車も戦闘機も戦艦も装甲車も好きだけどさ…本物の戦争は嫌だな。自分がただの戦闘マシンに変わっちまうのはさ」 一瞬の内に腕にしがみつかれた。一瞬の幻覚…錯覚で見えなかった。 「自分でも野暮なこと願ってると思うけどさ…今だけでも「大事なモンを守れる巨大な力」ってヤツが欲しくて仕方ねぇよ」 「やっぱり戦争をフィクションとしか…」 「思えるかっての。大事なモン失くしたかないだろ」 「…く…い…?」 「へ?」 「いなく…ならない…?」 おいおい…泣かせたことになるのかこれは。どっちにしろ潤んだ目で罪悪感が凄まじい。 「当然。もう骨埋める場所は決めたんだ」 「うん」 巨大な力を手に入れれば必然的にその力に溺れる。架空にしても現実にしても、だ。 「やっぱ怖ぇな。目の前で大事なモンが消えてくってのは。背中向けたくなるっての…分かるな」 「殺すのは慣れないし…ね」 「狂人でもない限り慣れないだろ」 「そうだけど…」 「さっきな。カッコいいって言ったのは戦争自体じゃなくてそれに使われた戦車とかの見た目や性能…矛盾しまくりだな」 「性能とかは知らないけど…キレちゃった…ごめん」 「気にすんなって。兵器に乗れば誰だって感情も表情も消えて兵器の一部になっちまうんだからさ」 まさか元ミリタリー同好会の自分の口からこんな言葉が出るとは驚愕だ。 「でも…仮に兵器があっても月から逃げて来た…言ってみれば私は脱走兵。敵前逃亡はどうなるか知ってる?」 「言わなくていい。悲しくなる」 「そう」 「今一番近くにいる大事なモンさえ守れないとか嫌だろが」 「……へ!?――――それ…私?」 「そ。架空のキャラみたく上手く言えねぇな…悪ぃ」 「ありがと」 自分の不器用さがハッキリ言って憎いことこの上ない。 「ところでもし月に帰れる方法が見つかったらどうするよ?」 「んー…まだ未定。でも帰らなきゃいけない時は…『サヨナラ』じゃなくて笑って『またね』って言いたいかな」 初めて気付いた。まだ鈴仙は「脱走兵」じゃない。まだ自分に負けていない。 「じゃあ泣いてられねぇな…昔っから涙腺緩くてさ…よく他人から『優しい』って言われてたな」 「○○は…優しいよ…そう思う」 「こんな性格だぞ?」 「守るって…言っ…てくれた…から…」 「十分優しいじゃねぇか。ここは戦場じゃねぇんだ…泣いとけ。その方がスッキリするしな」 それから泣き止むまで10分弱。よく泣く奴だ。 「もう少し…強くなりたかったかな。月にいる頃に」 「気持ちは分かるけどそんな事言うなっての…守られる側になっちまうだろ」 「――――――大好き」 「なっ…!?まぁ…何だ…珍しく気が合うのな。特に今日は」 「うん。もう大丈夫…ゴメンね?」 しがみつかれた体勢で言われるとドーラの4.8トン榴爆弾より破壊力抜群なんだが。顔面がオーバーヒートしそうだ。 「やっと本調子に戻れたか…盛大に帰還だな」 「満月…少しだけ好きになれたみたい」 お互い少し強くなれた気がする。兵器なんて物騒な代物に手を染めずに、だ。 「心配かけさせてくれるよな…半分は自分が悪ぃんだけどさ」 「今回だけは許したげる」 「あぁ…忘れてた。一つだけ頼まれてくれね?」 「どんな頼み?」 もう「巨大な力」は望まない。今望むのはこれだけだ。 「せめて骨埋めるまでは好きでいさせてくれるよな?」 「当たり前でしょ」 「あとな。あの座薬…じゃない。弾丸の出し方教えてくれな。いつかスペカ使えるようになってみたいしな」 「座薬って言うな。でもまぁ…そこまで言うんなら遠慮も手加減もしないからね」 ――今狂気の目だった気がする。だが敢えてここは気のせいにしておこう。 明日から派手な特訓になりそうだ。 うpろだ1197 「・・・おかしいんですよ」 「・・・なにが?」 ウドンゲは、唐突に話をふってきた 話しかけるより駆けられるのを待つようなタイプなのに珍しい事だ 「○○さんが変なんです」 「ふんふん、何処がどう変なの?」 ここ数週間、食が細い、動きが鈍い、なんだがダルそう らしい 「あら、いつもそんなんじゃない?不活発で燃費がいい」 「もう、違いますよ、○○さんは行動派です」 「ふぅん、それで、私にどうしろと?」 彼女から話をふってきたのだ、話だけと言うわけがない 「それは・・・その・・・○○さんを診てもらえたらなぁ、とおもいまして」 「・・・はぁ、今度つれて来なさい」 「は、はい!ありがとうございます師匠っ!」 「と、言うわけで、永遠亭に来て欲しいんですよ」 「いきなり何を言い出すのかな君は」 鈴仙と一緒に里を歩いていると 何の前触れもなく唐突に、永遠亭に来て欲しいとな? 「でもなぁ、あそこは兎がいっぱい居て・・・姫さんも苦手だしなぁ」 「そこをどうにか・・・お願いします」 優曇華は下から上目遣いで攻めてきた、だがその程度で折れる俺ではないわっ 「うーん、でもなぁ」 「・・・解りましたっ!その・・・来てくれたら・・・私の部屋で・・・(ピーッ)までなら・・・い、いいですよ」 「行きましょう、ぜひ喜んで行きましょう」 俺はあっさり折れた、これは俺でなくてもしょうがない、鈴仙萌えでブレザー萌えの俺にはどうしようもないんだ 「やぁ○○・・・と座薬」 「座薬って言うなっ」 「よう妹紅、相変わらずふらふらしてるな」 竹林を歩いていたらヤンキー、じゃなかった妹紅に出会った 「ん?ああ、○○はもうそんな時期か」 妹紅は俺の眼を見て何かを理解した様で 俺は 「ああ」 と短く返事をすると、鈴仙と共に永遠亭への道を歩いた 「○○さん、そんな時期ってどんな時期ですか?」 「ん?ああ・・・気にしなくていいさ、俺としてはあんまり知って欲しくはないがね」 「?あ、ししょうーっ!」 永遠亭が見えたと思ったら永琳さんの姿もそこにあった 何となく会いたくなかったけど、仕方がない 「こんにちは・・・」 「○○さん、いらっしゃい・・・ゆっくりして行ってね」 永琳さんの笑顔に嫌なものを感じた俺は、反射的に二歩半歩ほどの距離を、下がった ぶしゅぅ 俺がいたところに撒かれた謎のガス 避けられたことに対しての舌打ち そのときに、やっぱり来るんじゃなかったと後悔した そして、横に避けず後ろに下がったことも後悔した チクリという小さいが鋭い痛み 俺の後ろに居た鈴仙がもつ、小さな注射器による痛みだった 「こっちが本命ですよ○○さん」 「チクショウ、油断しすぎた、ぜ」 そこで、俺は意識を手放した 「うーん」 「ど、どうなんですか師匠」 「ねぇウドンゲ、○○は人間?」 「え?いえ・・・妖怪だと思いますけど」 そういえば全然詳しくしらないなぁ 人間ってことはないと思うけど、何の妖怪かも知らない 師匠はそんなことも知らないで付き合ってたのかと私を馬鹿にした でも愛に種族は関係ないんです!とは言い返せなかった 「もしかしていや、うーん」 「な、なんなんですか!?もしかして性質の悪い病気とかなんとかだったり」 「たぶん、脱皮だと思うのよ」 「・・・は?」 脱皮?主に爬虫類がする古い表皮を脱ぎ捨てる行為の事? 「ほら、目が白くにごってるし」 白内障みたいに・・・ではない、表面が白くにごった感じで 「もしかして蛇の妖怪か何かだったりねー」 というかそれしかないでしょうー 「うーん、うーん」 「あ、起きましたね」 目が覚めると、視界いっぱいに鈴仙の顔が まだ少しボーっとしてるが、自分がどうしてこんなところで横になっているのかは、覚えている 「鈴仙、何の目的があって俺を・・・?」 「い、いえ・・・○○さんの体調が悪いみたいだったので・・・心配で」 心配してくれるのはありがたいが、もうちょっと優しくてもいいんジャマイカと思ったが口にはしなかった 今はとりあえず鈴仙のこころづかいをありがたく受け取っておく 「それで・・・○○さんは・・・蛇、なんですか?」 「ああ・・・そうだよ」 「なんで、隠してたんですか?」 そりゃあ、彼女は兎だ、俺は蛇だから 怖がられると、思った 嫌われるならまだいいと思った、でも怖がられる事が、怖かった 「私が、貴方が蛇だから、そんな理由で接し方を変えると思ったんですか?」 「じゃあお前は、俺が蛇だと解っていたら・・・好きになったか?」 鈴仙は、驚いたように目を見開いた 返答無く、一拍おいて彼女は口を開いた 「・・・解りません、だけど今は・・・○○さんが好きな気持ちは・・・変わりません」 「・・・そうだよな、もしもの話なんてのは・・・悪い、愚問だったな」 それでも俺を、変わらず好きだといってくれる彼女が愛しくて、抱きしめた 「○、○○さん・・・」 「鈴仙・・・ありがとう」 「あ・・・ど、どういたしまして」 「ああっ!そういえば○○さん!」 永遠亭からの帰り道、いきなり鈴仙が大きな声を出した 「うお、な、なんだよ?」 その赤い瞳でこちらを睨むようにじっと・・・睨んでいる 「そういえば妹紅さんは、知ってましたね」 ああしまった、そういうことか 「何で私には秘密にしてて、妹紅さんは知ってたんですかっ!?」 「いやアレはだな、偶然の産物で知られてしまっただけでry」 鈴仙はぎゃあぎゃあと文句、と言うか愚痴のようなものを延々と言っている いまだ竹林は続いている こういう時のコイツは、厄介だ 「ああもううるせぇなっ!食っちまうぞっ!」 鈴仙はビクリと身体をこわばらせた 瞬間、しまった、と思った さっきまで一応蛇だ兎だと言い合ってたのだ あまりに、空気を読まない台詞であったに違いない 「いや、鈴仙、その、今のはな」 「○○さん・・・その、そういうことは、家の中で・・・」 「は?」 頬を染めて、スカートの裾を握り締めちゃったりなんかして・・・ どうやら彼女には 食っちまうぞ(性的な意味で に聞こえたらしい ん?そういえば 「ああっ!永遠亭についていったら(ピーッ)するって言ったじゃ無いか!!」 「だ、だからってこんな所(竹林)でそんなこと」 「よいではないかよいではないか」 「んぁっ!、だ、め・・・そんなとこ、ぁんっ」 俺は葉っぱのベットに、鈴仙を押し倒し、そのブレザーを乱暴に剥ぎ取り、彼女のその (削除されました、読むためには善い行いをする必要が有ります) 「あの馬鹿どもは、外でなんてことを・・・」 「やぁ妹紅、何を見てるんだ?」 「慧音!ななな何でも無い!」 「そうか、ん?向こうで何か声が」 「そうだ慧音!美味しいお茶を買ってきたんだ!一緒に飲もう!」 「おお、それはありがたいな、ご馳走になろう、ん?やっぱり向こうで声が」 「慧音ーッ!そっちみちゃらめぇぇぇ」 終わらなくなったので終ワル
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技表必殺技 スペルカード 各種早見表必殺技レベルアップ効果 射撃技早見表 フレームデータ 更新履歴 技表 必殺技 コマンド系統 技名 使用場所 攻撃属性 備考 マインドエクスプロージョン 地上 射撃 マインドベンディング 地上/空中 射撃 マインドドロッピング 地上 射撃 ホールド可能(爆発待機)一定時間後に爆発し小弾を振り撒く特殊弾 フィールドウルトラレッド 地上 - フィールド内に相手がいると、鈴仙が見えなくなり射撃が当たらなくなる フィールドウルトラバイオレット 地上 - フィールド内に相手がいると、鈴仙の分身が現れ攻撃を受ける アンダーセンスブレイク 地上 射撃 イリュージョナリィブラスト 地上 射撃 アイサイトクリーニング 地上/空中 射撃 ホールド可能(攻撃待機+コーン拡大)コーン内の相手が居る位置へ攻撃コーンの外周は相殺判定だけを持つ リップルヴィジョン 地上/空中 射撃 ホールド可能(ヒット数増加+弾拡大) ディスビリーフアスペクト 地上 射撃 分身を設置して攻撃させる ディスオーダーアイ 地上/空中 射+打 分身が飛び出す部分は射撃分身が戻ってくる部分は打撃 アキュラースペクトル 地上 - 方向キーを入れた位置の鈴仙が実体となる移動技どこにも入れない場合は前方の鈴仙が実体となる スペルカード コスト 技名 使用場所 攻撃属性 備考 1 惑見「離円花冠(カローラヴィジョン)」 地上/空中 射撃 弱心「喪心喪意(ディモチヴェイション)」 地上 射撃 ヒット時、相手の手札を1枚破壊する 2 毒煙幕「瓦斯織物の玉」 地上 - 地上付近に居ると継続ダメージを受ける特殊フィールドを生成 長視「赤月下(インフレアドムーン)」 地上 - フィールドウルトラレッドと同じフィールドを画面全体に生成 3 幻爆「近眼花火(マインドスターマイン)」 地上/空中 磨耗射撃 幻惑「花冠視線(クラウンヴィジョン)」 地上 射撃 喪心「喪心創痍(ディスカーダー)」 地上 射撃 ヒット時、相手の手札を1枚破壊する 生薬「国士無双の薬」 地上 - 使用する度に攻撃力と防御力が増加する4度目の使用で強化効果解除+自爆攻撃(ガード不能) 短視「超短脳波(エックスウェイブ)」 地上 射撃 ヒット時、フィールドウルトラバイオレットと同じ分身を生成 4 赤眼「望見円月(ルナティックブラスト)」 地上 磨耗射撃 5 「幻朧月睨(ルナティックレッドアイズ)」 地上/空中 射撃 各種早見表 必殺技レベルアップ効果 コマンド 技名 レベル毎追加効果 Lv1 Lv2 Lv3 LvMAX マインドエクスプロージョン 爆発の範囲拡大 マインドベンディング - 爆発の持続時間延長爆発の範囲拡大爆発の弾速上昇 爆発の弾速上昇 爆発の持続時間延長爆発の範囲拡大爆発の弾速上昇 マインドドロッピング - 最大ホールド時間延長散弾の弾数+2 最大ホールド時間延長散弾の弾数+2 最大ホールド時間延長散弾の弾数+2 フィールドウルトラレッド フィールド持続時間延長 フィールド持続時間延長 フィールド持続時間延長 フィールド持続時間延長 フィールドウルトラバイトレット - フィールド範囲拡大 フィールド範囲拡大分身生成数+1 フィールド範囲拡大 アンダーセンスブレイク - 発生加速 出始めにグレイズ付加 イリュージョナリィブラスト B版の発生加速 C版の発生加速 B版の弾拡大 C版の弾拡大 アイサイトクリーニング - 走査線の射出周期短縮 走査線の射出周期短縮 走査線の射出周期短縮 リップルヴィジョン - 残像に射撃判定付加 ディスビリーフアスペクト 弾数+1 弾数+1 弾数+1 ディスオーダーアイ - B版の弾数+4C版の弾数+2 アキュラースペクトル - 硬直軽減 空中可に 空中版の硬直軽減 ※レベル毎にダメージが10%ずつ上昇する効果は省略 射撃技早見表 +射撃技早見表を展開 通常技 技名 ヒット数 相殺関連 グレイズ耐久数 備考 強度 回数 B系射撃(立B、+B、屈B、JpB、Jp+B) 1 C 2回 1回 通常版は3弾出るホールド版は5弾出る C系射撃(立C、JpC、Jp+C) 弾頭部分 1 B 1回 無制限 1弾出る一定時間経過or接触or相殺で爆発部分へ移行 爆発部分 3 B 4回 無制限 ホールド版・C系射撃(ホールド立C、ホールドJpC、ホールドJp+C) 弾頭部分 1 B 1回 無制限 5弾出る一定時間経過or接触or相殺で爆発部分へ移行 爆発部分 3 B 4回 無制限 屈C 1 - - 無制限 1弾出る 必殺技 技名 ヒット数 相殺関連 グレイズ耐久数 備考 強度 回数 マインドエクスプロージョン 弾頭 1 B 1回 無制限 1弾出る接触or相殺で爆発に変化 爆発 4 B 4回 無制限 マインドベンディング 弾頭 1 B 1回 無制限 1弾出る一定時間経過か接触or相殺で爆発に変化 爆発 1 B 1回 無制限 弾頭1弾から8弾出る マインドドロッピング 弾頭 - - - - 1弾出る攻撃判定を持たない一定時間経過orホールド解除で散弾に変化 散弾 1 B 1回 1回 Lv1時は弾頭1弾から6弾出るLvアップで弾数増加(6-8-10-12弾)接触or接地で爆発に変化 爆発 1 C 1回 1回 アンダーセンスブレイク 5 - - 5回 1弾出る イリュージョナリィブラスト 8 B 無制限 無制限 1弾出る相殺で攻撃回数が減少しない アイサイトクリーニング 外周 - B 無制限 - 2弾出る攻撃判定を持たず、相殺判定のみ持つ 走査線 - B 1回 - 一定周期で2弾ずつ出る攻撃判定を持たず、相殺判定のみ持つB版は周期が短く、C版は周期が長いLvアップで走査線の生成周期短縮 攻撃光 7 - - 7回 サイト内に相手が居るときにホールド解除で発生 リップルヴィジョン 通常版 1 B 3回 無制限 1弾出るLv4時、軌跡に攻撃判定を持つ残像を生成 ホールド版 3 B 3回 無制限 1弾出るLv4時、軌跡に攻撃判定を持つ残像を生成 残像 1 B 1回 無制限 弾本体の軌跡に一定周期で生成され続ける通常版は周期が長く、ホールド版は周期が短い ディスビリーフアスペクト 分身 - - - - 1弾出る攻撃判定を持たない一定時間後に弾丸を射出 弾丸 1 C 1回 1回 Lv0時は4弾出るLvアップで弾数増加(4-5-6-6-7弾) ディスオーダーアイ 分身(往路) 1 - - 1回 Lv1時、B版は2弾、C版は4弾出るLv4時、B版もC版も6弾出る一定時間後に分身(復路)に変化 分身(復路) 1 - - - 打撃判定 スペルカード 技名 ヒット数 相殺関連 グレイズ耐久数 備考 強度 回数 カローラヴィジョン 5 B 5回 無制限 1弾出る ディモチヴェイション 1 - - 3回 1弾出る マインドスターマイン 弾頭 - - - - 18弾出る攻撃判定を持たない一定時間後に爆発に変化 爆発 1 A 3回 無制限 磨耗射撃属性弾頭1弾から爆発1弾出る攻撃判定消失で消滅しない クラウンヴィジョン 1 B 1回 無制限 10弾出る ディスカーダー 弾頭 1 A 3回 無制限 1弾出る接触or相殺で爆発に変化 爆発 1 - - 3回 弾頭1弾から爆発1弾出る 国士無双の薬 自爆攻撃 1 A 1回 - 特別射撃属性1弾出る エックスウェイブ 7 - - 7回 1弾出る ルナティックブラスト 23 B 無制限 無制限 磨耗射撃属性1弾出る ルナティックレッドアイズ 1 B ?回 無制限 16弾出る フレームデータ フレームデータ/鈴仙 更新履歴 10/05/10スペルカード一覧をver1.10仕様へ。 10/04/14必殺技レベルアップ効果をver1.10仕様へ。 09/08/18技表を必殺技分だけ作成。スペルカードはコメントアウト中 早見表に必殺技レベルアップ効果の雛形だけ作成。他はコメントアウト中
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鈴仙9 うpろだ1281 姫は突然こう切り出した。 「ところで○○、貴方も因幡たちと同じように私のペットよね」 私は答える。 「申し上げるまでもなくそのとおりにございます、姫様」 姫は間髪いれずにこのように仰った。 「外の世界ではペットには首輪を着けるんでしょう?」 硬直している私を尻目に、姫の、その細く美しい手が、着物の懐に差し込まれ リールと錠前のついた赤い皮製の首輪を取り出したのであった。 「……」 私は言葉を失った。それはあまりにもあんまりな光景であった。 美しく、知的で、清潔で、私のような愚鈍な凡人には手が届かないような 高嶺の花を絵にかいたような輝夜様が、こともあろうにかくのごとき 変態的な意味でマニアックなアイテムを嬉しそうに見せ付けながら 期待に満ちたような眼で私を凝視なさる。 それはまるで『有無は言わせない』と無言で語っているかのようであった。 「わー。○○にドン引きされちゃったわ」 私が固まっていると姫様は目を細めて口を隠し、お茶目にもそう言われた。 私は、脂汗をかきながら絶望的な反論を試みる。 「姫様、そんなものを何処で入手されたかはともかく、廊下で他者の視線をはばからずに そういった行為に及ぶのはやめていただけませんか」 しかし当然ながら姫様はそんな私の意見に耳を貸すことはない。 「ねぇ○○、他人の性癖をとやかく言うのは許されざることだと思わない?」 姫は真紅のリールを人差し指にぐるぐる巻き、首輪の末端部を唇に近づける。 それはあまりに扇情的な光景で、私の中では、姫に抱いていた神聖なイメージが 一段と崩れると同時に、短絡的にも、姫と低俗な行為に及ぶ想像が脳裏をかすめた。 「それより、またそんなものばかり買って、八意先生に怒られますよ」 「大丈夫、永琳も首輪の○○を見たいと言ってはばからなかったわ」 なんと、この問題はすでに永遠亭のトップ二人のコンセンサスの得られたところであるようだ。 私の逃げ道は封じられた。カンナエ殲滅戦でのローマ軍のように、 私はじわじわと近寄ってくる姫を退けることかなわず、こんなことなら 姫のパソコンのセットアップのとき反対を押し切ってでも保護者機能をインストールして オンラインショッピングなど不可能ならしめるのだったと後悔したが、後の祭りだった。 「愉しいわ」 姫様の声は心底うれしそうだった。 「愉しいですか」 その時の自分の声色は、おそらく不機嫌を直に出したような そんなものであったはずだ。 姫は私がそんなとき、決まって、からかうように言うからだ。 「ええ、とても愉しいわ。貴方はそう思わないの?○○」 つまり、その言葉は私が心底滅入っているようなときに使われる。 例えば今、私の首には真新しい、赤い革製の首輪が装着されており 灯篭に照らされた銀色の金具の照り返しは、妙に妖しい雰囲気を醸し出し その首輪から伸びるリールが、姫様の手に握られているのだ。 場所は廊下、それも厨房と食卓を繋ぐ部分である。 姫様と私は、晩餐に出向くために歩みを進めているのだが、 よりにもよって、そんな時に、こんな場所を歩けばどうなるか 私も、おそらく姫様も、口に出しこそしないが、理解していたろう。 「私は不愉快です」 あまり姫様に、というよりも、女性に対して強くものを言うのが 得意な性分ではないのだが、そのとき私ははっきりと告げた。 「不愉快?」 姫様の歩行が停止した。その長く、美しい髪が揺れ、端正な御顔が こちらを向く。 私はこの時の姫様の表情をどう表現したものか迷う。 嘲っているようであり、同時に自らの不満に同意を求めるような そんな眼で、姫様は私を見つめていたのだ。 灯篭に照らされたその表情は妙に艶かしく、私は一瞬言葉を続けるのを 躊躇ったが、ようやく出た搾り出すような声に対して、姫様は 「……ええ、私が恥ずかしいのも勿論ですが、姫様が―」 「それは」 姫様の右の人差し指が私の唇を封じた。左手はリールを掴んでいるからだが その右人差し指は、まるで蛇か蝸牛が這いずるがのごとく 「なぞる」というよりはもはや「なじる」というべきような積極性でもって 私の顎を、喉を、胸を伝い、そしてそこで右に回り、来た時よりもやや 横にずれた軌跡をとりながら、私の頬に戻った。 「いいの」 姫の細い指が私の首筋を伝うだけで、私は反論する気力、勇気、使命感 それらをすべて奪われた気がした。 姫様の手は冷たく、その接触はくすぐったかったが、同時に私に 何か後ろめたい悦楽を与えもした。 よくわからないが私は既にその虜であり、ものを考えるのも困難だった。 「……いい……の、ですか?」 答えはすぐには返ってこない。姫様は私の頬で少しの間遊ばれていた。 あるいはそれだけであれば、死力を尽くして『もうおやめになってください』 の一言くらいはなんとかなったのかもしれない。 だが、腕一本の距離にある、姫様の、だが普段の姫様のものではない眼が 私を束縛していたのだ。 数分ほどもそうしていたように感じたころ、ようやく姫様の唇が開いた。 「そう。だから」 私の頬を撫でていた姫様の手は、あたかも名残惜しむかのようにゆっくりと 私の首筋、そして肩口を伝ってから、主の元へ帰っていった。 「○○、食事にいきましょう」 そしてその手が戻るのと時を同じくして、姫様の眼からも、あの不満の色は 消えうせ、からかうような、自分の玩具を弄り回すような、いつもの顔に 戻っていた。 私は姫様の曳くリールに抗うなど、もはや考えもしなかった。 姫の気まぐれで○○が首輪をつけられて半日、 真紅のレザーがまだ眩しい新品の首輪をつけたまま ○○は夕餉に向かわされた。 その様子に、永琳は目を丸くした後 変わった趣向ですね、とニヤニヤしながら 短く言っただけだった。 遅れてやってきたてゐは、○○にそっちのケが あったなんて……と、クスクス笑いながら いやらしい視線をこっちに向けてくるのであった。 そして最後にやってきた鈴仙が 「……○○、それ、何?」 襖を開けるやいなや、硬直し、口をぱくぱくさせてから 乾いた声でたどたどしく述べるのである。 ○○にはなんとなくわかった。ああ、ここに居る面子で 自分に首輪をかけると予め知っていないのは 鈴仙だけなのだな、と。 「何って、その、姫様が、ペットには首輪をつけるものだからと」 何かと『地上人の』自分を見下してくる鈴仙には、あまり 弱みを見せたくなかったので、シンプルに答える つもりだったが、やっぱり恥ずかしくて、視線をそらして うわずった声で答えるのが精一杯だった。 顔が熱っているのが嫌でも解る。真っ赤なのだろう。 「首輪……ち、地上人はよくわかんないことするのね……」 夕餉の間、自分と鈴仙の顔は真っ赤なままだった。 自分と鈴仙だけがちらちらと互いの顔を気にしていた。 両者とも食事がまともに口に入っていないのが明瞭だった。 そしてそれ以外の面子は、その他の因幡たちも皆が それを見て憎らしい笑みを浮かべ、押し殺した笑い声すら 発し、われわれ二人の様子を楽しんでいるようであった。 夕餉が終わり、デザートの人参シェイク白腐乳風味を どうにか半分ほど食べ終えたところで、何の前触れもなく 姫がこう切り出した。 「ねぇ、因幡。○○の首輪、どう思う?」 俯いていた鈴仙はその言葉にビクッと身体を痙攣させ、 その真っ赤な瞳を見開いてひきつった声でこう述べた。 「ぇ……ええ!姫が付けられたんですよね、センス いいです、○○によく似合ってますよ!」 姫は間髪入れずに切り返す。 「外の世界ではこうするらしいの。素敵よね」 鈴仙のぎくしゃくした愛想笑いから勢いが削がれていく。 「外の世界にも素敵な文化があるものよね」 そ、そうですね!鈴仙はそのように答えた。 ○○は鈴仙の受け答えがなにやら罠に嵌められていく 兎のそれに近く思ったが、どうにも、この状況から 話を切り替えるうまい思いつきが出ず、ただ傍観 するに任せていた。それがいけなかった。 「あら、月兎の貴女にもコレの良さが解るの?なら 話が早いわ。実はもうひとつ用意してあるんだけど」 姫が取り出したるはもう一セットの赤い首輪。 鈴仙の血の気が見る見る引いていくのがありありと 見て取れる。 ○○は、他の兎たちのニヤつきの意味を 理解し、そしてこれからどうなるのかもある程度 想像して、今しがた食べたものを戻さないように するのが精一杯であった。 「なんで」 鈴仙は問う。 「こんなことになってるのよ」 震える声で鈴仙は問う。 「いや、それはその、やはり輝夜様と八意先生の命令ですから」 ○○は慌てた声で応じる。 「やはり私としては逆らうわけには」 いつ爆発するかわからない鈴仙の怒気を刺激せぬよう下手に応じる。 「冗談じゃないわ」 鈴仙は震える声のまま、静かに言った。 ○○と鈴仙は○○の部屋にいた。 いや、この表現は適切でなく、○○は客間のひとつを間借りしているので ここは○○が寝起きする客間である。 廊下からは因幡たちが夕餉の後始末をしに往来する音が聞こえていたが しばらく前にそれも止んでいる。 二人は動こうとしない。動けないのだ。 ○○の首につながれた真紅にきらめく皮製の首輪。 それと同じものが鈴仙の首にも巻かれ、そしてその両の首輪から 伸びる紅いリールは互いを繋いでいる。 その長さは30センチくらいしかなかった。 これでは、どちらが動いても窮屈でしかたがない。 ゆえに、二人は背中を合わせて座り込んでいた。 「貴方を見ていると虫唾が走って狂気の眼を使いそう」 という鈴仙の脅迫にあわせた結果である。 ゆとりのない拘束がこの形態を完成させた。 しかし、背中同士が密着するのは、互いの姿が見えないこともあり 窮屈と同時に、二人に妙に官能的な感覚を与えもした。 ○○は鈴仙の身体が震えていることを知っており、長い髪の一部が 自分の肩を伝って自らの項にしな垂れかかっている感触がやけに心地よかった。 鈴仙は、○○の呼吸が浅くなっていることを知っており、その自分より 大きな背中に、身体を預けることが、自分の中の何かを満たしながら傷つけていると感じた。 そして、二人とも、その心音が相手に筒抜けだ。 部屋は暗くなっていく。日はとうに落ち、障子を通して伝わってくる やわらかい月の光が、部屋を照らしていた。 その部屋の中で、鈴仙がどんな姿なのか、○○にはわからない。 その光の中で、○○がどんな顔をしているのか、鈴仙にはわからない。 時間だけが過ぎてゆく。 最初にこの部屋に来たとき、因幡の一匹が 「お二人ではご用意できないでしょうから、敷いておきますね」 といって、二人分の布団を敷いていった。 もっとも、リールでつながれているので、別々の布団が敷いてあっても 実際はかなり近寄らなければ眠れないだろう。 リールの長さは、互いの肩が触れ合う程度に短い。 「○○」 鈴仙が唐突に口を開いた。 「なんでしょう」 ○○はなるべく冷静に応じる。 「姫に気に入ってもらいたくて、こんな首輪買ったの?」 声こそ、いつもの、鈴仙が怒った時聞かせる無感動なものに戻っていたが、 いまだに震える背中が、鈴仙の未だ動揺している心を○○に筒抜けにした。 「いえ、姫様がオンラインショッピングで、勝手に。私も抗議したのですが……」 後ろのほうは調子が弱くなって、鈴仙に聞こえたか疑問だった。 確かに、あの首輪を買ったのは姫様だ。 しかし、私は姫様の懐からまろび出たそれを見て、様々な下心を抱いてしまったし 姫様の挑発にも、むしろ快感を得てしまう、抗うことができなかった。 口は否定しても、脳では容認してしまったと言ってもいい。 「○○、嘘ついてる」 また、鈴仙の声がわなわなと震えだした。 「波読んだ。動揺してる。嘘つくときの波長。どこまで嘘か知らないけど」 しかし、その震えには、先程のような怒りはなく、むしろ、 「永遠亭の財布は全部師匠が握ってるのよ?姫様だけで買えるわけないじゃない」 何かを訴えているような、そんな声だった。 「師匠も私の首輪姿が見たかった、と姫は仰いました」 「……今度は本当のこと言ってる」 「実際のところ、私にもわかりません。私の首輪が見たいといったのに、鈴仙様にもつけたり、 客間に放置されたり、お二人が一体何を考えてらっしゃるのやら」 本音を打ち明けると、鈴仙は口をきかなくなった。これが本当だと解ったのだろう。 一体どれだけ時間が過ぎたろうか。 やがて遠くの部屋からも、因幡たちの声が聞こえなくなった。 永遠亭が眠りに付く時間に近づいている。 月は相変わらず、障子を優しく照らしていた。 鈴仙は不貞腐れた声だった。多分口をとがらせているだろう。 「○○」 「はい」 「今変なこと考えたでしょ」 「不可抗力です」 鈴仙は不機嫌な声だった。多分眉間に皺を寄せているだろう。 「○○」 「はい」 「姫様に興味があってここに来たの?」 「はい。大部分は」 鈴仙は確認するときの声だった。多分いつもの顔に戻ったろう。 「姫様にしか興味ないの?」 「そんなことはけして。八意先生、因幡の皆、みんな好きですよ」 鈴仙は不安げな声で短く言った。多分視線を泳がせているだろう。 「私は?」 「好きに決まっているじゃないですか」 鈴仙は少し苛立ったような声だった。多分いつも見せる困った時の顔だ。 「そうじゃなくて、永遠亭の仲間……じゃ、なくて、同じ姫のペットとして」 「綺麗で知的な先輩がいてくれるのは幸福ですよ」 鈴仙は不安気な声だった。多分……私はこんな声で喋る彼女を知らない。 「……仲間を見捨てて逃げるような妖怪兎の女でも?」 「私が同じ境遇で逃げないと言い切れませんから」 鈴仙は必死に隠しているが涙声だった。想像するだけで罪悪感で胸が一杯になる。 「地上人を見下す高慢ちきな月兎でも?」 「輝夜様や八意先生だって月人ではありませんか」 鈴仙はしゃくりあげながら言うた。もういいよ、もうやめてくれ。 「○○は、私あんなに○○を莫迦にして、苛めてるのに、なんでその言葉が嘘じゃないの?」 「貴方が好きだからですよ」 「好きなの?」 「好きですよ」 「姫は?」 「勿論、姫が大好きです」 「っ……じゃあっ」 「貴方も同じくらい愛しいですね。困ったことに」 二人はリールで繋がったまま、ひとつの布団で一緒になっていた。 ○○の両腕の中で、彼の身体に包まれて、鈴仙はずっと泣きじゃくっていた。 「っ……だ、だって、○○っ……ってばっ、お父さんみた……なんだもん、 わだ……っく、私そん、なの駄目っ……っく、ダメだもん、地獄行きだも……ん、 こ、こんな幸せ……にっ……してたらいけなっ……だも……」 「結局それが狙いだったのですか?」 朝ごはんの席で、輝夜にお吸い物を奪われながら○○は尋ねた。 「はい、大部分は」 「……盗み聞きしていらしたのですか」 ○○はあからさまにいやな顔をする。 リールは外れたが、その首にはいまだに紅い首輪。 風呂に入るときくらい外して欲しいが、鍵は輝夜が握っているのではずれない。 ピッキングでも練習したものか。 「ふふ、悪かったわね。でも、あの因幡には少し温もりが必要だったのよ」 ○○の食器に箸を伸ばして、更に漬物を奪う輝夜。 ○○は諦めたふうに、皿ごと輝夜に渡しつつ尋ねた。 「私からは八意先生にたっぷり甘えていらっしゃるように見えますが……」 輝夜が眼を細める。 「ねえ○○。永遠亭に無いものって何だと思う?」 「ローカルエリアネットワークです」 「……貴方が仕事に欲しがってるものじゃなくて。わかった、今度曳いていいわ。 ヒントはね、○○、男性よ。それもある程度大人びた、他者の支えになれる」 ○○は、解っている答えを更に適切なものにしようと、少し顎に手を当てて眼を瞑り、 開いたときには自分の食器から、果物が輝夜の皿に移動したことに気づいた。 「父親?いや、父性ですか」 「あたり。こんな広い屋敷に女ばっかり。あとは性別不詳の毛玉だけ。どう思う?」 「少女に適切な生育環境ではなさそうですね」 「そう。だから貴方が必要なのよ。私にはからかい相手として、あの因幡には支えとして。 そのためにはこの首輪、3980円以上の価値があると思わない?」 具体的な値段を出されて、案外安物だったことに気づいた○○は少し残念な気がした。 しかし、いつものシニカルな顔にすぐもどり、苦笑しながら感想を述べた。 「まったく、姫様にはかないませんな」 「当たり前よ。私を誰だと思っているの」 「○○」 背中からふいにかけられた声は、瞬時に実体として現れ、そして足音を小刻みに刻みながら 彼の背中へと飛び込んできた。胴を抱きしめた手がぐるりと半回転して、彼の前に現れる。 ○○は、愛おしい彼女を抱き返し、頭を撫でながら尋ねた。 「何の御用ですか、鈴仙」 「少し甘えたかっただけ。いけない?」 「まさか」 fin 「え?姫がそんなことを言ってた?」 永琳はびっくりして振り返った。 「ええ、朝食のときにそのように」 永琳はあっちを向いたりこっちを向いたりしておかしいわねたしかとかブツブツと 呟きながら百面相していたが、10秒ほどで○○に向き直り、いつもの顔で言うた。 「一体何をお隠しに」 「なんでもないわ。お使いのメモは……」 「何をお隠しに」 「メモはかごの中よ」 「わかりました。いってまいります」 詮索無用。いつものことだ。 「おかしいわね……姫確か『因幡も人間もすぐ死んじゃうから子孫作らせておこう』とか言って 名案だと思ったからセッティングしたのに、あれ、じゃあこの新郎新婦の衣装はどうすれば?」 机に卒塔婆が叩きつけられた。 緑色の髪をした閻魔が永琳に向けて怒鳴る。 「オーケー永琳、そこを動くな!」 「ざ、ザ……ビショップ!?」 END うpろだ1311 まだまだ暑い夏が続く。 暑い日が続くと、当然のように体調不良を起こす者も増える。 今日も薬局は忙しい。 「こっちが解熱剤、こっちはビタミン錠剤です。 食後に服用してくださいね」 「栄養剤十本と湿布薬、消毒液に包帯、あと塩タブ一瓶と。 夏場の大工さんは大変ですねぇ」 「精力剤とゴムと…って、旦那、ちょっと消費早くないか?」 午前の客もはけた頃、珍しい客がやってきた。 「いらっしゃい…あれ、サボさんが薬局に来るの、初めてじゃ?」 「あんたまでサボマイスタ呼ばわりかい?まあいいけど」 夜に飲みに出ると、そこそこの確率ででくわす死神、小野塚小町だ。 サボリ癖があるため、霊夢にサボさんやサボマイスタなどと呼ばれている。 「ははは、まあ、そのへんの文句は博麗神社にでも言ってくれ」 「やっぱり広めてるのは霊夢か…やれやれ。 ああ、それはそうと、目薬をくれるかい? 目に入ったゴミが取れなくってねぇ」 「あ、それでさっきから右目がぴくぴくしてたのか。 どれ、ちょっと見せて」 小町の目を覗き込み、ゴミを確認するが見当たらない。 細かすぎるのか、よく見えない位置にあるのか… ガタン 「うーん、ちょっと見当たらないな… 目薬よりも洗眼薬の方がよさそうだ」 「なんでもいいからさくっと頼むよ、これじゃ昼寝もできやしない」 「いや幽霊運べよ…」 突っ込みを軽く入れながら、目にフィットする形の小さな器に薬を注ぐ。 「さ、こいつを目に当てて、上向いてまばたきして」 「ん…おお…これは気持ちいいねぇ」 「何気にうちの人気商品だったりするんだ。 川とか湖で泳いだ後なんかに目を綺麗にするのにね」 「おっ、ゴミが取れたみたいだ、すっきりしたよ」 「そりゃよかった。 他にも何か買って行くかい?」 「いやあ、とりあえず入り用なもんはないねぇ。 体には自信があるからねぇ、両方の意味で」 そういって、腕を組んで胸を持ち上げる。 「ははは、確かに見事だな。 サボリに効く薬以外は必要なさそうだ」 「えっ!?ま、まさかそんなもんがあるのかい!?」 「あったらとっくに閻魔様が買いに来てると思うがね」 「あー、そりゃそうか……今日は真面目に仕事しとくか。 それじゃ失礼するよ、ありがとさん」 「毎度。またそのうち屋台で」 夕方、今日の仕事も終わろうかという頃、てゐがやってきた。 「あれ、どうしたんだ、こんな時間に」 「昼に鈴仙、来た?」 「いや、来てないよ。 次は薬の補充のある明後日まで会えないんじゃ?」 「今日は永遠亭の方がお休みでさ、鈴仙がお弁当作ってこっちに来たはずなのよ」 「そんなおいしいイベントは無かったよ…」 「…○○、あんた死神と付き合ってたりする?」 「なんで俺がサボさんと…?」 「鈴仙が泣いてた。○○は兎よりも死神がいいんだって…」 「いやいや妖夢じゃなくててゐ、それがありえない事は…」 「分かってるけど、私じゃなくて鈴仙が思い込んじゃってるからさ。 死神と何かあった?」 「んー…確かに昼頃に店には来てたけどな。 目に入ったゴミが取れなくて昼寝も出来ないとか言ってたが」 「あのさ、○○…そのとき、小町の目を見た?近づいてじっくりと」 「ああ見た…って、え、まさか、そんなベタな!?」 「ベタだ!間違いない!とっとと誤解解いて来なさい!」 まさかのベタ展開。 波長を見ればすぐに分かるだろうに、そんなことにも気付かないとは…。 急いで来たものの、永遠亭に着いた時には既に辺りは真っ暗だった。 「ハァ…ハァ…着いた…鈴仙…」 「あら○○、こんなところまで、のこのこ何をしに来たの?」 「ハァハァ…れ、鈴仙に会いに…って、姫さま顔が能面みたいn」 ズダーン! いきなり足払いをかけられ、うつ伏せに倒されてしまった。 普段ならなんてことはないのだろうが、ここまで走ってきたために足の踏ん張りが効かなかった。 「いたた…な、なにを゛っ゛!」 そのまま俺の上に姫様が乗っかってきて、両手で俺の顎を思いっきり引き上げる… こ、これは機矢滅留・苦落血(キャメル・クラッチ)! 「ぐえええええ…」 「私のペットを弄んでくれたそうね? これはそのお礼よ!」 「ち、ちが…う…けふっ!」 「……」 ドサッ とりあえず開放してもらえたようだ…。 「三途の川を彼女に渡してもらう前に、言い訳ぐらいは聞いてあげるわよ」 「実は…かくかくしかじかうーうーうまうま」 「…嘘よね?」 「つくならもっと現実的な嘘をつきますが」 「波長を見れば分かるはずよね?」 「それは本人に聞かないと…」 「…分かったわ」 鈴仙の部屋の前に来た。 中からはすすり泣く声が聞こえる。 胸が、痛い。 二度ほど深呼吸をして、中にいる鈴仙に声を掛けてみる。 「鈴仙、○○だけど」 …返事は無い。 「鈴仙、入るよ」 襖に手を掛けた時だった。 「ごめんね、○○…」 「え?」 「私ね、○○のこと好きだったの。 毎週薬を補充しに行くのが待ち遠しかった。 お祭のとき、肩を抱かれて、もしかしたら両思いなのかなって思っちゃった。 今日なんて久々に平日休み貰えて、お弁当作って会いに行ったんだよ。 あはは、馬鹿だよね、私。 ○○には、ちゃんとした彼女いたんだもん。 勝手に舞い上がって、何してんだろ、私…」 「鈴仙…」 「ごめん、○○…今日は帰って…ちゃんと薬の補充の仕事はするから…」 「黙って聞いてれば好き勝手言いやがって…」 「えっ…」 「いいか鈴仙! 俺はお前が好きだ! この世界で一番お前が好きだ! お前の綺麗な赤い瞳が好きだ! 長く輝くような髪が好きだ! すらっとした細い体が好きだ! ちょっとくしゃっとした長い耳が好きだ! 普段しっかりしているお前が時折見せる暢気さが好きだ! からかった時の、ちょっとふくれてるお前が好きだ! 時々物憂げに月を見つめているお前が好きだ! お前の一挙手一投足が俺の目を惹き付けて離さないんだ! 俺にはお前しかいない! 鈴仙、俺はお前を誰よりも愛している!」 「嘘…じゃあ何で…」 「…あー、勢い良く告白した後でなんだけど…店に来たときに波長ちゃんと見なかっただろ?」 「あ…うん…」 「あの時な、目にゴミが入って店に来た小町の目を覗いてただけ」 「え……ええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?」 「まあなんだ、いまどきそんな誤解する奴は漫画にだって居やしないぞ…。 あ、気になるならサボさん本人に聞いてくれ。 どうせ昼間はどっかで昼寝してんだろうし」 「ううん…○○は嘘ついてないもの。 ○○…こんな天然ボケでも、私のこと好き?」 「そこも含めて大好きだよ、鈴仙」 「ありがとう、○○… …でも今日は帰って」 「え…」 「…さっきの告白、みんなで聞いてるんだもん、恥ずかしくて出られないわよ!」 「あ…」 周りを見回すと、人型ウサ型のイナバに姫様、永琳先生、てゐ、文がニヨニヨとした顔で俺を見ていた。 「!!!!!!!!!!!!!!! こ、こっちみんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 顔からフジヤマヴォルケイノとは正にこのことだ。 「あはは、そういうわけだから、ね?」 「ん…わかった。 それじゃ、明後日な。 愛してるよ、鈴仙」 「私も、○○のこと愛してるよ」 「本当に会わなくていいの?」 帰り際、姫様が俺に尋ねてきた。 「いいんですよ。 泣き顔なんて、見ても見せてもお互い辛いだけだから」 「本当にそう思ってる?」 「…本当は、告白の時、襖開けていきなり抱きしめようかとも思ったんですけどね。 でも、鈴仙の泣いてる顔なんか見たら、何も言えなくなりそうで。 そしたら誤解も何も解けなくなる。 でも正直、よく理性が持ったもんです。 鈴仙に、とにかく早く会いたいって思ってたから」 「そうね、よく踏みとどまったと思うわ。 なかなか出来る事ではないもの。 しっかりした彼氏じゃない、鈴仙」 「えっ?」 ぎゅっ 「○○…やっぱり我慢できなくて…」 「鈴仙…」 後ろから抱き付いてきた、愛しい人。 一目見たいのだが… 「あ、後ろは見ないで! 今の私の顔、すごいことになってるから」 「目が真っ赤になってたり?」 「それはいつもどおり!」 「じゃあ月みたいにクレーターが?」 「泣いただけでどうしてそうなるのよ!」 「ははははは、良かった、いつもどおりだ」 「…うん、もう大丈夫。 明後日、私のお弁当食べてよね」 「ああ、楽しみにしてる」 「それじゃあ、名残惜しいけど今日はこれで、ね」 頬に感じるやわらかい感触。 心臓がはちきれるかと思うほどの勢いで高鳴る。 同時に離れていく、背中の愛しい人。 「後ろは見ないで帰ってよ? 見られたら恥ずかしくて死んじゃうかも」 「それは困るな、俺の人生終わりじゃないか」 「もう、いちいち大袈裟なんだから…」 「そんなことはないけどな…ま、愛する人の頼みだからな。 またな、鈴仙」 「うん、またね、○○」 その日はどこをどう歩いて帰ったかも覚えていない。 そんな状態で、よくも迷わず竹林を出られたものだと思った。 だがそんなことよりも、鈴仙の手作りの弁当が気になって夜は眠ることが出来なかった。 …あれ…何か心に引っかかってる… 鈴仙のことじゃない…けど…すごく嫌な予感が… 次の日の文々。新聞の一面は、俺の告白が丸々書き出されていた。 薬局は臨時閉店せざるを得なかった。 主に羞恥心的な意味で。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「どうよ、今回のネタは?」 「いやぁ~、凄い反響で売上倍増でしたよ! また何かありそうな時は教えてくださいね! あ、これ今回の情報料です!」 「おーけーおーけー、まかしとくウサ」 ひょい 「これは○○へのプレゼントに使わせてもらうわよ」 「「あ゛」」 「それはともかく、二人とも覚悟はいいわね?」 「「イエス、マム」」 「 幻 朧 月 睨 ( ル ナ テ ィ ッ ク レ ッ ド ア イ ズ )」 「こ、この程度で新聞が売れるなら安い…もの…で…(ガクッ)」 「な…んという…記者…根性…(ドサッ)」 新ろだ107 「ねぇ○○、今日はポッキーの日なんだって」 「鈴仙、幻想郷にポッキーは無いと思うんだが…」 「今朝の文々。新聞に載ってたよ? 今日だけ香霖堂で売るんだって」 「はぁ、紫さんの気まぐれか。 しかし、何だってポッキーなんか…」 「ところでさ、ポッキーゲームって何?」 「は!?」 「…新聞に名前だけ書いてあるんだけど、驚くようなことなの?」 「んー、まあ、ちょっと…」 「へぇ…そういえば、こないだ外から持って帰った中に、このポッキーってなかったっけ?」 「あ…あるけど…」 「じゃあ、やって見せてよ、ポッキーゲーム」 「…………」 「○○?」 「あー、て、手伝ってくれるか?」 「いいけど…?」 俺は神無月に外界から持ち帰ったお菓子を入れている箱から、ポッキーを取り出した。 封を開け、一本取り出す。 「で、どうやるの?」 「あー、とりあえず、そっち側咥えて」 「ふぁい、ほれへ?」 「で、このポッキーをだ、その、両側から食べ進む…」 「ふぇ!?」 「先に放したほうが負けな…」 もう一方を咥え、食べ始める。 鈴仙も素直に食べ始める。 …どちらもポッキーを口から離す気は無く… ちゅ 「…まあ、こういうことだ。わかった?」 「……まだちょっと分かんないから、もう一回…」 「ん、そうか…」 再び一本のポッキーを食べ始める俺と鈴仙。 やはりどちらも離すことは無い。 「…ねぇ、まだ分かんない…」 「仕方ないなぁ…」 三十分後、ポッキーはカラッポになっていた。 「ねぇ○○…」 「…さすがに分かったろ?」 「分かんないから、エアポッキーで…」 「それじゃあ、分かるまでしようか?」 「…うん」 そしてまたたっぷり三十分、鈴仙とのキスは続いたのであった。 新ろだ112 昨日は夜遅くまで仕事をしていたせいか、強烈に頭が痛い。近頃はずっとこんな生活である。 今日も頭痛から始まる憂鬱な一日が始まる……はずだった。 「あ、おはよう○○。いつもこんな時間に起きてるの?もっと早く起きなきゃダメだよ?」 自分一人しかいないはずの家の中なのに、自分以外の声がする。しかも女性の。おまけに何やら良い匂いがする。 動かない頭を無理矢理回転させて考えていると、声の主が台所から姿を現した。 ……俺はまだ寝ぼけているのだろうか。それとも徹夜のし過ぎで頭が限界を突破したのだろうか。 今、目の前に兎の妖怪がいる。腰の辺りまで伸びた銀色のような何とも言えない不思議な色をした髪と、狂気を操る赤い瞳を持つ月の兎。もっと言えば、自分の意中の女性。 鈴仙・優曇華院・イナバである。何故彼女がいるのか全く理解出来ない。 自慢じゃ無いが、自分は外の世界では今まで数えきれない位女性に告白されてきた。……罰ゲームという名目で。 そんな、悪い意味で女性に人気だった俺の家に女性がいる。しかも食事を作っているのである。今日中に幻想郷が消滅しないか心配だ。 「ねえ○○。聞いてるの?」 「いや、ちょっと待て。何故あんたがここに居る。」 「それはもちろん玄関から。」 「いや、そうじゃなくてだな。鍵掛けてあった筈なのに何故家の中に居るんだ。」 「鍵の波長をずらして逆位相をとって消しちゃいました。」 「そんなことも出来るのか。とか言ってる場合でも無くてだな。何勝手に人の家に入ってきてんのさ。それも無許可で。」 せめて許可ぐらいは取ってからにしてもらいたい。どこぞのパパラッチじゃあるまいし。 「え?許可なら貰ったよ?」 「いやいや、嘘はあきませんて鈴仙さん。」 「この前一緒にアクセサリー買いに行ったでしょ?その帰りに『俺と結婚してくれ。』って言ってきたじゃない。凄い真剣な顔で。」 「ああ……あれか……思い出しただけでも恥ずかしい……」 「あの時、考えさせて欲しいって言ったじゃない?その返事を言いに来たんだけどね…… あの……私なんかで良ければ……ふ、不束者ですが……その……宜しくお願いします……」 「……マジ?」 「……うん。」 「……よかった……てっきり断られるかと……」 「うん……これからも宜しくね?あなた……」 「ああ、宜しくな。鈴仙。」 新ろだ171 今日の月は、見すぎるとちょっと危ない事になってしまう丑三つ時の永遠亭。 師匠の手伝いが終わって自分の部屋に帰る時だった。 廊下の奥に小さな人影。一瞬てゐかと思ったけど、感じる波長が違うし、長い耳が無い。 って、事は―― 「○○?」 「ぁ、れーせんお姉ちゃん……」 「どうしたの? もう寝る時間でしょ?」 「うん、でも眠くなくて」 「それでも寝なきゃダメ。夜は危ないんだから」 特に、今日は満月だから妖怪も活発だし。 ○○に限って外に出る事は無いと思うけど、あまり夜遅くまで起きていられると誰も面倒を見てあげられない。 「…………」 「……○○?」 ○○の様子がおかしい。 眠くないと言うわりにはどこかぼんやりとしていて、それでいて視線はある一点を見つめている。 視線の先を追っていくと、永遠亭の窓を通して丸い月がこちらを照らしていて――っ! 「だ、だめっ!」 満月から○○を隠すように思いっきり抱きしめる。 師匠の手伝いをした後だったし、疲れていたんだと思う。無我夢中だった。 満月の妖気の影響力は人間にはそこまで無い、と言われていたけどすっかり忘れていた。 そもそもそんな事するくらいならば、光の当たらない陰に移動する方がよっぽど効率的だ。 「……っ」 急に○○が聞き取れない程の声をあげた。 気になって○○の方を見るけど、私が抱きしめているせいで顔が見えない。 でも引き離す気は起きない。引き離したくない。 「○○? どうしたの?」 「……ぉ……かぁ、さ……ん……」 ――おかあさん。 確かにそう聞こえた。 ○○は元々外の世界から迷い込んできて、里の方で保護されていたらしい。 それを師匠が里の診察に行った時に聞いて、そのまま引き取ってきた。 それからは私も含めて、永遠亭の皆が○○と一緒に楽しく過ごしてきた。 「……っ、ぅ……」 でも、○○は泣いている。私の胸の中で、お母さんを求めて泣いている。 私では、○○の寂しさは埋められない。 少しだけ、悲しい気持ちになった。 しばらくして、○○が私の胸から離れていく。私の服が涙でびしょびしょだ。 「落ち着いた?」 こくん、と頷いてくれた。 「……月を見てたら、おかあさんのことを思い出しちゃった」 そう言って、無理に笑う○○。泣いたせいで目が赤くなってて、私と同じになった。 やっぱり月のせいだった。 母親に会わせる事は出来るかもしれない。 でも、それは同時に○○を向こうの世界に帰すという事。 それを許すには、○○はここに長く居過ぎたと思う。 皆、泣いてしまうと思う。 私も、姫様も、師匠も、てゐも、イナバたちも、他の人も。 とても、悲しい気持ちになった。 「……○○」 「お姉ちゃん?」 ○○から離れていったのに、私はまた抱き寄せてしまう。 月の光を受けているからか、今日の私は少しおかしい。 「……帰りたい?」 「え?」 「向こうに帰りたい? 帰ればお母さんに会えるよ。でも、私たちとはもう会えないよ」 「え、あ、う……」 意地悪な質問をしている事は自分でも分かっている。 私だってこんな質問されたら答えられない。 「○○がいなくなったら、寂しいよ……」 お姉ちゃんと呼びながら私の所に来て、構ってあげると嬉しそうな顔をしてくれる。 私だって嬉しいし、楽しいし、何より心が温かくなる。 だから、この温もりを離したくない。 ○○を抱きしめる腕に力が入る。 「……だいじょうぶだよ」 ○○がこちらに顔を向ける。 目が合った。 「――」 ○○の眼は、綺麗だった。 何の濁りも無い、透き通った瞳。 自分のやろうとしていた事の過ちに気付かされた。 私と同じような罪を、○○と共有しようとしていた。純粋な○○に、罪を着せようとしていた事に。 私は、最低だ。 「……ごめん、忘れて」 「ふぇ?」 「部屋、戻ろっか」 「あ、うん」 ○○から離れて、手を引いて部屋へと向かう。 二人で、ゆっくりとした足取りで廊下を歩く。 そんな中で突然、○○が私の方を向いた。 「僕、帰らないよ」 初めは何を言っているのか理解できなかった。 「れーせんお姉ちゃんと会えなくなるとさびしいから」 これはさっきの意地悪な質問の答えなのだと、理解するのに時間がかかった。 「だから、だいじょうぶだよ」 「それに、れーせんお姉ちゃんのこと大好きだもん」 彼の眩しいくらいの笑顔が、私の波長を乱した。 思わず目を逸らす。心臓がうるさいくらいに高鳴っている。顔だって何だか熱い。 ――え、嘘。私、こんな小さな子にドキドキしてるの? みんなが寝静まってる深夜で本当に良かったと思った。 この瞬間をてゐに見られたら、この先ずーっとからかわれるかもしれない。 意味だってそういう意味じゃない事だって分かってる。 大好きっていうのはほら、あの、友達的な意味、とか、家族的な意味、とか。 だから、私が最初に思ってしまったような"大好き"の意味とは違うって事は――違う。 何もおかしくない。私も今までどおりに○○を愛してあげれば良いだけ。 応えなきゃ。○○の"大好き"に応えてあげなきゃ。 「……うん。私も○○の事、大好きだよ」 握っていた手に力を込めながら応える。 返って来たのは、満面の笑み。 あぁ、だめ。一度意識してしまうと、どうしても頭から離れない。 何だか○○の笑顔を見ると変な幻覚を患ってしまったように、心臓がドクドクと大きく脈打ってしまう。 きっと満月の妖気のせいだ。そうでも考えないと私がおかしい事になってしまう。 「お姉ちゃん、おやすみなさい」 ○○が立ち止まってそんな事を言い始めた。 何事かと思った。ここで寝てしまうのかと思った。 しかし、彼の後ろにあるふすまを見てやっと理解する。 気付けば○○の部屋に着いていたんだと。 握っていた手が離れていく。 「う、うん、おやすみなさい」 ○○が部屋の中に入ってふすまを閉めるまでずっと眺めていた。 短い動作だったけど、○○は最後まで私に笑顔を向けてくれた。 そこでふと浮かんだのが、"大きくなったらお姉ちゃんと結婚する"って言葉だった。 ○○と出会ってからは、その言葉を聞いた事が無い。 小さな子なら高い確率で一度は口にすると里から聞いてきた、と師匠が言っていた。 聞いた当初は、何て軽はずみな言動なんだろうと思っていた。 でも、今は。例えば○○が私にそんな事言ってきたら。 「……本気にしちゃうんだから」 自分で言っていてこれではまるで恋する乙女だと思ってしまった。やっぱり今日の私はどうかしている。 部屋に戻って早く寝た方が良いと思い、自室に向かう。 その足取りは、何故か軽かった。
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デッキタイプ 鈴仙主体 うどんげ4(鈴仙4) 鈴仙3紫1 狂気(鈴仙3フラン1) 兎ケージ(鈴仙3永淋1) 狂界(紫1鈴仙3) 鈴仙が含まれるデッキ 魔性の瞳(鈴仙2ver)(咲夜1妖夢1鈴仙2) LRE(L妖夢)(妖夢2鈴仙2) LRE(L鈴仙)(鈴仙2妖夢2) 無限の蜃気楼(紫2鈴仙2) 隠遁(L輝夜)(輝夜2永淋1鈴仙1) 隠遁(L永淋)(永淋2輝夜1鈴仙1) 隠遁姫君(輝夜1幽々子1永淋1鈴仙1) 密室(タッチ鈴仙)(永淋3鈴仙1) 高草郡(鈴仙2永淋2) 大群(鈴仙1アリス1橙1萃香1) 錯覚(橙3鈴仙1)